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4:滞在編
映美サイド
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明日は報告会がある。豊彦くんのお陰で準備は万端。幾つかの方向性もイメージ出来ている。大丈夫。でも、豊彦くんが作ったおかずを並べ一人で食べ始めると、スペースポートタワーの事で頭がいっぱいになった。
この時間なら、搭乗手続き中かも? サイトにアクセスしてリアルタイムが分かる情報を探す。でも、射出時間しか出て来ない。搭乗手続きは旅客機と同じなのか? 検索しても出て来ない。
「折角美味しいおかずを作り置きしてくれたんだぞ。味わって食べないとね」
と、自分に言い聞かせて食べ始めても、右手に箸を持ちながら左手で検索を続けていた。
「うん、検索しても出て来ないのは、特別な事ではないからだよ。空港の搭乗手続きを参照と言う事だよ」
と、元気に自分に言い聞かせる。とりあえず食べる。直ぐ食べる。ズルズルでは何も進まない。食べながら考える・・・・。
!
『こちらは日本時間の19時です。
搭乗手続きが済んで、シートベルトで固定されている頃かな?
サイトで牽引船の軌道を見つけたから、今夜はここから見送りますね。
追記:全てのアドレスにメール送ったけどビックリしないでね。』
ウェブサイトのメール、端末のメールアドレス、ショートメッセージ、ビデオチャットの招待メール、研究室のアドレス以外には全部送信した。
送信エラーはなかった。少なくともメールサーバーには届いた。あとは豊彦くんがメールサーバーにアクセス出来るか? 射出後牽引船とドッキングして月周回軌道に向かう安定した状態になるにはシャトルの時間で夜中、日本時間で朝には返信が来るはず。果報は寝て待てと言う事だった。
しかし、朝起きてチェックしても返信がない。出勤前にチェックしても返信がない。始業前にチェックしても返信がない・・・・、既読もついていない。月基地用のアドレスがあるのか? 不慣れな環境でメールを打つ暇なく寝てしまったのか?
不安だけど報告会に集中しよう。成果を出さないと豊彦くんの協力に報えない。
報告会の後にチェックしても返信がない。退社後にチェックしても返信がない。帰宅後にチェックしても返信がない・・・・、既読もついていない。向こうはお昼を回っているはず、どうして?
どれかは届いているかも。今は無理でも基地に着いたら読めるかも。だから・・・・
『報告会、高評価だったよ。
ポイントが掴めるデータのまとめ方も評価されたよ。
重点研究開発に格上げされると思う。実用化に向けて一気に加速するよ。感謝』
スペースポートタワーのサイトを隈なく探す。シャトルも牽引船も、月基地もセレーネステーションも全部、スペースポートタワーのネットワーク内部の扱いになっている。豊彦くん側からメールサーバーに取りにいかないと届かない。
『いつ届くかな?
半調理のおかず、そのまま食べても美味しいよ。
冷めていても美味しいよ。
シャトルの機内食って何かな?』
『シャトルで宇宙酔いは大丈夫かな?
私の方がふわふわした感じだったよ。
おかしいよね?』
『メールが無理なら直接会いたい。
それなのに、曇りで月が見えないよ。
切ないよ。』
『もう月基地に着いたかな?
違うアドレスでメールが来るのかな?
送ったメールは見れないのかな?』
着信音の最初の一音で飛び起きた。電話番号を使ったショートメッセージに受信のマークがついている。画面を近づけて読む。
『やっと、メッセージが送れます。
航行中は送れないようです。瞑想して到着を待ちました。
ビデオチャットは容量問題でダメだそうです。
その代わりショートメッセージは大丈夫です。』
『ずーーーと不安でした。
昼も夜も空を見上げていました。
月が登ってないのに見上げていたなんて
おかしいよね。』
『僕も同じでした。
瞑想してるはずなのに、空に月を探していました。
おかしいですよね』
わずか数行のテキストメッセージを何度も何度も読み返した。こんなに短いのに豊彦くんの文章だ。
今の時間だと月は地平線の下。私の思いをニュートリノに載せて豊彦くんに送ろう。
この時間なら、搭乗手続き中かも? サイトにアクセスしてリアルタイムが分かる情報を探す。でも、射出時間しか出て来ない。搭乗手続きは旅客機と同じなのか? 検索しても出て来ない。
「折角美味しいおかずを作り置きしてくれたんだぞ。味わって食べないとね」
と、自分に言い聞かせて食べ始めても、右手に箸を持ちながら左手で検索を続けていた。
「うん、検索しても出て来ないのは、特別な事ではないからだよ。空港の搭乗手続きを参照と言う事だよ」
と、元気に自分に言い聞かせる。とりあえず食べる。直ぐ食べる。ズルズルでは何も進まない。食べながら考える・・・・。
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『こちらは日本時間の19時です。
搭乗手続きが済んで、シートベルトで固定されている頃かな?
サイトで牽引船の軌道を見つけたから、今夜はここから見送りますね。
追記:全てのアドレスにメール送ったけどビックリしないでね。』
ウェブサイトのメール、端末のメールアドレス、ショートメッセージ、ビデオチャットの招待メール、研究室のアドレス以外には全部送信した。
送信エラーはなかった。少なくともメールサーバーには届いた。あとは豊彦くんがメールサーバーにアクセス出来るか? 射出後牽引船とドッキングして月周回軌道に向かう安定した状態になるにはシャトルの時間で夜中、日本時間で朝には返信が来るはず。果報は寝て待てと言う事だった。
しかし、朝起きてチェックしても返信がない。出勤前にチェックしても返信がない。始業前にチェックしても返信がない・・・・、既読もついていない。月基地用のアドレスがあるのか? 不慣れな環境でメールを打つ暇なく寝てしまったのか?
不安だけど報告会に集中しよう。成果を出さないと豊彦くんの協力に報えない。
報告会の後にチェックしても返信がない。退社後にチェックしても返信がない。帰宅後にチェックしても返信がない・・・・、既読もついていない。向こうはお昼を回っているはず、どうして?
どれかは届いているかも。今は無理でも基地に着いたら読めるかも。だから・・・・
『報告会、高評価だったよ。
ポイントが掴めるデータのまとめ方も評価されたよ。
重点研究開発に格上げされると思う。実用化に向けて一気に加速するよ。感謝』
スペースポートタワーのサイトを隈なく探す。シャトルも牽引船も、月基地もセレーネステーションも全部、スペースポートタワーのネットワーク内部の扱いになっている。豊彦くん側からメールサーバーに取りにいかないと届かない。
『いつ届くかな?
半調理のおかず、そのまま食べても美味しいよ。
冷めていても美味しいよ。
シャトルの機内食って何かな?』
『シャトルで宇宙酔いは大丈夫かな?
私の方がふわふわした感じだったよ。
おかしいよね?』
『メールが無理なら直接会いたい。
それなのに、曇りで月が見えないよ。
切ないよ。』
『もう月基地に着いたかな?
違うアドレスでメールが来るのかな?
送ったメールは見れないのかな?』
着信音の最初の一音で飛び起きた。電話番号を使ったショートメッセージに受信のマークがついている。画面を近づけて読む。
『やっと、メッセージが送れます。
航行中は送れないようです。瞑想して到着を待ちました。
ビデオチャットは容量問題でダメだそうです。
その代わりショートメッセージは大丈夫です。』
『ずーーーと不安でした。
昼も夜も空を見上げていました。
月が登ってないのに見上げていたなんて
おかしいよね。』
『僕も同じでした。
瞑想してるはずなのに、空に月を探していました。
おかしいですよね』
わずか数行のテキストメッセージを何度も何度も読み返した。こんなに短いのに豊彦くんの文章だ。
今の時間だと月は地平線の下。私の思いをニュートリノに載せて豊彦くんに送ろう。
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