ルビーの帰る場所[完結]

シンシン

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ノックは特に慌てた様子もなく続けて言った。
「あの子は昔から隠れんぼが上手だ。ついでに迷子になってしばらく帰ってこない。」
エルダも中太郎も妙に納得して頷く。
庭から小鳥の声が聞こえる。
風が静かな涼しさを運んでくる。

食事の後、中太郎が食器を片付ける。エルダは売り物用の竹細工や木工をしに自分の部屋に戻る。
ノックは泊まった部屋で何やら日記のようなものを読んでいた。
その日記は今までの旅の記録であった。読んでは、思い出す。笑えるような話や後悔したこと、泣きたくなるほど悲しいことなど、様々だった。
ノックは過去の事は覚えている。
決して忘れたくない過去。
でもここで生きていくのには忘れておきたい出来事でもある。
日記を一冊読み終えるとノックは外を見て呟く。
「元気だろうか。あちらの世界とこの世界の時間の流れは違う。もう少ししたら来るだろうか。」
そう。ノックが旅をするのはこれが理由だ。
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