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トヨの戦い
再起
しおりを挟む肌を突き刺す寒さが連日続いている。
北東沿岸区での防衛線を突破された俺たちは島の南東部、トヨ州まで撤退した。この街はこの島の経済の中心地で、高層ビルが立ち並ぶ都心区から伝統的な白壁造りの民家が立ち並ぶ住宅地区まである。
政府はトヨ州を首都防衛のための重要拠点と位置づけしていて、それだけにこの防衛作戦には全国から部隊が集まってきていた。
SDTF(Segwa Defense Task Force)セグワ特殊防衛戦術隊と呼ばれる特殊部隊もいた。
俺は第113防衛隊に再編され、トヨの街の防衛作戦の主軸部隊として任務に就いた。
忘れもしない初戦の撤退から既に2ヶ月過ぎていた。
「103の生き残りだって?」
113の隊員に尋ねられた。
「ああ、」
「そ、その、本当に残念だったと思うよ。なんて言うか、彼らの分も戦おう!」
「あ、あぁ。ていうか、お前誰?」
「あ、ごめんごめん、俺はカール。階級は伍長だ。君と一緒。」
どこかハルと同じ匂いがした。悪いやつじゃ無さそうだな。黒人の彼は雪が積もり始めたこの都心部で一際目立つ男だ。
「それだけ肌が黒けりゃ敵に見つかるぞ」
少しからかってみた。
「ハイ、お前人権侵害~」
こちらを指差して憎たらしい顔で言ってきた。単純に面白かった。ここ最近でこんなに笑ったのは初めてかもしれない。しばらくは笑いのツボにはまり笑っていた。
「いい奴だろ?カールは」
カールの古くからの友のリスト伍長が話しかけてきた。リストはカールと打って変わって真っ白肌に赤い頰が特徴的だった。
「ムードメーカーって奴だな。こんなに笑ったのは久しぶりだ。」
「定期的に無理してでも笑っとけよ。じゃなきゃ鬱になるぞ?」
「あぁ。ありがとな」
俺は比較的雪の積もってないベンチにリスト伍長と共に座った。
目の前のコンクリートにカールが他の隊員と雪だるまを作っているのを傍目に見ながらリストが尋ねてきた。
「北東で戦友を何人失った?」
「分からない。行方不明だから。ただ、親友は1人失った。」
「それは残念だ。実は俺も親友を1人失ってな。」
「え?」
「ホントさ、お前らが北東沿岸で防衛戦を展開していた時、俺は35部隊にいた。任務内容はここトヨの街での避難誘導と防衛陣地の設営だ。その任務中に敵の空襲があったんだよ。突然低空飛行してビルの谷間を抜けて来たんだ。物凄いスピードで過ぎ去ったかと思ったら、しっかりと爆弾を落としていきやがってなー、その爆発で俺は親友を1人失っちまったんだ。」
「轟音で気づかなかったのか?」
「その時は重機がたくさん稼働しててなーそっち騒音の方がうるさくてな、」
「そうか、それこそ残念だ。」
「まぁ親友を失って辛い思いしてんのはお前だけじゃ無いって事だ。俺は先に死んだ仲間や親友の為に戦って死ぬつもりだ。」
「俺もだよ。俺も先に死んだ友のために最期まで戦うって決めたんだ。」
「なら話は簡単だな!」
「ああ、守り抜こう!」
ギュッとリストと握手を交わした。
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