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第七章 俺様、南方へ行く
12、あの野郎……
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町の周辺を上から見ると、町と森との間に丸太が何本もレールのように置いてあった。
何だあれ? と思っていると、切り倒されたらしい巨木を二人の男が縄で引いてその丸太の上を転がしながら運んでいた。
「来るぞ! 逃げろ!」
森から冒険者らしき武装した男が三人転がり出てきて、その叫びを聞いて巨木を引いていた男も縄を捨てて逃げていく。その後を追うように、黒い巨熊が1頭走ってきた。残念ながら探している角つきではない。
一昨日遭遇した熊と同レベルのようだ。戦わずに逃げることを選んだのは懸命だが、確か熊は走るものを追う習性があり、その速度は自動車並みだったはず。仕方ない。
「水よ」
男と熊の間に上空から一直線にウォーターカッターを飛ばす。
詠唱をしなくても出せるのだけど、詠唱した方が格好いいし威力も高い。だというのに熊の速度が速すぎて最後まで言えなかった。ちぇ。
糸鋸のように進路に現れた水の刃に気付く事なく一直線に向かってきた熊は、そのまま数メートル走り続けその勢いのままにパカリと割れて倒れた。
その様子を振り返りながら逃げていた男たちが見て、ぽかんとした顔で立ち止まった。
『怪我はないか?』
「え、ええ。ありがとうございます……」
不思議そうな顔をした男たちに角の生えた黒熊を見なかったか聞くと、見かけていないが森の奥にある洞窟に棲みついたという噂があると方角を教えてくれた。
町長からはそんな洞窟があるとか教えてもらえなかったぞ。あの野郎……。ふぉっふぉというとぼけた感じの笑い声を首をぶるぶる振って頭の中から追い出す。
確認のため再度上空に飛び上がると、確かに穴のようなものが見えた。取り敢えずあそこに行ってみるか。
「あ、リージェ様。やはりありましたよ」
地上に戻ると、エミーリオが黒い小さな欠片を渡してきた。
どうやら血だまりの中、熊の死骸を調べてくれていたらしい。服や手を血塗れにしていい顔で笑うイケメン……ちょっと怖いと思ったのは内緒にしておこう。
欠片は例の如く俺に吸い込まれるようにして消えてしまった。
「あの、この熊、持って行かないんですか?」
そのまま立ち去ろうとした俺に、おずおずと助けた冒険者が訪ねてきた。皮を防具に、爪や牙や骨は武具に使えるらしい。オルソに追われてきたモンスターはオルソの匂いで逃げ出すから、モンスター避けにも使えるとか。
好きにしろと言ったら飛び上がって縄でくくり、丸太の上に乗せて引き始めた。
そういえばさっきも巨木を運んでいる最中だったな。いつの間にか巨木の所に男たちが戻ってきていて、再び運び始めた。
「ああ、あれですか。最近この辺りにモンスターが多いので、塀の強化などで使うんですよ。有志を募って切り出して運んでるんです」
俺の視線に気づいた男がそう説明してくれた。どうやらまだ俺達に討伐を依頼したことは伝わっていないようだ。或いは俺達で倒せるとは思っていないのか。
男たちはまたモンスターが来ないうちに、とこちらに再度お礼を述べて慌てたように作業に戻っていった。
『さて、では行こうか』
「はい!」
そうして上空から見つけた洞窟に向かうと、熊の縄張りを示すマーキングが目立つようになり、さらに近づくと熊が立ち塞がった。
だが、やはり目当ての熊ではない。
「このくらいなら……はぁっ!」
先日野営地を取り囲んできた熊よりはるかに小さい、大型犬サイズの熊をエミーリオが瞬殺した。うん、雑魚は任せよう。
こんな小さな熊でも体色は黒。試しに鑑定ちゃんに尋ねてみたら、どうやら元々の体色らしい。
「モンスターはたいてい体色が黒ずみますが、オルソ種はその傾向が特に強いですね。そのためか全体的にステータスが高めです」
そんな相手を瞬殺かい。まだレベル40に満たないのにそんな芸当ができるのはやはり勇者に憧れて幼い頃から修練を積んできたからか。
なんて話している間にまた熊が来た。子熊の死骸を見て激怒している。親だろうか?
「うわっ」
振りかぶった腕をエミーリオが剣で防ぐ。爪と剣がこすれてギャリギャリと嫌な音がした。
さすがにこいつの相手はきつそうで、若干押し負け始めている。
『エミーリオ、そのまま耐えろ』
「えっ?! は、はい!」
「水よ、集いて俺様の命に従え! ウォーターカッター!」
またまた瞬殺である。さすが俺! この調子なら角つきも余裕じゃね?
高笑いする俺をエミーリオはキラキラした目で見つめてくるし、ルシアちゃんは輝くような笑顔でぎゅっとしてくれるし。ふはははは! もっと崇め奉るが良い!
と、忘れてた。鑑定ちゃーん。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【オルソ・モルテネーロ】
オルソ種の中でも最凶最悪、死の紫斑と呼ばれるモルテヴィオーラの変異種。どうやら暗黒破壊神の欠片を取り込んだ個体のようです。
【オルソ・モルテネーロ・ジュニア】
オルソ・モルテネーロの第二世代。
暗黒破壊神の欠片の気配はありませんが、強化された親世代のステータスを引き継ぎ高いステータスを持っていた模様。成長する前に倒せて良かったのです。
因みに肉は煮込み料理がお勧めです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……喰えるのか。
いや、でもなぁ。普通の熊ならいざ知らず、暗黒破壊神の欠片を取り込んでた個体だろ? 瘴気が強すぎて毒なんじゃね?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リージェ以外の人物が食べるなら聖女による浄化が必要です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何か返事が返ってきた!
俺のスキルのくせに人格があるとかちょっと怖……いや、何でもないです。
うん、心の声聞こえているみたいだし。これからも頼りにしてます。
『エミーリオ、親熊だけ欠片を持っているようだ。集まる前に先に取り出して進もう』
「はい!」
エミーリオは慣れた手つきで前回欠片を見つけた部位の辺りにナイフを入れ、あっという間に見つけてしまった。
再び小さな欠片を取り込む。うん、こんな小さな欠片でも俺の力が上がった感じがする。
この調子でさくさく進もう。
何だあれ? と思っていると、切り倒されたらしい巨木を二人の男が縄で引いてその丸太の上を転がしながら運んでいた。
「来るぞ! 逃げろ!」
森から冒険者らしき武装した男が三人転がり出てきて、その叫びを聞いて巨木を引いていた男も縄を捨てて逃げていく。その後を追うように、黒い巨熊が1頭走ってきた。残念ながら探している角つきではない。
一昨日遭遇した熊と同レベルのようだ。戦わずに逃げることを選んだのは懸命だが、確か熊は走るものを追う習性があり、その速度は自動車並みだったはず。仕方ない。
「水よ」
男と熊の間に上空から一直線にウォーターカッターを飛ばす。
詠唱をしなくても出せるのだけど、詠唱した方が格好いいし威力も高い。だというのに熊の速度が速すぎて最後まで言えなかった。ちぇ。
糸鋸のように進路に現れた水の刃に気付く事なく一直線に向かってきた熊は、そのまま数メートル走り続けその勢いのままにパカリと割れて倒れた。
その様子を振り返りながら逃げていた男たちが見て、ぽかんとした顔で立ち止まった。
『怪我はないか?』
「え、ええ。ありがとうございます……」
不思議そうな顔をした男たちに角の生えた黒熊を見なかったか聞くと、見かけていないが森の奥にある洞窟に棲みついたという噂があると方角を教えてくれた。
町長からはそんな洞窟があるとか教えてもらえなかったぞ。あの野郎……。ふぉっふぉというとぼけた感じの笑い声を首をぶるぶる振って頭の中から追い出す。
確認のため再度上空に飛び上がると、確かに穴のようなものが見えた。取り敢えずあそこに行ってみるか。
「あ、リージェ様。やはりありましたよ」
地上に戻ると、エミーリオが黒い小さな欠片を渡してきた。
どうやら血だまりの中、熊の死骸を調べてくれていたらしい。服や手を血塗れにしていい顔で笑うイケメン……ちょっと怖いと思ったのは内緒にしておこう。
欠片は例の如く俺に吸い込まれるようにして消えてしまった。
「あの、この熊、持って行かないんですか?」
そのまま立ち去ろうとした俺に、おずおずと助けた冒険者が訪ねてきた。皮を防具に、爪や牙や骨は武具に使えるらしい。オルソに追われてきたモンスターはオルソの匂いで逃げ出すから、モンスター避けにも使えるとか。
好きにしろと言ったら飛び上がって縄でくくり、丸太の上に乗せて引き始めた。
そういえばさっきも巨木を運んでいる最中だったな。いつの間にか巨木の所に男たちが戻ってきていて、再び運び始めた。
「ああ、あれですか。最近この辺りにモンスターが多いので、塀の強化などで使うんですよ。有志を募って切り出して運んでるんです」
俺の視線に気づいた男がそう説明してくれた。どうやらまだ俺達に討伐を依頼したことは伝わっていないようだ。或いは俺達で倒せるとは思っていないのか。
男たちはまたモンスターが来ないうちに、とこちらに再度お礼を述べて慌てたように作業に戻っていった。
『さて、では行こうか』
「はい!」
そうして上空から見つけた洞窟に向かうと、熊の縄張りを示すマーキングが目立つようになり、さらに近づくと熊が立ち塞がった。
だが、やはり目当ての熊ではない。
「このくらいなら……はぁっ!」
先日野営地を取り囲んできた熊よりはるかに小さい、大型犬サイズの熊をエミーリオが瞬殺した。うん、雑魚は任せよう。
こんな小さな熊でも体色は黒。試しに鑑定ちゃんに尋ねてみたら、どうやら元々の体色らしい。
「モンスターはたいてい体色が黒ずみますが、オルソ種はその傾向が特に強いですね。そのためか全体的にステータスが高めです」
そんな相手を瞬殺かい。まだレベル40に満たないのにそんな芸当ができるのはやはり勇者に憧れて幼い頃から修練を積んできたからか。
なんて話している間にまた熊が来た。子熊の死骸を見て激怒している。親だろうか?
「うわっ」
振りかぶった腕をエミーリオが剣で防ぐ。爪と剣がこすれてギャリギャリと嫌な音がした。
さすがにこいつの相手はきつそうで、若干押し負け始めている。
『エミーリオ、そのまま耐えろ』
「えっ?! は、はい!」
「水よ、集いて俺様の命に従え! ウォーターカッター!」
またまた瞬殺である。さすが俺! この調子なら角つきも余裕じゃね?
高笑いする俺をエミーリオはキラキラした目で見つめてくるし、ルシアちゃんは輝くような笑顔でぎゅっとしてくれるし。ふはははは! もっと崇め奉るが良い!
と、忘れてた。鑑定ちゃーん。
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【オルソ・モルテネーロ】
オルソ種の中でも最凶最悪、死の紫斑と呼ばれるモルテヴィオーラの変異種。どうやら暗黒破壊神の欠片を取り込んだ個体のようです。
【オルソ・モルテネーロ・ジュニア】
オルソ・モルテネーロの第二世代。
暗黒破壊神の欠片の気配はありませんが、強化された親世代のステータスを引き継ぎ高いステータスを持っていた模様。成長する前に倒せて良かったのです。
因みに肉は煮込み料理がお勧めです。
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……喰えるのか。
いや、でもなぁ。普通の熊ならいざ知らず、暗黒破壊神の欠片を取り込んでた個体だろ? 瘴気が強すぎて毒なんじゃね?
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リージェ以外の人物が食べるなら聖女による浄化が必要です。
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何か返事が返ってきた!
俺のスキルのくせに人格があるとかちょっと怖……いや、何でもないです。
うん、心の声聞こえているみたいだし。これからも頼りにしてます。
『エミーリオ、親熊だけ欠片を持っているようだ。集まる前に先に取り出して進もう』
「はい!」
エミーリオは慣れた手つきで前回欠片を見つけた部位の辺りにナイフを入れ、あっという間に見つけてしまった。
再び小さな欠片を取り込む。うん、こんな小さな欠片でも俺の力が上がった感じがする。
この調子でさくさく進もう。
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