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第二章
4.愛国者 中編 その③:英雄譚
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「ヘレナ! どこにいるの、ヘレナァー!」
ツォアル候の屋敷へと急行した私は、まず屋敷内に漂う色濃い混乱と失意の雰囲気に気圧された。それでもやはりまだ信じきれなくて、ヘレナの質の悪い冗談か誤報か何かだと思いたくて、最も詳しく事情を知るであろうヘレナを探して必死に走り回った。
「おい、うるさいぞ……リン」
何個目かの扉を開け放ったところで、背後から沈痛な面持ちのヘレナがひょっこり姿を現した。私はすぐに彼女へ詰め寄る。
「ヘレナ! 状況を説明しなさい!」
「……こっちだ、来い」
私はヘレナに案内されて屋敷の医務室へ通された。
ツォアル侯は、白いベッドの上に寝かされていた。服は脱がされ、非魔法的な治療の跡が全身に伺える。特に腹部の傷は深いようで、巻かれた包帯に夥しい量の血が滲んでいる。
「治療は間に合わなかった。最初の開通式への襲撃で出た負傷者のために、医療班の大半が出払っていたからな」
ツォアル候の奥さんらしき式服のドレスを着た女性が、ベッドに縋り付いてさめざめと泣いている。その側では、出来の悪い不肖の息子イツァク卿が椅子の上で涙目になりながら頭を抱えており、更にその周囲を気落ちした様子の使用人たちが囲んでいた。
そんな彼らを見ていると、ふと「ああ」と感じ入るものがあった。
ツォアル候は本当に死んだのか。
私は形容し難い激情に襲われ頭を掻きむしった。そして、その激情の矛先をヘレナに求めた。
「警備……警備は? どうして、突破されているのよ。ヘレナ、アンタが居てなんでこんなことに!」
「私を責めるのはお門違いだ。私は来賓の警備を担当していたからな」
「じゃあ、誰が――!?」
ヘレナは私の言葉を遮るように、カーテンの向こうを指差した。私がそのカーテンを乱暴に取っ払うと、そこにはシンシアが別のベッドの上に寝かされていた。彼女もまた深手を負っており、その所為で熱を出しているのか滝汗をかきながら魘されていた。
「シ、シンシア……?」
「ああ、ツォアル候を護衛していた唯一の人物。ツォアル候を暗殺した下手人を仕留めたのもシンシアだ」
それから、ヘレナはツォアル候が暗殺されるまでの流れを説明した。
蒸気機関車の出発を見送った後、ツォアル候は一度書斎へ戻られた。腰痛の悪化が理由だ。他の御家族はツォアル駅での開通式典パーティーに出席中だった。
この時までは護衛が数名ほど付いていたが、なぜかツォアル候は皆を書斎の外へ追い出した。
そんな絶好機を刺客が見逃す訳もなく、どこからともなく現れた月を蝕むものが書斎に居るツォアル候を襲ったという。中の物音を聞いて、外で待機していた護衛は急いで戻ったが、その時には全て終わっていた。
こういった事態に備えて、ヘレナはシンシアをこっそり屋根裏に潜ませていたのだという。そのシンシアが意識不明のために詳しい状況は分からないが、結局彼女もツォアル候を守りきれず、刺客の命と引き換えに重傷を負い、今も生死の境を彷徨っている。
「恐らく、刺客は複数人だったのだろう。そのうちの一人とシンシアが刺し違えたが、他の刺客がツォアル候を殺った訳だ」
ヘレナが淡々と推理を披露しているが、私の耳には半分も入っていなかった。意識は現実を離れ、自分の奥深くに潜ってゆく。
『これからも仲良くしてやってくれ』
客車でのベネディクトの言葉が脳裏に蘇ってくる。
(考えてみると……私は、シンシアのことをまだ何も知らない……)
都合よく利用した程度の関係だ。所詮は同じ王党派に所属しているというだけの薄っぺらい繋がりでしかない。それでいいと思っていた。しかし今は、そう考えていたことがとても勿体なく感じる。
私はツォアル候の理念に共感していた。だから、死力を尽くして戦った。
(じゃあ、アンタはなんで戦ったの?)
命を賭して、刺客と相打ちするほどの戦意を支えたのはなんだったのか。王党派としての義理か、使命感か、それとも別の何かか。当人がこんな状態になってしまった今となってはそれすら分からない。
知りたい、もっとシンシアのことが知りたい。
だから――。
「だから、死なないで……シンシア……! お願いだから、死なないで……!」
私はシンシアの手を握りしめて、心からそう願った。
気がつくと、ツォアル候が死んだと聞いた時には出なかった涙が私の頬を伝っていた。
今後の対応を協議するべく、私たちは屋敷で一番広い食堂へ場所を移した。私とヘレナ、そしてツォアル候の御家族である奥さんと息子イツァク卿は、準備の人手は足りているということで、用意された大量の椅子に着席して協議の開始を待った。
この協議の出席者は、軍・警察の責任者と王党派の要人、後は私のように戦闘の中で有用な情報を入手した者たちである。
(今後……か)
未来のことを考えると頭が痛くなる。
「どうすれば……どうすれば良いってのよ。ツォアル候の亡き後、鉄道計画はどうなるの? 跡継ぎはこんなんだし……ああ、もう……」
この国の輝かしき発展の未来に晴らしようもない暗雲が立ち籠め始めているという事実は、国士たるツォアル候を喪った事実と同じくらいに耐え難い絶望だった。本人を前にして――しかも、相手が曲がりなりにも貴族であるということすら忘れて――ネガティブな言葉が口をつくほどに。
言ってから「しまった」と思い、最低でも叱責を受けるぐらいは覚悟したが、奥さんも当のイツァク卿もばつが悪そうに口を固く引き結んで俯くだけだった。私に言われるまでもなく、力不足は当人たちの方が自覚していたのだろう。
「――リン」
しかし、鎮痛な面持ちを浮かべる彼らとは対照的に、ヘレナは既に失意から脱し凛とした表情で前を見据えていた。
「そんなことは些細なことだ」
「はぁ……? 何が、些細だってのよ!? ツォアル侯の貢献がどれだけのものだったか……!」
「死んだ者はいくら呼んでも戻ってはこない」
なんて冷たい奴だ。そして、そんなことは言われるまでもなく分かっている。しかし、そう簡単に割り切れないのが人情というものだろう。
「それに考えてもみろ。鉄道以外にもツォアル候が遺してくれたものはある筈だ」
ヘレナは、示唆を含んだ言い回しで私に理解を促す。脊髄反射的に反感を覚えながらも、私はその意を汲む。ツォアル候が遺してくれたもの……それは、ツォアル候が手づから育て上げた国内の技術者たちのことを言っているのだろう。
「トンネル工事から築堤工事まで、単に平地に敷くのとは違う苦労をした技術者たちには、かなりのノウハウが蓄積された筈だ。そして、養成所からの卒業生もこれからもっと増えてゆく。お雇いの外国人技術者の数は減少傾向にあり、コストも安く抑えられる。そして、開通式は成功した」
ヘレナはこの惨憺たる有様を前にして、なお涼し気な顔で「成功」と、そう言い切ってみせた。
「キミの活躍もあって、蒸気機関車は無事にエンゲデ駅にまで辿り着いた。三両編成だったのが二両に減っていることなど、エンゲデ駅の見物客は誰も知らないさ」
それはその通りなのだろうが、隣に遺族も居る前で喜びを示す彼女の神経が信じられなかった。
「今回の成功で、資金は王党派からも諸侯派からも出るだろう。何も、問題はない。あるとすれば――」
ヘレナは、極めて迂遠に問いかけるような視線をイツァク卿へ向けた。それに気付いたイツァク卿が、ビクッと肩を震わせる。
「気概の問題だけだ。侯の御子息に、彼の遺志を継いで鉄道建設の任を担う気概があるか、否か」
イツァク卿は虚をつかれたような顔をした。責められると思ったのだろう、貶されると、腐されると覚悟したのだろう。しかし、そうやって堅めた心の防御を貫くような、期待の籠もった発破を受けてイツァク卿は放心状態に陥ったようだった。
暫くして、イツァク卿はその顔をくしゃりと歪め、次いで真っ赤に染め上げた。羞恥によるものではなく、感涙の咽びを堪えるために。
再び見開かれた彼の眼には、これまでの情けない姿からすると想像もできないほどに熱くメラメラと燃ゆる覇気の炎が宿っていた。
(たったあれだけの言葉で、発破で、期待で、あのどうしようもないボンクラ男がツォアル候も斯くやという鬼気迫る国士に化けた……)
やるだろう。この男なら、やり遂げるだろうという確信を私は得た。
お見逸れしました、とひれ伏すほかない。何もないところから水や火を出すより、よほど魔法じみている。
自信のあった観察眼で負けた。いや、正確にいうとこれは人心掌握術か。
豚もおだてりゃ木に登る。流石に派閥闘争の中核で影響力を維持し続けてきただけのことはある。その上、こういった正攻法だけでなく、私に使ったような搦め手もできる女だ、ヘレナは。
(人間というものを、その動かし方を良く知っている。……私よりも)
その時、胸に生まれたモヤモヤした感情の正体を悟り、私は自嘲の笑みをこぼした。怒り、悲しみ、失意と来て、お次は嫉妬。よくよく激情を抱かずには居られないタチらしい。そんな私がなんだか滑稽で笑えた。
これで完全に吹っ切れた……とまでは言わないが、いつまでもメソメソしていたって仕方がないと思えるようにはなった。
(今後……そうね、今後のことを考えなくちゃあね)
ツォアル候は死んだ。もういない。だが、その遺志は息子のイツァク卿が受け継ぐ。
なら、私がすべきことは……。
「ヘレナ、ちょいと小便に行ってくるわ」
「ふっ……二十分後に戻ってこい。『怒れる民』の話は、恐らくそれくらいからだ」
「……ありがとう!」
何でもお見通しか。しかし、今回ばかりは噛み付くことはせず、素直に感謝して食堂を出た。
屋敷内の私が寝泊まりする部屋まで戻ったところで、ポンポンと服を叩く。
「マネ」
「もういいのか? ふぅー、ったく、息が詰まりそうだったぜ」
呼びかけに応じ、服下のマネが凝りをほぐすように体組織を蠢かせる。くすぐったかったのですぐに止めさせた。
政治的な話の気配がすると、マネは大体黙りこくる。気を使っているのは分かるが、慰めぐらいはして欲しかったと思うのは女々か? まあ、そんな意気地のない愚痴はさておき、こうして時間を作ったのはマネとゆっくり話をするためだ。
それを知ってか知らずか、マネが先に話し出す。
「なあ、ヘレナの奴は結構やり手じゃねえの。あれだけできりゃあ十分に傑物だぜ。奴のいう『英雄』とやらにも、自分でなれるんじゃねえか?」
「かもね」
「……リン」
マネは急に声のトーンを下げた。伝わっていたのだろう、私の抱いた激情の数々が。
「お前の負けん気はオレ様としても好ましく見てるがな。アレは将来何かを為す人物だぜ。『革命』だけに留まらず、その後の国をも主導するようになる。感情的に反目しても良いことないぞ」
「ないわね」
「だったら、いっそのこと取り入っちまえば――」
説得するマネの言葉を遮り、私はぴしゃりと宣言する。
「マネ、私はもう……そこのところは通り過ぎているのよ」
見当違いも甚だしい。そのような葛藤はこの際、捨て置く。『革命』にしても、来年になれば教えてくれるとヘレナの言質は取ったのだから、私はそれを信じる。もし反故にしようものなら本気で生皮を剥ぐ。私に二言はない。やるといったらやる。
足の引っ張り合いは非生産的だ。獅子身中の虫は潰せる時に潰しておくべきだが、今はその時ではない。そして、それは向こうも同じ考えの筈。
何の因果か、今だけはヘレナと同じ方角を向いていると確信している。
「私は覚悟を決めたわ。アンタも決めなさい」
「……あん? 何の覚悟だよ」
「己が信念に殉じ、死する覚悟よ」
危険な反体制勢力を野放しにしておけるか、ツォアル候の仇を討たずにおけるか、そして、なにより――このままアイツに舐められたまま引き下がれるか!
「私は、この後に編成されるであろう『怒れる民』の反攻作戦の実行部隊に志願するわ」
「……マジぃ?」
私は間髪入れず無言で首肯する。
「オレ様、自分がやらなくて良いことは無理にやらなくて良いと思うけどなぁ」
「マネ……アンタとは時々意見が合わなくなるわね」
思い返してみると、フェイナーン伯の屋敷に突っ込んだ時もそうだった。ある一線を越えた途端、マネは急に及び腰になる。まさか、臆している訳ではないのだろう。
今回とフェイナーン伯の一件との共通点は何か。思い当たるのは、私が自ら危地へ進もうとしていることぐらいだ。
まさか、いっちょ前に私の心配しているとでも? そんな使い魔らしい殊勝な振る舞いはマネには似合わない。
「伊達に永く生きちゃいねぇ。悠久の時を生きるオレ様からすると、人間の生き方は生き急いでいるように見えて仕方がねえ」
「生き急いでいる訳じゃないわ。ただ……」
「ただ?」
「どうせ死ぬなら意味のある死がしたいじゃない? きっと誰しもがそう思ってる」
「……あの教官に感化でもされたか? 死んだら意味もクソもねえだろ」
果てしなき隔絶の感。これが〝人界〟に住まう者と〝魔界〟に住まう者の死生観の差異なのだろうか。分かり合えぬのは残念だが、ともあれ、私の意思は変わらない。
私は相談をしにきた訳じゃない。決意表明をしにきたのだ。
「それでも……やるわ。何の意味がなくても、やらなかった自分を許せないから」
少しの沈黙の後、マネは「……カカッ」と笑った。
「なら、でっかくやれよ? 意味のある死だなんて、仮にそんなものができるとすりゃあ、英雄豪傑の類ぐらいなもんだぜ」
「……『英雄』……か」
一瞬、ヘレナの戯言が頭を過ぎる。マネもそれを意図して『英雄』なんて語句を持ち出したのだろう。私が躊躇するのを狙って。
しかし、それは全くの逆効果だった。
「――上等! なってやろうじゃないの!」
却って私は乗り気になった。蒙を啓かれた気分だ。
何もヘレナの用意した舞台に囚われる必要はない。私自身が舞台を用意し、脚本も演出も担い、他の誰のものでもない我が人生を上演してやっても良いのだ。どうして、気付かなかったのか。
「ただし、呼び方は私の好きに変えるわ! 『英雄』じゃなく『天才』とね!」
遅咲き不世出の『天才』が、並みいる強豪を追い落として『星団』の儀仗魔法士官になる! それこそ、私の思い描く理想の筋書きだ。
先程、医務室を出るまでにヘレナが見せていた青褪めた顔を見るに、これがヘレナの用意した舞台でないことは明白だ。
ここらで一つ特大の貢献を打ち立て、大いに目立たせてもらおう。しからば、教師からの覚えも良くなるだろうし、名声の高まりは王党派内における私への侮りを打ち消し、私の発言力を高めることだろう。
そのついでに、ムカつく奴らをぶっ倒せてスッキリするという感情的利益も得られるとなれば、もはや剣を取らぬ理由がない。
「腹ぁとっくに決まってるってか……ったく、勝手にしやがれ」
「ふふっ……行こう、マネ」
イリュリアの歴史に――新たな英雄譚を刻み込む。
ツォアル候の屋敷へと急行した私は、まず屋敷内に漂う色濃い混乱と失意の雰囲気に気圧された。それでもやはりまだ信じきれなくて、ヘレナの質の悪い冗談か誤報か何かだと思いたくて、最も詳しく事情を知るであろうヘレナを探して必死に走り回った。
「おい、うるさいぞ……リン」
何個目かの扉を開け放ったところで、背後から沈痛な面持ちのヘレナがひょっこり姿を現した。私はすぐに彼女へ詰め寄る。
「ヘレナ! 状況を説明しなさい!」
「……こっちだ、来い」
私はヘレナに案内されて屋敷の医務室へ通された。
ツォアル侯は、白いベッドの上に寝かされていた。服は脱がされ、非魔法的な治療の跡が全身に伺える。特に腹部の傷は深いようで、巻かれた包帯に夥しい量の血が滲んでいる。
「治療は間に合わなかった。最初の開通式への襲撃で出た負傷者のために、医療班の大半が出払っていたからな」
ツォアル候の奥さんらしき式服のドレスを着た女性が、ベッドに縋り付いてさめざめと泣いている。その側では、出来の悪い不肖の息子イツァク卿が椅子の上で涙目になりながら頭を抱えており、更にその周囲を気落ちした様子の使用人たちが囲んでいた。
そんな彼らを見ていると、ふと「ああ」と感じ入るものがあった。
ツォアル候は本当に死んだのか。
私は形容し難い激情に襲われ頭を掻きむしった。そして、その激情の矛先をヘレナに求めた。
「警備……警備は? どうして、突破されているのよ。ヘレナ、アンタが居てなんでこんなことに!」
「私を責めるのはお門違いだ。私は来賓の警備を担当していたからな」
「じゃあ、誰が――!?」
ヘレナは私の言葉を遮るように、カーテンの向こうを指差した。私がそのカーテンを乱暴に取っ払うと、そこにはシンシアが別のベッドの上に寝かされていた。彼女もまた深手を負っており、その所為で熱を出しているのか滝汗をかきながら魘されていた。
「シ、シンシア……?」
「ああ、ツォアル候を護衛していた唯一の人物。ツォアル候を暗殺した下手人を仕留めたのもシンシアだ」
それから、ヘレナはツォアル候が暗殺されるまでの流れを説明した。
蒸気機関車の出発を見送った後、ツォアル候は一度書斎へ戻られた。腰痛の悪化が理由だ。他の御家族はツォアル駅での開通式典パーティーに出席中だった。
この時までは護衛が数名ほど付いていたが、なぜかツォアル候は皆を書斎の外へ追い出した。
そんな絶好機を刺客が見逃す訳もなく、どこからともなく現れた月を蝕むものが書斎に居るツォアル候を襲ったという。中の物音を聞いて、外で待機していた護衛は急いで戻ったが、その時には全て終わっていた。
こういった事態に備えて、ヘレナはシンシアをこっそり屋根裏に潜ませていたのだという。そのシンシアが意識不明のために詳しい状況は分からないが、結局彼女もツォアル候を守りきれず、刺客の命と引き換えに重傷を負い、今も生死の境を彷徨っている。
「恐らく、刺客は複数人だったのだろう。そのうちの一人とシンシアが刺し違えたが、他の刺客がツォアル候を殺った訳だ」
ヘレナが淡々と推理を披露しているが、私の耳には半分も入っていなかった。意識は現実を離れ、自分の奥深くに潜ってゆく。
『これからも仲良くしてやってくれ』
客車でのベネディクトの言葉が脳裏に蘇ってくる。
(考えてみると……私は、シンシアのことをまだ何も知らない……)
都合よく利用した程度の関係だ。所詮は同じ王党派に所属しているというだけの薄っぺらい繋がりでしかない。それでいいと思っていた。しかし今は、そう考えていたことがとても勿体なく感じる。
私はツォアル候の理念に共感していた。だから、死力を尽くして戦った。
(じゃあ、アンタはなんで戦ったの?)
命を賭して、刺客と相打ちするほどの戦意を支えたのはなんだったのか。王党派としての義理か、使命感か、それとも別の何かか。当人がこんな状態になってしまった今となってはそれすら分からない。
知りたい、もっとシンシアのことが知りたい。
だから――。
「だから、死なないで……シンシア……! お願いだから、死なないで……!」
私はシンシアの手を握りしめて、心からそう願った。
気がつくと、ツォアル候が死んだと聞いた時には出なかった涙が私の頬を伝っていた。
今後の対応を協議するべく、私たちは屋敷で一番広い食堂へ場所を移した。私とヘレナ、そしてツォアル候の御家族である奥さんと息子イツァク卿は、準備の人手は足りているということで、用意された大量の椅子に着席して協議の開始を待った。
この協議の出席者は、軍・警察の責任者と王党派の要人、後は私のように戦闘の中で有用な情報を入手した者たちである。
(今後……か)
未来のことを考えると頭が痛くなる。
「どうすれば……どうすれば良いってのよ。ツォアル候の亡き後、鉄道計画はどうなるの? 跡継ぎはこんなんだし……ああ、もう……」
この国の輝かしき発展の未来に晴らしようもない暗雲が立ち籠め始めているという事実は、国士たるツォアル候を喪った事実と同じくらいに耐え難い絶望だった。本人を前にして――しかも、相手が曲がりなりにも貴族であるということすら忘れて――ネガティブな言葉が口をつくほどに。
言ってから「しまった」と思い、最低でも叱責を受けるぐらいは覚悟したが、奥さんも当のイツァク卿もばつが悪そうに口を固く引き結んで俯くだけだった。私に言われるまでもなく、力不足は当人たちの方が自覚していたのだろう。
「――リン」
しかし、鎮痛な面持ちを浮かべる彼らとは対照的に、ヘレナは既に失意から脱し凛とした表情で前を見据えていた。
「そんなことは些細なことだ」
「はぁ……? 何が、些細だってのよ!? ツォアル侯の貢献がどれだけのものだったか……!」
「死んだ者はいくら呼んでも戻ってはこない」
なんて冷たい奴だ。そして、そんなことは言われるまでもなく分かっている。しかし、そう簡単に割り切れないのが人情というものだろう。
「それに考えてもみろ。鉄道以外にもツォアル候が遺してくれたものはある筈だ」
ヘレナは、示唆を含んだ言い回しで私に理解を促す。脊髄反射的に反感を覚えながらも、私はその意を汲む。ツォアル候が遺してくれたもの……それは、ツォアル候が手づから育て上げた国内の技術者たちのことを言っているのだろう。
「トンネル工事から築堤工事まで、単に平地に敷くのとは違う苦労をした技術者たちには、かなりのノウハウが蓄積された筈だ。そして、養成所からの卒業生もこれからもっと増えてゆく。お雇いの外国人技術者の数は減少傾向にあり、コストも安く抑えられる。そして、開通式は成功した」
ヘレナはこの惨憺たる有様を前にして、なお涼し気な顔で「成功」と、そう言い切ってみせた。
「キミの活躍もあって、蒸気機関車は無事にエンゲデ駅にまで辿り着いた。三両編成だったのが二両に減っていることなど、エンゲデ駅の見物客は誰も知らないさ」
それはその通りなのだろうが、隣に遺族も居る前で喜びを示す彼女の神経が信じられなかった。
「今回の成功で、資金は王党派からも諸侯派からも出るだろう。何も、問題はない。あるとすれば――」
ヘレナは、極めて迂遠に問いかけるような視線をイツァク卿へ向けた。それに気付いたイツァク卿が、ビクッと肩を震わせる。
「気概の問題だけだ。侯の御子息に、彼の遺志を継いで鉄道建設の任を担う気概があるか、否か」
イツァク卿は虚をつかれたような顔をした。責められると思ったのだろう、貶されると、腐されると覚悟したのだろう。しかし、そうやって堅めた心の防御を貫くような、期待の籠もった発破を受けてイツァク卿は放心状態に陥ったようだった。
暫くして、イツァク卿はその顔をくしゃりと歪め、次いで真っ赤に染め上げた。羞恥によるものではなく、感涙の咽びを堪えるために。
再び見開かれた彼の眼には、これまでの情けない姿からすると想像もできないほどに熱くメラメラと燃ゆる覇気の炎が宿っていた。
(たったあれだけの言葉で、発破で、期待で、あのどうしようもないボンクラ男がツォアル候も斯くやという鬼気迫る国士に化けた……)
やるだろう。この男なら、やり遂げるだろうという確信を私は得た。
お見逸れしました、とひれ伏すほかない。何もないところから水や火を出すより、よほど魔法じみている。
自信のあった観察眼で負けた。いや、正確にいうとこれは人心掌握術か。
豚もおだてりゃ木に登る。流石に派閥闘争の中核で影響力を維持し続けてきただけのことはある。その上、こういった正攻法だけでなく、私に使ったような搦め手もできる女だ、ヘレナは。
(人間というものを、その動かし方を良く知っている。……私よりも)
その時、胸に生まれたモヤモヤした感情の正体を悟り、私は自嘲の笑みをこぼした。怒り、悲しみ、失意と来て、お次は嫉妬。よくよく激情を抱かずには居られないタチらしい。そんな私がなんだか滑稽で笑えた。
これで完全に吹っ切れた……とまでは言わないが、いつまでもメソメソしていたって仕方がないと思えるようにはなった。
(今後……そうね、今後のことを考えなくちゃあね)
ツォアル候は死んだ。もういない。だが、その遺志は息子のイツァク卿が受け継ぐ。
なら、私がすべきことは……。
「ヘレナ、ちょいと小便に行ってくるわ」
「ふっ……二十分後に戻ってこい。『怒れる民』の話は、恐らくそれくらいからだ」
「……ありがとう!」
何でもお見通しか。しかし、今回ばかりは噛み付くことはせず、素直に感謝して食堂を出た。
屋敷内の私が寝泊まりする部屋まで戻ったところで、ポンポンと服を叩く。
「マネ」
「もういいのか? ふぅー、ったく、息が詰まりそうだったぜ」
呼びかけに応じ、服下のマネが凝りをほぐすように体組織を蠢かせる。くすぐったかったのですぐに止めさせた。
政治的な話の気配がすると、マネは大体黙りこくる。気を使っているのは分かるが、慰めぐらいはして欲しかったと思うのは女々か? まあ、そんな意気地のない愚痴はさておき、こうして時間を作ったのはマネとゆっくり話をするためだ。
それを知ってか知らずか、マネが先に話し出す。
「なあ、ヘレナの奴は結構やり手じゃねえの。あれだけできりゃあ十分に傑物だぜ。奴のいう『英雄』とやらにも、自分でなれるんじゃねえか?」
「かもね」
「……リン」
マネは急に声のトーンを下げた。伝わっていたのだろう、私の抱いた激情の数々が。
「お前の負けん気はオレ様としても好ましく見てるがな。アレは将来何かを為す人物だぜ。『革命』だけに留まらず、その後の国をも主導するようになる。感情的に反目しても良いことないぞ」
「ないわね」
「だったら、いっそのこと取り入っちまえば――」
説得するマネの言葉を遮り、私はぴしゃりと宣言する。
「マネ、私はもう……そこのところは通り過ぎているのよ」
見当違いも甚だしい。そのような葛藤はこの際、捨て置く。『革命』にしても、来年になれば教えてくれるとヘレナの言質は取ったのだから、私はそれを信じる。もし反故にしようものなら本気で生皮を剥ぐ。私に二言はない。やるといったらやる。
足の引っ張り合いは非生産的だ。獅子身中の虫は潰せる時に潰しておくべきだが、今はその時ではない。そして、それは向こうも同じ考えの筈。
何の因果か、今だけはヘレナと同じ方角を向いていると確信している。
「私は覚悟を決めたわ。アンタも決めなさい」
「……あん? 何の覚悟だよ」
「己が信念に殉じ、死する覚悟よ」
危険な反体制勢力を野放しにしておけるか、ツォアル候の仇を討たずにおけるか、そして、なにより――このままアイツに舐められたまま引き下がれるか!
「私は、この後に編成されるであろう『怒れる民』の反攻作戦の実行部隊に志願するわ」
「……マジぃ?」
私は間髪入れず無言で首肯する。
「オレ様、自分がやらなくて良いことは無理にやらなくて良いと思うけどなぁ」
「マネ……アンタとは時々意見が合わなくなるわね」
思い返してみると、フェイナーン伯の屋敷に突っ込んだ時もそうだった。ある一線を越えた途端、マネは急に及び腰になる。まさか、臆している訳ではないのだろう。
今回とフェイナーン伯の一件との共通点は何か。思い当たるのは、私が自ら危地へ進もうとしていることぐらいだ。
まさか、いっちょ前に私の心配しているとでも? そんな使い魔らしい殊勝な振る舞いはマネには似合わない。
「伊達に永く生きちゃいねぇ。悠久の時を生きるオレ様からすると、人間の生き方は生き急いでいるように見えて仕方がねえ」
「生き急いでいる訳じゃないわ。ただ……」
「ただ?」
「どうせ死ぬなら意味のある死がしたいじゃない? きっと誰しもがそう思ってる」
「……あの教官に感化でもされたか? 死んだら意味もクソもねえだろ」
果てしなき隔絶の感。これが〝人界〟に住まう者と〝魔界〟に住まう者の死生観の差異なのだろうか。分かり合えぬのは残念だが、ともあれ、私の意思は変わらない。
私は相談をしにきた訳じゃない。決意表明をしにきたのだ。
「それでも……やるわ。何の意味がなくても、やらなかった自分を許せないから」
少しの沈黙の後、マネは「……カカッ」と笑った。
「なら、でっかくやれよ? 意味のある死だなんて、仮にそんなものができるとすりゃあ、英雄豪傑の類ぐらいなもんだぜ」
「……『英雄』……か」
一瞬、ヘレナの戯言が頭を過ぎる。マネもそれを意図して『英雄』なんて語句を持ち出したのだろう。私が躊躇するのを狙って。
しかし、それは全くの逆効果だった。
「――上等! なってやろうじゃないの!」
却って私は乗り気になった。蒙を啓かれた気分だ。
何もヘレナの用意した舞台に囚われる必要はない。私自身が舞台を用意し、脚本も演出も担い、他の誰のものでもない我が人生を上演してやっても良いのだ。どうして、気付かなかったのか。
「ただし、呼び方は私の好きに変えるわ! 『英雄』じゃなく『天才』とね!」
遅咲き不世出の『天才』が、並みいる強豪を追い落として『星団』の儀仗魔法士官になる! それこそ、私の思い描く理想の筋書きだ。
先程、医務室を出るまでにヘレナが見せていた青褪めた顔を見るに、これがヘレナの用意した舞台でないことは明白だ。
ここらで一つ特大の貢献を打ち立て、大いに目立たせてもらおう。しからば、教師からの覚えも良くなるだろうし、名声の高まりは王党派内における私への侮りを打ち消し、私の発言力を高めることだろう。
そのついでに、ムカつく奴らをぶっ倒せてスッキリするという感情的利益も得られるとなれば、もはや剣を取らぬ理由がない。
「腹ぁとっくに決まってるってか……ったく、勝手にしやがれ」
「ふふっ……行こう、マネ」
イリュリアの歴史に――新たな英雄譚を刻み込む。
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