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1:文芸部は本日をもってアニメ研と合併しました。
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部室のドアが勢いよく開くと、部長が高らかに宣言した。
「文芸部は、本日をもってアニメ研と合併する事になった」
部長のご乱心なのか? いや、いつもと違う。BLが世界から焚書されて日が浅いのに、もう立ち直っているとはその程度の気持ちだったんだ。と、言うよりあの部長に人望がある事が信じられない。振られればタイヤの空気を抜くし、僕の尊いものを平気で削除するし、生徒会よりもアニメ研が合併を認めるとは・・・・、何か弱みを掴んで脅しをかけた可能性が高い。あの部長だからな。
「部長、なんでアニメ研と合併するんですか?」
当たり障りなく経緯は確認しておかないと、あとでどう言う火の粉が飛んでくるのか分からないし。
「絵を描ける以外に理由は必要ないでしょ」
「美術部も絵を描きますよね?」
部長が不機嫌になっていく・・・・、
「山の絵を描けてどうする? ピカソ気取りの絵に何の価値がある?」
ううう、怖いですぅ。
「イラストですかぁ?」
「お!」
部長の機嫌がよくなった。分かりやすいですぅ。
「私のともじ君が消されてしまったのは、デジタル焚書にやられてしまったから。そこで気がついたんだよ。私のともじ君は運営サイトの手の中にあったと・・・・」
あ・・・泣き崩れてしまった。
「部長、しっかりしてください。アニメ研と合併すれば復活できるんでしょ?」
と、当たり障りなく慰めておかないと、あとが怖い・・・・。
「そうでした。BLがなければ、BLを創ればいい。しかも自分で創ればあの作品のキャラとこの作品のキャラとあんな事やそんな事になっちゃえるんだもん。あおいさんとともじ君に挟まれたいの・・・」
しばらくの沈黙の後、我に戻った部長からグーパンチが飛んできた。
「痛いですぅ。だから、三次元は嫌いですぅ」
? アニメ研が創るのに文芸部と合併する必要があるのかな?
「アニメ研の方が、早く創ってくれるといいですね」
また、グーパンチが飛んできた。が、にこやかに微笑んでいる・・・・。
「まさか、ストーリーを考えるのって僕ですか?」
「アニメ研はイラスト専門だよ」
「齣割りは? 背景は?」
「面白ければ、気にしなくていい」
面白くなかったら殺される・・・・、部長の微笑みがそれを物語っていた。
「明日から作業を進めるから、プロット考えておくように」
部長は納得したように頷きながら部室を後にした。
部活に行ったら殺される、休んでも殺される、部活を辞めたいけどそれこそ殺される・・・・、全ては部活見学の時が地獄の始まりだった。
文芸部に行くと、読書をしている清楚な姿が目に飛び込んできた。これこそ理想の文芸部だと思っている間に、出口のカギは閉められていた。背後の気配に気がついた時には、そのまま追い詰められ、まさかの壁ドン。
「きみ、入部届にサインしないで部屋から出る自信があるかな?」
あの後、どうやって家に戻ったのか記憶がなかった。覚えているのは、翌日の終業ベルの直後に教室の外に部長が立っていた事だった。
部室でプロットを書き進めている。主人公が部長と同じ性格になっているのが気がかりだけど仕方がない。ストーリーのどこにラブがあるのか分からない。こんな感じで良いのだろうか? 百合ならいくらでも書ける。ベストセラーなら一言一句再現する事だってできる。でも、ほんと百合と比べれば地獄絵図以外の何ものでもない。これで上手くいかなかったら、グーパンチの嵐・・・・、他にも何かされるかも知れない。見当が付かないだけになお怖い・・・・、
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ・・・・」
「なにから、逃げたいのかな?」
「ぶ、部長!! いつから入らしたんですか・・・・」
「最初からだ」
膝が震えている・・・・、そんなはずはない。部室のカギを開けたのは僕だ。
「まぁいい。この子がアニメ研のさゆりだ」
部長の後ろに隠れるように立っていた。 ん? まさか、部活見学の時にいた清楚な人・・・。
「さゆり、こいつがストーリー考えるから、イラストは頼むよ」
「はい、お姉さま」
え?・・・、今『お姉さま』って聞こえた。
「尊い・・・」
グーパンチが飛んできた。
「部長・・・」
が、お姉さまって呼ばれている。部長がお姉さま・・・、文芸部に入って良かった。
「プロット見せな」
書きかけのプロットを取られてしまった。部長は、一瞥するとページを行き来しながら精査した。
「台詞と場面の説明だけだな・・・、よく書けているな。特に主人公のドSぶりがファン心理を鷲掴みだな。BLを読んでいたのか?」
え?・・・・そうなのか? 部長を参考に主人公を創ったとは言えない。まさか、BLの影響であーなったのか? そんなはずはない。きっとBLに失礼だ。
「いえ、平積みからのインスピレーションです」
「ふーん・・・。さゆり、どう? 出来そうかな?」
なんだ、この優しい声色は。これが部長の声なのか? プロット渡せばいいのに隣に座っている。部長の手がなぜテーブルの下にある? ダメだ。この部室の中でBLを考えるなんて無理だぁ。目の前の光景を一言一句書き残したい。
「文芸部は、本日をもってアニメ研と合併する事になった」
部長のご乱心なのか? いや、いつもと違う。BLが世界から焚書されて日が浅いのに、もう立ち直っているとはその程度の気持ちだったんだ。と、言うよりあの部長に人望がある事が信じられない。振られればタイヤの空気を抜くし、僕の尊いものを平気で削除するし、生徒会よりもアニメ研が合併を認めるとは・・・・、何か弱みを掴んで脅しをかけた可能性が高い。あの部長だからな。
「部長、なんでアニメ研と合併するんですか?」
当たり障りなく経緯は確認しておかないと、あとでどう言う火の粉が飛んでくるのか分からないし。
「絵を描ける以外に理由は必要ないでしょ」
「美術部も絵を描きますよね?」
部長が不機嫌になっていく・・・・、
「山の絵を描けてどうする? ピカソ気取りの絵に何の価値がある?」
ううう、怖いですぅ。
「イラストですかぁ?」
「お!」
部長の機嫌がよくなった。分かりやすいですぅ。
「私のともじ君が消されてしまったのは、デジタル焚書にやられてしまったから。そこで気がついたんだよ。私のともじ君は運営サイトの手の中にあったと・・・・」
あ・・・泣き崩れてしまった。
「部長、しっかりしてください。アニメ研と合併すれば復活できるんでしょ?」
と、当たり障りなく慰めておかないと、あとが怖い・・・・。
「そうでした。BLがなければ、BLを創ればいい。しかも自分で創ればあの作品のキャラとこの作品のキャラとあんな事やそんな事になっちゃえるんだもん。あおいさんとともじ君に挟まれたいの・・・」
しばらくの沈黙の後、我に戻った部長からグーパンチが飛んできた。
「痛いですぅ。だから、三次元は嫌いですぅ」
? アニメ研が創るのに文芸部と合併する必要があるのかな?
「アニメ研の方が、早く創ってくれるといいですね」
また、グーパンチが飛んできた。が、にこやかに微笑んでいる・・・・。
「まさか、ストーリーを考えるのって僕ですか?」
「アニメ研はイラスト専門だよ」
「齣割りは? 背景は?」
「面白ければ、気にしなくていい」
面白くなかったら殺される・・・・、部長の微笑みがそれを物語っていた。
「明日から作業を進めるから、プロット考えておくように」
部長は納得したように頷きながら部室を後にした。
部活に行ったら殺される、休んでも殺される、部活を辞めたいけどそれこそ殺される・・・・、全ては部活見学の時が地獄の始まりだった。
文芸部に行くと、読書をしている清楚な姿が目に飛び込んできた。これこそ理想の文芸部だと思っている間に、出口のカギは閉められていた。背後の気配に気がついた時には、そのまま追い詰められ、まさかの壁ドン。
「きみ、入部届にサインしないで部屋から出る自信があるかな?」
あの後、どうやって家に戻ったのか記憶がなかった。覚えているのは、翌日の終業ベルの直後に教室の外に部長が立っていた事だった。
部室でプロットを書き進めている。主人公が部長と同じ性格になっているのが気がかりだけど仕方がない。ストーリーのどこにラブがあるのか分からない。こんな感じで良いのだろうか? 百合ならいくらでも書ける。ベストセラーなら一言一句再現する事だってできる。でも、ほんと百合と比べれば地獄絵図以外の何ものでもない。これで上手くいかなかったら、グーパンチの嵐・・・・、他にも何かされるかも知れない。見当が付かないだけになお怖い・・・・、
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ・・・・」
「なにから、逃げたいのかな?」
「ぶ、部長!! いつから入らしたんですか・・・・」
「最初からだ」
膝が震えている・・・・、そんなはずはない。部室のカギを開けたのは僕だ。
「まぁいい。この子がアニメ研のさゆりだ」
部長の後ろに隠れるように立っていた。 ん? まさか、部活見学の時にいた清楚な人・・・。
「さゆり、こいつがストーリー考えるから、イラストは頼むよ」
「はい、お姉さま」
え?・・・、今『お姉さま』って聞こえた。
「尊い・・・」
グーパンチが飛んできた。
「部長・・・」
が、お姉さまって呼ばれている。部長がお姉さま・・・、文芸部に入って良かった。
「プロット見せな」
書きかけのプロットを取られてしまった。部長は、一瞥するとページを行き来しながら精査した。
「台詞と場面の説明だけだな・・・、よく書けているな。特に主人公のドSぶりがファン心理を鷲掴みだな。BLを読んでいたのか?」
え?・・・・そうなのか? 部長を参考に主人公を創ったとは言えない。まさか、BLの影響であーなったのか? そんなはずはない。きっとBLに失礼だ。
「いえ、平積みからのインスピレーションです」
「ふーん・・・。さゆり、どう? 出来そうかな?」
なんだ、この優しい声色は。これが部長の声なのか? プロット渡せばいいのに隣に座っている。部長の手がなぜテーブルの下にある? ダメだ。この部室の中でBLを考えるなんて無理だぁ。目の前の光景を一言一句書き残したい。
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