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第一章 死神と呼ばれた男
聖女の願い⑫
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ルクス達を取り囲む騎士たちは百名程度。その全員が、ルクス達に向けて弓を引いている。取り囲んでいる円の直径はかなりある。同士打ちも期待できないだろう。
ルクスは、間もなく打ち出されるであろう弓を見るが何もできない。ルクスの水魔法の範囲外であるし、もし届いたとしても数人の騎士を殺したところでほかのものが打った矢に射抜かれて死ぬだろう。
そもそも、彼らも自分たちの正義を掲げて立っている。その命を一方的に奪うことには抵抗があった。それこそ、実の兄も混じっているのだから。
そんな考えが一瞬、ルクスの頭にちらついた。と、思ったのとほぼ同時に、弓は一斉に放たれルクス達へと向かう。
カレラもフェリカも思わず顔を背けてうずくまる。矢が風を切る音が甲高く荒野に響いた。
――刹那。ルクスは空中にいくつもの水球を作り出す。
階位があがり、以前よりも魔法が使いやすくなったからその数は今までの比ではない。もちろん、一度に使える魔法量を表す魔法適正がDなのは変わらない。故に、大きいものではなく、両手で抱えられる程度の大きさのものしか作れなかったのだが。
ルクスはその水球をカレラとフェリカの周囲に作りあげる。
その水球は矢の勢いをすぐさま殺し、矢は、二人に届かずに地面に落ちていく。水球をすり抜けた矢が二人をかすめることもあったが、致命傷には至らない。
たかだか水で矢を止めることなどできない、と思う人もいるかもしれないが、空気と水とではその抵抗はけた違いだ。銃弾でさえ、水中を数メートルも突き進めば、殺傷能力がなくなってしまう。貫通力が低く、体積自体も大きい矢ならなおさら抵抗も大きい。
二人が無事な様子を確認して、自らは騎士たちに向かって一気に駆け出した。
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」
ルクスはすばやく騎士たちと距離を詰める。その短い時間でルクスを苦しめていたのは殺すか、殺さないかの葛藤だ。
今のルクスの武器は、水により窒息させることと、水の刃で切り裂くことだ。そのどちらも、相手も無効化する方法なのだが、結末は死だ。魔物と違い、ルクスは殺さずにこの場を切り抜けたいと考えてしまった。
それは、たかだか冒険者が騎士を殺すことで罪になってしまうかもしれない、という打算もあったが、やはり人を殺す忌避感は拭えない。
だからこそ、ルクスはより難易度の高いことに挑戦をした。それを成し遂げるのは、大道芸人の時に培った水の操作術に他ならない。
ルクスはイメージする。
騎士達の首元を睨みつけ、そこに走る二つの太い道筋に、できるだけ多くの水を流し込んだ。その道とは、左右の頸動脈だ。
頸動脈は、人の脳へ酸素を供給する要だ。この動脈が塞がれてしまえば、脳に血流はいかなくなり、やがて酸欠で脳は死ぬ。だが、あくまで一過性であるのなら、瞬間的な意識消失で事なきを得るだろう。
ルクスは、脳に行く血流を、できる限り水で薄めることで、脳に運ばれる酸素の欠乏をはかったのだ。
ルクスが両手を広げ、水を送り込むと、目の前の騎士達は糸が切れたマリオネットのように崩れ落ちた。ルクスは、すぐさま起き上がってくるかもしれないと危惧したが、それは杞憂に終わる。
崩れ落ちた騎士達は意識はすぐに取り戻したが、焦点の合わない視点で頭を押さえて動けなくなっていた。
――思いがけない副産物だったな。
ルクスは、騎士達に起こった事象に納得すると、すぐさまその牙をほかの騎士達に伸ばしていった。
ルクスは、間もなく打ち出されるであろう弓を見るが何もできない。ルクスの水魔法の範囲外であるし、もし届いたとしても数人の騎士を殺したところでほかのものが打った矢に射抜かれて死ぬだろう。
そもそも、彼らも自分たちの正義を掲げて立っている。その命を一方的に奪うことには抵抗があった。それこそ、実の兄も混じっているのだから。
そんな考えが一瞬、ルクスの頭にちらついた。と、思ったのとほぼ同時に、弓は一斉に放たれルクス達へと向かう。
カレラもフェリカも思わず顔を背けてうずくまる。矢が風を切る音が甲高く荒野に響いた。
――刹那。ルクスは空中にいくつもの水球を作り出す。
階位があがり、以前よりも魔法が使いやすくなったからその数は今までの比ではない。もちろん、一度に使える魔法量を表す魔法適正がDなのは変わらない。故に、大きいものではなく、両手で抱えられる程度の大きさのものしか作れなかったのだが。
ルクスはその水球をカレラとフェリカの周囲に作りあげる。
その水球は矢の勢いをすぐさま殺し、矢は、二人に届かずに地面に落ちていく。水球をすり抜けた矢が二人をかすめることもあったが、致命傷には至らない。
たかだか水で矢を止めることなどできない、と思う人もいるかもしれないが、空気と水とではその抵抗はけた違いだ。銃弾でさえ、水中を数メートルも突き進めば、殺傷能力がなくなってしまう。貫通力が低く、体積自体も大きい矢ならなおさら抵抗も大きい。
二人が無事な様子を確認して、自らは騎士たちに向かって一気に駆け出した。
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」
ルクスはすばやく騎士たちと距離を詰める。その短い時間でルクスを苦しめていたのは殺すか、殺さないかの葛藤だ。
今のルクスの武器は、水により窒息させることと、水の刃で切り裂くことだ。そのどちらも、相手も無効化する方法なのだが、結末は死だ。魔物と違い、ルクスは殺さずにこの場を切り抜けたいと考えてしまった。
それは、たかだか冒険者が騎士を殺すことで罪になってしまうかもしれない、という打算もあったが、やはり人を殺す忌避感は拭えない。
だからこそ、ルクスはより難易度の高いことに挑戦をした。それを成し遂げるのは、大道芸人の時に培った水の操作術に他ならない。
ルクスはイメージする。
騎士達の首元を睨みつけ、そこに走る二つの太い道筋に、できるだけ多くの水を流し込んだ。その道とは、左右の頸動脈だ。
頸動脈は、人の脳へ酸素を供給する要だ。この動脈が塞がれてしまえば、脳に血流はいかなくなり、やがて酸欠で脳は死ぬ。だが、あくまで一過性であるのなら、瞬間的な意識消失で事なきを得るだろう。
ルクスは、脳に行く血流を、できる限り水で薄めることで、脳に運ばれる酸素の欠乏をはかったのだ。
ルクスが両手を広げ、水を送り込むと、目の前の騎士達は糸が切れたマリオネットのように崩れ落ちた。ルクスは、すぐさま起き上がってくるかもしれないと危惧したが、それは杞憂に終わる。
崩れ落ちた騎士達は意識はすぐに取り戻したが、焦点の合わない視点で頭を押さえて動けなくなっていた。
――思いがけない副産物だったな。
ルクスは、騎士達に起こった事象に納得すると、すぐさまその牙をほかの騎士達に伸ばしていった。
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