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第百三話 変態王子
しおりを挟む「なぁ、どう思うあの王子?」
リヒトと付き人がいなくなったのでエルナとクリフに単刀直入に聞いてみた。
「どう思うも何も…酷いですよ。こんなんで旅ができるわけないでしょう」
「だよなぁ……ストレスは溜まるし、金遣いは荒いし……レベル上げは手伝わされるし」
「でも…相手はこの国の王子ですよ?逆らったらどうなるか」
「仕方ない、もしかしたらまだパーティーに入って浮かれているだけかもしれないし、もう少し様子を見てから考えよう」
不満だらけだが、無下にも扱えないのである程度我慢する事にした。
夜の10時頃になって、上機嫌でリヒトが帰ってきた。
酒でも飲んだのか顔を赤くしていた。
そろそろ寝るかと部屋に戻ろうとした時、リヒトが声をかけてくる。
「なぁ、ケインちゃん。ちょっと僕の部屋に来てよ」
「はぁ……分かりました」
そのまま王子の部屋に入っていくと突然ベットに押し倒される。
「ねぇ、ケインちゃん?僕と一緒に良いことしない?」
気持ち悪い。吐き気がする。
何故こんな奴のレベル上げを手伝ってやるのだろうか?
将来この国の王様になるとはとても思えない人間だ。
ふつふつと怒りが込み上げてくる。
それと同時に、男性に押し倒された事による恐怖感も感じた。
それは、魔王と対峙した時に感じたものと似ているようでまったく異なった恐怖であった。
それらの気持ちが入り混じりどうしたら良いのか分からない。
数秒思考が停止して、固まっているとリヒトが僕の服に手を伸ばしてきたので必死に抵抗する。
でも、いつものように力が出ない。
怖い、助けて、嫌だ……
戦いの時には死すら恐れない僕が、今は思考を放棄していた。
このまま好きなようにされるのだろうか?
半ば諦めて涙を流し始めたら、部屋のドアが勢いよく開く。
外から入ってきたのはエルナだった。
「ケイン!大丈夫!?……アンタねぇ!」
王子に押し倒されたケインを見て、エルナは全て悟ったようだ。
激昂したエルナはリヒトに近づき平手打ちをかました。
「痛い!痛い……お、お前僕にこんな事して良いと…」
「あんたこそ……私の親友に何やってるの?……今回は未遂に終わったけど、次はないわよ」
そのままケインを抱き抱えてエルナは部屋に戻った。
「大丈夫?ケイン何もされてない?」
優しく話しかけるエルナにケインは大泣きした。
一晩中泣き続けて、翌日はエルナにくっついていた。
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