最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域

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番外編 偽勇者パーティーの過去

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「ハァッ、ハァッ……なんで……こんな事に………」

偽勇者パーティーの一員であったケイン役の少女は走っていた。騎士団から逃げ切る為……
彼女の名はミトリ。
元々はかなり大きな商家の三女であった。
末っ子というのもあり、生まれてから我が儘の限りを尽くしてきた彼女は、髪を綺麗な銀髪に変えて、オシャレをし、毎日のように将来の寄生先を探していたのだ。
何もしなくても良い料理と寝床が与えられ、毎日を好きなように過ごしてきていた。
彼女の両親はその事を心配していたのだが、もしミトリがそれを指摘されて私たちの元から離れたら……
と思って強く言えずにいたのだ。
他人から見たら馬鹿なことのように見えるが、どうやら彼女達にとってはそうでもなかったようで、ミトリの我儘放題な日々は彼女が19になるまで終わる事はなかったのだ。
しかし、そんな毎日も唐突に終わりを告げた。

いつものように豪華な食事をしようと食卓に集まった家族に、一家の大黒柱である父ガストは告げる。

「お前たちに大事な話がある。実はな……この度うちの商会が他の大手商会と合併する事になったのだ」

「なんですって!?」

「お父様…それはどういうことですか?」

「詳しく説明すると長くなるが……ここ数年経営が傾いていた事はお前達も知っていただろう?」

実は家族の中でミトリだけ話を聞いていなかったので、覚えがないのだが、他の者は皆んな悟った顔をしていた。

「あと数年は大丈夫だと思っていましたが……そうですか……思ったよりも早かったのですね」

「いや、実際あと数年は持つはずだった。しかしな、それを見越したタナカさんが我々に合併の話を持ち出してくださったのだ。このままでは潰れるしかないというところに対等な合併の話………タナカさんには感謝してもしきれない」

「なるほど、それなら寧ろ事タイミングで合併出来たのは大きいですね。しかも合併相手があのタナカ商会ですか」

「それならば嬉しいですね!」

姉達や母は合併の話に好意的だ。
実際これは幸運な事であり、断る方が馬鹿な事なのだ。しかし、ミトリだけは納得しない……

「なんでよ!ふざけないで。そんな何処の馬の骨とも知らないやつの傘下になるなんて!?」

言っている事はメチャクチャであるが、要するにミトリは誰かの下につきたくなかったのだ。

「しかしな、ミトリよ。このままではうちの商会が……」

「そんなの!パパが頑張れば良いだけじゃない!何甘えてんのよ。私は絶対に認めないわ!もし合併するというなら私は出て行くわ」

ミトリはいつものように出て行くわ作戦を使った。両親はこれに弱いのだ。いつものようにこれで我儘通ると思っていた。
しかし、父から出た言葉は予想外のものだった。

「そうか……ならば出て行くが良い」

「えっ!?」

「お前の我儘には正直うんざりしていた。出て行くというなら止めはしない」

「へ、へぇ~。いいんだ?後で泣きべそかいても知らないからね」

そう言うとミトリは言われた通りに出て行ってしまった。

「お父様!良かったのですか?ミトリを追い出して」

「良い。ミトリもいい加減親元から離れるべきだ。これまで我が儘に育ててしまった私たちにも責任はあるが、ミトリも自分で生活する力を身につけなくてはなるまい」

「しかし……お金は?」

「探偵を雇っておいた。それとなくお金を渡しておくとするよ。だがその内自分でも稼げるようになってもらわねばな」

どこまでも甘い父親だが、
こうしてミトリは追い出されたのだった。


追い出されたミトリは街をふらつく。

「ふん、きっと今にお父様が助けてくださるわ」

そんな事を言いながら街中をふらついていた。
最初のうちはなんとかなると思っていたが、何も食べずに1日が経過すると思う。

「お金が……お金がないわ」

今まで好きなように使っていたお金がないのだ。
なんとかして手に入れようと思って逆ナンを始める。

「ねぇーそこのお兄さん?私を、養ってくれなーい?」

「ケッ、黙ってろブサイク!俺は今気分が悪いんだ」

どうやら賭け事に大きく負けて口が悪いお兄さんだったようだ。

「はぁ!?あんた何様のつもり!?」

「うるせぇなーさっさどっか行け。テメェこそ金は持ってねえのか!」

どうやらこの男も大概ヤバいやつだったようだ。
ミトリの胸ぐらを掴んで譲ると高価そうな髪留めを落とした。

「おっ!良いものあるじゃねえか。丁度いいや、こいつを売ってギャンブルだ」

「なっ!返しなさい!というかギャンブルって一体……」

「こいつをくれたお礼に教えてやるよ。ちょっと金をかけるだけで金が無限に増えていくシステムさ」

もちろんそんな美味しい話があるわけ無いのだが、追い詰められた者にはそのように見えるのだろう。

「そ、それがあるのなら早く案内しなさい!」

「嫌に決まってんだろブサイク。用が済んだんだどっか行けや」

そうして髪留めが奪われたミトリは、ギャンブルをすることを決めた。
しかし、お金はどうしようか?
そう思っていると目の前に不思議な見た目の男が現れた。

「貴方がミトリ様ですね?此方を……」

男はミトリに大金を渡してきたのだ。

「へぇ、あんたは私に貢いでくれるのね?」

「いいえ、自分は貴方のお父上から雇われた者です。ミトリ様が困ったらこれを渡すよう言われていました」

「あのクソ親父。助けるなら早くしなさいよ」

悪態をつきながらも、これは幸運だと考えるミトリ。

「じゃあ早速ギャンブルに行くわ」

こうしてミトリはギャンブルの沼にハマってしまう。

「残念!3でした~」

「そ、そんなはずないわ!イサカマね!?」

ミトリは碌に勝てずに、たった数日で父さんから渡された金をあっという間に溶かしてしまったのだ。
しかし、数回の勝ちを忘れられず、なんとしてもギャンブルをしたがるミトリ。

「ああ……またお金が来ないかしら」

ギャンブル依存に陥った彼女に目をつけたのは、
あの我が儘王子リヒトであった……








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