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第2章 少女漫画の定石
噂を知り尽くしている男
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伊集院と鬼塚を、もう一度仲良くさせないとダメだ。
翌日、すっかり体調も元通りになった俺は、授業を受けながらも悶々と考え続けていた。
この少女漫画の世界で、ヒロインたる俺が恋をしない方法を。
よくよく記憶を辿って思い出してみれば、やっぱり犬猿の仲である二人に争われることで、揺れ動く乙女心が『ウリ』のストーリーだった気がするのだ。
あいにく、最後まで読み切っていないから誰とくっついたのか、オチはわからないけれど……。
伊集院と鬼塚の仲を取り持つことによって漫画のストーリー自体を捻じ曲げ、二人が俺を好きになるという恋愛フラグをへし折れる可能性は捨て切れない。
俺は、そこに賭けてみようと思う。
となれば、俺がするべきことは変わらない。
過去の二人の間に何があったのか、情報を仕入れなければ。
情報を制する者が戦いを制するのだ。
伊集院は生徒会長、鬼塚はあのモテっぷり。
この学校では有名人だからきっと誰もが知っているだろうが、過去を知るとなると話は変わってくる。
二人の過去を知っていそうな人物で真っ先に思いつくのは、やはり綾小路。
しかし、あの口ぶりからして、あまり昔の話を語りたくはなさそうだった。
他に俺が頼れる人物と言えば──
『人目につかない場所って、内緒話をしやすいみたいでね──人の噂話とかよく耳に入ってくるよ?』
ふと、南雲の台詞がよぎった。
そうだ、そこかしこで昼寝をしているらしい南雲なら情報通かもしれない。
なんなら、女子にモテる分、本人に聞き出す気はなくとも自然と情報網が広がっていそうだ。
隣の席の南雲を見る。
南雲は授業中だと言うのに、机に突っ伏して堂々と眠りこけていた。
三限目が体育、からの四限の今。
南雲のような生徒は少なくなく、優しい世界史の先生は淡々と授業を続けていた。
昼休みになるや否や、俺は南雲の首根っこを掴んで屋上へと連れ去った。
南雲は寝ぼけた目を擦りながら、「なになに~?」とすんなりついてきた。
昨日、昼食を共にした給水塔の裏に到着すると、俺が何か言い出す前に南雲が口を開いた。
「お金なら持ってないよ」
「カツアゲじゃねぇよ!」
女子高生の俺にカツアゲされたところで、男の南雲のほうが力は強いんだから抵抗すればワンパンで負けてしまう。
「じゃあ、なに? こんな人気のないところに連れ出して……まさか、告白?」
「本当に告白だったらどうすんだ!」
デリカシーのなさに思わず声がデカくなるが、本題はそれじゃない。
こほん、と咳払いをして俺は本題に入る。
「南雲って、いろんな噂話よく聞くって言ってたよな」
「言ったかな、そんなこと」
「とぼけんなよ。伊集院と鬼塚の関係って、知ってるか?」
あ、いきなり個人名をぶつけてもわからないか。
言ってから気づいたが、南雲は「あぁ」と全部お見通しな風にうなずいた。
「生徒会長と不良少年の関係? 聞いたことあるよ。綾小路さんと三人は、もともと幼馴染で仲良し三人組だったんだってね」
……やっぱり、こいつに頼って正解だった……!
ニヤリ、と上がる口角が抑えきれない。
伊集院と鬼塚に加え、綾小路も含めた関係性にまで詳しそうな口ぶり。
南雲に期待するな、と言うほうが無茶だ。
俺は前のめりになって南雲に詰め寄った。
「それで? 他には何を知ってるんだ?」
「ち、近いよ、早乙女さん……」
「あ、ごめん……」
高まる興奮を抑えて一歩下がる。
南雲はふぅと軽く息を吐いた。
「他に知ってること、ね……。そうだなぁ……」
ワクワクしながら、思い出すように上を見る南雲の回答を待つ。
「鬼塚くんのファンクラブの女の子たちが、君を恨んでいることとか?」
翌日、すっかり体調も元通りになった俺は、授業を受けながらも悶々と考え続けていた。
この少女漫画の世界で、ヒロインたる俺が恋をしない方法を。
よくよく記憶を辿って思い出してみれば、やっぱり犬猿の仲である二人に争われることで、揺れ動く乙女心が『ウリ』のストーリーだった気がするのだ。
あいにく、最後まで読み切っていないから誰とくっついたのか、オチはわからないけれど……。
伊集院と鬼塚の仲を取り持つことによって漫画のストーリー自体を捻じ曲げ、二人が俺を好きになるという恋愛フラグをへし折れる可能性は捨て切れない。
俺は、そこに賭けてみようと思う。
となれば、俺がするべきことは変わらない。
過去の二人の間に何があったのか、情報を仕入れなければ。
情報を制する者が戦いを制するのだ。
伊集院は生徒会長、鬼塚はあのモテっぷり。
この学校では有名人だからきっと誰もが知っているだろうが、過去を知るとなると話は変わってくる。
二人の過去を知っていそうな人物で真っ先に思いつくのは、やはり綾小路。
しかし、あの口ぶりからして、あまり昔の話を語りたくはなさそうだった。
他に俺が頼れる人物と言えば──
『人目につかない場所って、内緒話をしやすいみたいでね──人の噂話とかよく耳に入ってくるよ?』
ふと、南雲の台詞がよぎった。
そうだ、そこかしこで昼寝をしているらしい南雲なら情報通かもしれない。
なんなら、女子にモテる分、本人に聞き出す気はなくとも自然と情報網が広がっていそうだ。
隣の席の南雲を見る。
南雲は授業中だと言うのに、机に突っ伏して堂々と眠りこけていた。
三限目が体育、からの四限の今。
南雲のような生徒は少なくなく、優しい世界史の先生は淡々と授業を続けていた。
昼休みになるや否や、俺は南雲の首根っこを掴んで屋上へと連れ去った。
南雲は寝ぼけた目を擦りながら、「なになに~?」とすんなりついてきた。
昨日、昼食を共にした給水塔の裏に到着すると、俺が何か言い出す前に南雲が口を開いた。
「お金なら持ってないよ」
「カツアゲじゃねぇよ!」
女子高生の俺にカツアゲされたところで、男の南雲のほうが力は強いんだから抵抗すればワンパンで負けてしまう。
「じゃあ、なに? こんな人気のないところに連れ出して……まさか、告白?」
「本当に告白だったらどうすんだ!」
デリカシーのなさに思わず声がデカくなるが、本題はそれじゃない。
こほん、と咳払いをして俺は本題に入る。
「南雲って、いろんな噂話よく聞くって言ってたよな」
「言ったかな、そんなこと」
「とぼけんなよ。伊集院と鬼塚の関係って、知ってるか?」
あ、いきなり個人名をぶつけてもわからないか。
言ってから気づいたが、南雲は「あぁ」と全部お見通しな風にうなずいた。
「生徒会長と不良少年の関係? 聞いたことあるよ。綾小路さんと三人は、もともと幼馴染で仲良し三人組だったんだってね」
……やっぱり、こいつに頼って正解だった……!
ニヤリ、と上がる口角が抑えきれない。
伊集院と鬼塚に加え、綾小路も含めた関係性にまで詳しそうな口ぶり。
南雲に期待するな、と言うほうが無茶だ。
俺は前のめりになって南雲に詰め寄った。
「それで? 他には何を知ってるんだ?」
「ち、近いよ、早乙女さん……」
「あ、ごめん……」
高まる興奮を抑えて一歩下がる。
南雲はふぅと軽く息を吐いた。
「他に知ってること、ね……。そうだなぁ……」
ワクワクしながら、思い出すように上を見る南雲の回答を待つ。
「鬼塚くんのファンクラブの女の子たちが、君を恨んでいることとか?」
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