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第十夜
私は告白する
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こんな夢を見た。
私はテレビ番組を観ていた。
いわゆる昼間のワイドショーという奴だ。
すると、画面に見覚えのある男が登場した。
驚くことにそれは外見も容姿も私に非常によく似た男であった。
すると、男はカメラを見据えると唐突に告白しはじめた。
「自分は正直な人間だ。過去に私は私を殺している。そして今、私はもう一人の私を探している。世の中には自分にそっくりな人間が二人存在するという。一人がいたのだから、この世界のどこかにもう一人の私がきっと居るに違いない。もう一人の私の行方を知っていたなら、どうか教えて欲しい。私が私である為に、どうしても私は私を殺さなければならないのだ。」
奇妙な懇願をするこの男に、スタジオの観客らからは嘲笑に近い笑いと拍手が沸き起こった。
無理らしからぬことである。ほんの冗談だと思ったのだろう。
しかし、私は笑う気など起こらず、むしろ何か背筋に薄ら寒いものを感じた。
ピンポーン!その時、突然呼び鈴が鳴った。
私は立ち上がって玄関へ向かうと、返事をしながら扉を開いた。
そこには、先程の私によく似たあの男が突っ立っていた。
「確かに私だな。」
「テレビの…あんたか?」
「観てたのか。録画放送だ。」
「ああ。」
「では何しに来たのか、解っているな?」
「ああ…解る。」
「ならば話は早い。私は私を探していたんだ。」
「…そうか。」
「一応土産だ。道中の屋台で買ってきた。」
男は、古くからの知己の間柄の様に、淡々と話し掛けながら、トルコ語で書かれたケバブの包みを渡して寄越した。
「私は死ぬのか?」
「既に決まっていたことだ。」
「既に決まっていたことか。」
確かにもう一人の私の言う通り、ずっと前から私にも解っていた様な気がした。
私が私に歩み寄って来た。
ならば仕方ない、覚悟を決めて私は目を瞑った。
いずこから、牛蛙の啼く声が聴こえてくる。
どこか懐かしい昔の記憶が甦りはじめた。
【完】
私はテレビ番組を観ていた。
いわゆる昼間のワイドショーという奴だ。
すると、画面に見覚えのある男が登場した。
驚くことにそれは外見も容姿も私に非常によく似た男であった。
すると、男はカメラを見据えると唐突に告白しはじめた。
「自分は正直な人間だ。過去に私は私を殺している。そして今、私はもう一人の私を探している。世の中には自分にそっくりな人間が二人存在するという。一人がいたのだから、この世界のどこかにもう一人の私がきっと居るに違いない。もう一人の私の行方を知っていたなら、どうか教えて欲しい。私が私である為に、どうしても私は私を殺さなければならないのだ。」
奇妙な懇願をするこの男に、スタジオの観客らからは嘲笑に近い笑いと拍手が沸き起こった。
無理らしからぬことである。ほんの冗談だと思ったのだろう。
しかし、私は笑う気など起こらず、むしろ何か背筋に薄ら寒いものを感じた。
ピンポーン!その時、突然呼び鈴が鳴った。
私は立ち上がって玄関へ向かうと、返事をしながら扉を開いた。
そこには、先程の私によく似たあの男が突っ立っていた。
「確かに私だな。」
「テレビの…あんたか?」
「観てたのか。録画放送だ。」
「ああ。」
「では何しに来たのか、解っているな?」
「ああ…解る。」
「ならば話は早い。私は私を探していたんだ。」
「…そうか。」
「一応土産だ。道中の屋台で買ってきた。」
男は、古くからの知己の間柄の様に、淡々と話し掛けながら、トルコ語で書かれたケバブの包みを渡して寄越した。
「私は死ぬのか?」
「既に決まっていたことだ。」
「既に決まっていたことか。」
確かにもう一人の私の言う通り、ずっと前から私にも解っていた様な気がした。
私が私に歩み寄って来た。
ならば仕方ない、覚悟を決めて私は目を瞑った。
いずこから、牛蛙の啼く声が聴こえてくる。
どこか懐かしい昔の記憶が甦りはじめた。
【完】
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