回復チートで異世界を自由(スケベ)に生き残る!

にくうどん

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本編

45 今日限りで辞めます

 昨日に続いて3人組の男達の元へと行こうと立ち上がる白魔法少女さんを、俺は遠慮なく呼び止めた。

「な、なんでしょうか?」

 3人組の元へ行こうとしていた白魔法少女さんは、まさか、俺に呼び止められるとは考えてもいなかったのか、少し驚きつつも慌てて俺に振り返ってくれる。

「あー、いや、ふと気になる事があってさ」

「は、はい」

「君の話によれば、あの3人組に1日中こき使われるんだよな?」

「……え、ええ」

「それで、いくら貰えるの?」

「報酬の分け前のことですか?」

「そうそう」

「1日、銅粒1つです」

「――はぁっ!?」

 白魔法少女さんの答えに、俺は座りながらもひっくり返りそうになった。

 銅貨ではなく銅粒1つ。
 つまり、元の世界の価値で約100円だ。

 この異世界でいうならば、合成食(レーション)1つ分。
 腹持ちは微妙とは言えども、栄養的には1日分のカロリーはあるらしい。
 つまり、徹底的にこき使っておいて、1日分の食料が報酬というわけだ。

 白魔道士を連れ回すことによって、白魔法である小回復(ライトヒール)を回数限定とはいえ気兼ねなく利用できるのだから、F級ポーションを毎日、買い込むよりも圧倒的に低コストなのは間違いない。

 しかも、白魔法少女さんは普通の白魔道士よりも能力が有りながらも更に低賃金らしいから、昨日の3人組のように思わず笑いが止まらないのも頷ける。

 それに、彼等にしてみれば、無駄撃ちで面倒を見てやっている、という思いもあるのだろう。

 なにせ、白魔法少女さんの「魔素喰み」体質を考えれば、普通ならば逆払いが必要になってくるからだ。

 となれば、無駄撃ち1発が白魔法少女さんにとっては逆払い銅貨1枚の価値……、いや、男性の魔素排出が約半分になるので、男性のメリットは半減すると考えてもいいから、下手をすれば倍の銅貨2枚を提示しないと魔素排出に協力をしてくれないかもしれない……。

 魔素喰み体質のせいで、少しばかり話がややこしいのだが、あの3人組が高笑いしていたことを考えれば、無駄撃ちを我慢して得られるメリットとしては、かなりのものということなのだろう。

 つまり、白魔法少女さんが3人組に提供している小回復の価値は相当なものということだ。

 ただ、それがいくらほどの価値になるのか、というのが俺にはまだ良く分からないんだよな。

「……ところで、F級ポーションの回復効果は、小回復(ライトヒール)でいうところの何回分だったかな?」

 白魔法少女さんの実力をテストするという雰囲気を出しながら、俺は自分が知らない事を聞く為の質問をしてみることにした。

「え!? あ、はい! 小回復だと1回分ぐらいの効果だと言われています!」

「ああ、そうだね」

 初めて聞いた事実だが、「正解」という風に頷いておいた。

 ってか、え?

 F級ポーションて、小回復の1回分の効果しかないのかよ。
 それなのに、相場は銅貨1枚だよな。

「……それを作るのに、普通の白魔道士で約7日かかるというのは、本当に効率が悪いよね」

「はい、魔素水に回復魔法を定着させて安定化させるには、何度も何度も小回復(ライトヒール)を注ぎ込むしか方法が無いみたいですからね」

 白魔法少女さんが同意してくれるので、俺も「うんうん」と適当に頷いておく。

 ……そうなのか、この異世界の白魔道士は、魔素水に白魔法の効果を与えて安定化させる為に、何度も何度も小回復を注ぎ込むわけか。
 それは、時間がかかるわな。
 ちなみに、俺は1回かつ秒単位で完成だけれども。

「とはいえ、俺達、生身の白魔道士による小回復より、ポーションの方が信頼性が高い以上は、仕方が無いことだね」

 という思わせぶりな台詞を出してみた所、白魔法少女さんが全くという感じで頷いてくれた。

「……そうですね。あまり強くない人達は、まだ私達を側に置いた方が安上がりと考えるみたいですが、強者になればなるほど、白魔道士ではなく高級ポーションを頼りにするとは聞いたことがあります」

 なるほど。
 生身の白魔道士が1日に使える白魔法には限界があるらしいし、パーティーに加えれば食事や体調などの面倒をみなければならなくなる。
 しかも、攻撃力皆無で弱いから、守る必要まで出てくるわけで、白魔道士を2人、3人と抱えれば、更に負担が倍増していくことになる。

 強者にとっては、危険な場所に行こうとすればするほどに、白魔道士がお荷物となってしまうわけだ。

 その点、ポーションならば購入しておけば後は一切のお金は必要ないし、日持ちもするし、好きな場面で使用することができる。
 確かに便利なアイテムだよな。

「ちなみに、君はあの3人組に1日、何回の小回復を使わされているのだろうか」

「普通の白魔道士ならば1日3~5回の使用が限界らしいのですが、私の場合は10回近く使えるので……」

 ほほう、白魔法少女さんは普通よりも才能が有るとは聞いていたが、まさか、通常の白魔道士の倍もMPが有るということか、凄いな!

 と、感心した所で、俺は気がついた。

「え? まさか、1日にその10回近くを全部、使わされているのかい?」

「……は、はい」

 悲しそうに頷く白魔法少女さん。

「……」

 俺は口をポカンと開けてしまい、軽い目眩を感じてしまった。

 おいおい、小回復1回がF級ポーション1本分相当と計算した場合、銅貨1枚分の価値があることになるわけで、それが1日に10回となると銅貨10枚分。

 この異世界において白魔道士は、足元を見られて搾取されているとは聞いているので、そんな単純計算は通用しないのだろうけれども、それにしても白魔法少女さんの搾取されぶりは、かなりの異常で間違いはないだろう。

 なにせ、市場にポーションが流れているということは、白魔道士は皆から搾取されつつも何とかポーション製作が出来ており、いくらかの余分なお金を稼いでいるということでもある。

 しかし、白魔法少女さんはポーション製作もままならないと言っていた。
 つまり、徹底的に搾取されて、一方的にしぼり続けられているわけだ。

 あの3人組……本当にダメだな。

 俺はため息混じりに立ち上がると、尻に付いた砂ホコリを軽く払いつつ、荷物を片付けながら白魔法少女さんに声をかける。

「えーと、急に話が変わってあれだけれども、君の名前を聞いても良いかな?」

「え? わ、私のですか?」

「ダメかな」

「い、いえいえ、そんな、大丈夫です! 私の名前はコハクと申します」

「コハクさんか、良い名前だね」

 白魔法少女なコハクさんは頬を赤らめながら俯いた。

「そ、そんな、さん付けなどお構いなく。どうぞ、呼び捨てで結構ですよ」

 うーん、年下女性とはいえ、名前を呼び捨てにするのは初体験で少し照れるけれども、何事も経験だよな。
 ありがたく経験値を積ませて頂くとしようか。

「そう? なら、遠慮無くコハク、と呼ばせてもらおうかな」

「は、はい」

 などと、格好をつけながら白魔法少女さんの名前を呼び捨てで言ってみたのだが、口周りの妙な違和感が凄い。
 女性を平気で呼び捨てにするワイルドさが自分には無いのか、慣れるまで時間がかかりそうだわ。
 ああ、無頼な男になりたい。

「あ、あの白魔道士さんのお名前を、お聞きしても?」

「もちろん。俺の名前はシロスケ」

「シロスケさん……」

 俺と白魔法少女のコハクとで今更ながらに初々しく自己紹介をしあっていると、痺れを切らしたのかイライラ度マックスの3人組がこちらへと近づいて来ていた。

 それに気がついたコハクが、慌てて駆け出そうとする。

「あ! ご、ごめんなさい。私、もう行きますね!」

「いやいや、行かなくて良いよ」

 俺はコハクの手首辺りを掴んで止めた。

「え!?」

 側までやって来た3人組が、俺とコハクの前で仁王立ちする。

 先頭に立つリーダー格である中装備の兜男が、厳つい顔を更に強張らせていた。

「おい、白魔道士! いつまで俺達を待たせるつもりだ!」

「――ひぃ! す、すみません!」

 兜男の一喝に、白魔法少女のコハクが縮みあがる。

 俺はコハクの手首を掴んだままだったので、そのまま少し引き寄せてから、俺が前に出ることによってコハクを背中へと隠した。

「なんだ、お前?」

 兜男が俺を睨みつけてくる。

「白魔道士の彼女は今日限りをもって、貴方達3人組のパーティーから脱退することになりました」

「――はぁ!?」

「――えっ!?」

 兜男が驚くのは当然としても、俺の背後にいるコハクもかなり驚いていた。

「何を言ってんだこの野郎。こいつは俺達が見つけた白魔道士だぞ。勝手に奪うつもりか!?」

「勝手にも何も、パーティーを組むのは自由意志ではないのですか? 気が合えば組む。気が乗らなければ出ていく。それだけのことでしょう? それとも、何か契約でもあるのですか?」

「……ぐ」

 言葉に詰まる兜男。

 俺が背後の白魔法少女のコハクに振り返ると、コハクはふるふると顔を振った。

「なら、話は簡単ですよね。彼女は今日限りで貴方達のパーティーから出ていきます。今日までお世話になりました」

「か、勝手に話を進めるな! おい、白魔道士! 今日まで俺達から受けた恩を忘れて出ていこうってのか!!」

「……ひっ」

 兜男の怒声に白魔法少女のコハクが身をすくませる。

「それに、俺達のパーティーから離れて一体どうやって生きていくつもりだ! あ!? すぐに魔素病で死ぬのがオチだぞ! それでも良いのかっ!」

 散々、搾取しまくっておいて恩もクソもねーだろうが。
 と俺は思うのだが、今はまだ心の中に収めておくことにした。

 白魔法少女のコハクが顔面蒼白になったのを見て勝利を確信したのか、兜男は唇の端を少しだけ上げながら声を荒げてくる。

「――白魔道士! 今すぐ土下座をすれば許してやる! さあ! 早く土下座しろっ!!」

「……は、はい」

 白魔法少女のコハクがふらふらと前に進み出ると、その場で土下座しようとし始める。
 今日まで恐怖で躾された影響なのだろうか、思考能力が停止しているような感じだった。

 自分の言葉通りに動くコハクに満足したのか、兜男がニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。

 俺は迷いなくコハクの肩を掴んで土下座を止めさせた。

「……だから、さっきから、何なんだよお前はよー!!」

 ブチギレモードに入りつつある兜男。
 後ろに控えている軽装備の2人もトゲトゲしい雰囲気を出し始めていた。

 白魔法少女のコハクは、どうしたら良いのか分からないという涙目で俺を見つめてくる。

「大丈夫、大丈夫。俺に任せておけ」

 俺はコハクの綺麗な金髪ゆるゆるおさげな頭を、優しく撫でてあげるのだった。

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