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第四十一話 縮地
しおりを挟む「それじゃあ約束通り縮地を教えてもらいますよ」
「ああ、まず簡単に言えば縮地は一瞬で相手との距離を詰める技だな」
「はい」
「具体的に言えば込めた魔力1につき、1秒の硬直後、1メートル飛べる。」
効果だけ見れば空間魔法の転移に似ているのだが、転移は発動に時間がかかるのと、距離ではなく、1度登録した場所に魔力500を使って移動する。
「これはとてもEランクスキルとは思えない性能ですよね。下手したらBランクスキルにも匹敵するかも……でも、良いんですか?これって勝手に教えちゃダメなんじゃ……」
縮地のスキルは、欲しがる人が後を絶たないが王家が情報管理をしており、限られた人間にしか教えられないそうだ。というのも、もしもこのスキルの獲得方法が出回ったら王族や貴族の厳重に警備された屋敷にも一瞬で入れてしまうからだそうだ。
「………絶対内緒だからな」
「………それくらいなら初めから提案しなければ良かったのに」
「だって負けると思ってなかったんだよ。四天王に勝ったと聞いていたけど、スキル込みで考えればまだ僕の方が強いと思ってたよ」
「実際紙一重でしたけどね」
「まあ、負けは負けだからね。素直に教えるよ。でも人前では使っちゃダメだよ?教えるとかも禁止だからね!?」
「分かってますよ」
「じゃあ言っちゃうとね、敵を発見から1秒以内に倒す。これだけだよ」
「えっ……それじゃあ誰かが偶然獲得したりしてるかもしれないですよね?」
「いや、意外にも出会ってから1秒以内に魔物を倒すのは難しいよ。だからほとんど誰も気付いてない。まあ、ごく少数ではあるけど、自力で獲得する人もいるからそういう人を騎士団に誘うんだよ」
「今重大な国家機密を聞いてる気分ですよ」
「まあ、敵と言っても今ここにはいないわけだから、帰ってからゆっくり獲得すると良いよ」
「そうさせてもらいます」
「じゃ、そろそろパーティーに戻ろうか」
「はい」
汗を拭って、僕達はバレないようにひっそり帰った。
パーティー会場に戻るとパウロが貴族達に怒っていた。
「僕はエネマちゃんの事を愛しているんです!貴方達の勝手な政策で僕達の仲を引き裂かないでくださ…」
最後まで言い切る前に止めさせた。
「すみません。うちのパウロが無礼な事を申してしまい……どうやらお酒が入って思ってもいない事を言ってしまったようで……大変申し訳ありません。少し向こうで休ませてきますね」
「な、なんでだよケイ……ムゴッ!」
口を塞いで黙らせてベランダに強制的に連れて行く。
「おいお前マジでやめろ。エネマのことが好きなのは分かるけど相手は貴族だぞ?あんな態度取ってたら最悪処刑もあり得たからな?」
「だってあいつらが見合いの話を持ってきたから、僕が心に決めた人がいるので……って言ったらあいつらなんて言ったと思う?『そんな下賤な平民なんかよりもうちの娘の方が遥かの良いですよ』って、殴らなかっただけ褒めてもらいたいよ」
「いや、なんで殴らなかったんだよ」
なんか腹立ってきた。
パウロを止めるんじゃなかった。
「まぁ、たしかにあれ以上言ったら処刑だし気をつけるよ」
「そうしな。適当に嫌味ったらしく断りゃ良いんだから」
「………ケインっていい性格しているよね」
「そうでもないと思うけど……」
そんなわけでパーティーはなんとか穏便に終わらせた。
ハプニングもあったが、武器も金貨手に入れて、縮地の取得まで教えてもらった。
今日は大収穫だったな………
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