少女漫画のヒロインに転生した男子高校生は恋愛フラグをへし折りたい

よこすかなみ

文字の大きさ
15 / 42
第2章 少女漫画の定石

噂を知り尽くしている男

しおりを挟む
 伊集院と鬼塚を、もう一度仲良くさせないとダメだ。

 翌日、すっかり体調も元通りになった俺は、授業を受けながらも悶々と考え続けていた。
 この少女漫画の世界で、ヒロインたる俺が恋をしない方法を。

 よくよく記憶を辿って思い出してみれば、やっぱり犬猿の仲である二人に争われることで、揺れ動く乙女心が『ウリ』のストーリーだった気がするのだ。
 あいにく、最後まで読み切っていないから誰とくっついたのか、オチはわからないけれど……。

 伊集院と鬼塚の仲を取り持つことによって漫画のストーリー自体を捻じ曲げ、二人が俺を好きになるという恋愛フラグをへし折れる可能性は捨て切れない。

 俺は、そこに賭けてみようと思う。

 となれば、俺がするべきことは変わらない。
 過去の二人の間に何があったのか、情報を仕入れなければ。
 情報を制する者が戦いを制するのだ。
 
 伊集院は生徒会長、鬼塚はあのモテっぷり。
 この学校では有名人だからきっと誰もが知っているだろうが、過去を知るとなると話は変わってくる。

 二人の過去を知っていそうな人物で真っ先に思いつくのは、やはり綾小路。
 しかし、あの口ぶりからして、あまり昔の話を語りたくはなさそうだった。
 他に俺が頼れる人物と言えば──

『人目につかない場所って、内緒話をしやすいみたいでね──人の噂話とかよく耳に入ってくるよ?』

 ふと、南雲の台詞がよぎった。
 そうだ、そこかしこで昼寝をしているらしい南雲なら情報通かもしれない。
 なんなら、女子にモテる分、本人に聞き出す気はなくとも自然と情報網が広がっていそうだ。

 隣の席の南雲を見る。
 南雲は授業中だと言うのに、机に突っ伏して堂々と眠りこけていた。
 三限目が体育、からの四限の今。
 南雲のような生徒は少なくなく、優しい世界史の先生は淡々と授業を続けていた。

 昼休みになるや否や、俺は南雲の首根っこを掴んで屋上へと連れ去った。
 南雲は寝ぼけた目を擦りながら、「なになに~?」とすんなりついてきた。

 昨日、昼食を共にした給水塔の裏に到着すると、俺が何か言い出す前に南雲が口を開いた。
「お金なら持ってないよ」
「カツアゲじゃねぇよ!」

 女子高生の俺にカツアゲされたところで、男の南雲のほうが力は強いんだから抵抗すればワンパンで負けてしまう。

「じゃあ、なに? こんな人気のないところに連れ出して……まさか、告白?」
「本当に告白だったらどうすんだ!」
 デリカシーのなさに思わず声がデカくなるが、本題はそれじゃない。

 こほん、と咳払いをして俺は本題に入る。
「南雲って、いろんな噂話よく聞くって言ってたよな」
「言ったかな、そんなこと」
「とぼけんなよ。伊集院と鬼塚の関係って、知ってるか?」
 あ、いきなり個人名をぶつけてもわからないか。
 言ってから気づいたが、南雲は「あぁ」と全部お見通しな風にうなずいた。

「生徒会長と不良少年の関係? 聞いたことあるよ。綾小路さんと三人は、もともと幼馴染で仲良し三人組だったんだってね」

 ……やっぱり、こいつに頼って正解だった……!
 ニヤリ、と上がる口角が抑えきれない。

 伊集院と鬼塚に加え、綾小路も含めた関係性にまで詳しそうな口ぶり。
 南雲に期待するな、と言うほうが無茶だ。
 俺は前のめりになって南雲に詰め寄った。

「それで? 他には何を知ってるんだ?」
「ち、近いよ、早乙女さん……」
「あ、ごめん……」

 高まる興奮を抑えて一歩下がる。
 南雲はふぅと軽く息を吐いた。
「他に知ってること、ね……。そうだなぁ……」

 ワクワクしながら、思い出すように上を見る南雲の回答を待つ。

「鬼塚くんのファンクラブの女の子たちが、君を恨んでいることとか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

処理中です...