最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域

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外伝40話 くさいセリフ

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それからルーナに状況を説明するのに要した時間は実に1時間。

初対面にして色々と誤解を与えてしまったが、なんやかんやあって解く事はできた。

その後、ルーナによって話された内容は以下の通りである。

スクリットの正体、及びその目的。
神鈴木の存在、ケインの現状。
そしてこの星が作られた目的。

その全てを伝えられた。

しかし、エルナはまだ疑問がある。

「あの、マレトさんは一体何者なんですか?」

その時、マレトはルーナの胸の中で泣いていた。曰く、久しぶりに外に出て話をしているせいでコミュ障が発動し、不安が収まらないのだそうだ。

「彼は、1代前の魔王を単独で討伐した者です。しかし、亜神にはならなかった……」

「何故ですか?」

「まあ、見ての通りコミュ障で人と話したがらなかったので……」

「ああ……なるほど。しかし、単独で魔王討伐とは一体どんな手を使ったのですか?」

「彼のオリジナルスキルはね『交換』よ。物体と物体の位置を入れ替えるのです」

「ケインの『縮地』と似た感じですね」

「そうですね……違うのは、魔力を一切使わない事、交換する物がないと成り立たない事、射程距離が無限な事、そして他者を強制的に移動させる事ができる事くらいです」

「えっ」

「そう、この能力の重要なポイントは他者を強制的に移動させられる点です。通常瞬間移動系の能力は自分のみにしか適用されないか、他の人を移動できるにしても、相手の合意を得る必要がある。不意打ちなら分かりませんが……」

「そんな事出来たら、どんな相手だって勝てちゃうじゃないですか!?」

「はい。実際マレトはその当時の魔王を相手に一切まともに戦う事なく、強制転移で宇宙の彼方に移動させて殺しました」

「そんな魔王討伐あって良いのですか!?」

ケインやクリフも勇者パーティーとしては随分変わった戦闘スタイルだ。
だが、マレト程では間違いなく無い。
窒息死する魔王ですら聞いた事無いのに、強制転移で宇宙に置き去りにされる魔王など前代未聞である。

「はぁっ……彼だけですよ。我々の住む世界……灰色の世界という神達だけの世界があるのですが、そこに亜神でも無いのに来ることが出来るのはね」

「……マレトさんとルーナさんはどういう関係なのですか?」

「関係って感じじゃ無いです。亜神にならないかと魔王を倒した時に彼を誘いにきたのですが断られた。それだけです」

「え、じゃあマレトさんはずっと私達の住む星にいたのですか?」

「はい。ですが、彼は人里離れた高山に住み着いていたので、皆さんは気付くことはなかったと思われますよ」

これで概ね聞きたいことは聞けた。
あと今すべきなのは……

「お願いですルーナさん。ケインを返していただけないでしょうか!」

頭を下げることだけだ。
ケインはシステムと戦うのだそうだ。
エルナは思った。
きっとまた、ケインはガルドとの戦いみたく無理をする。
狂化100%を自力で使ってしまうだろう。 
前は自分がついていたから制御出来たが、いつ発狂してもおかしく無い状況だった。
だからケインにはもう危ない事に手を出してほしく無いのだ。
本当はタナカさんを地球に送る時も気は進まなかった。
だが、他ならぬケインの言う事であったので手を貸したのだ。

「エルナ、ケインは返します。彼が戦う事を拒否するのならね」

「そう……ですか。でもそれじゃあ」

「分かりますよお気持ちは。しかし、彼の方が決められた事ですのでご理解ください」

「でも……でも!」

「エルナ、良い加減聞き分けて下さい。それとも彼の方が信用ならないと?」

ルーナは覇気を放った。
単なる脅しというには過剰なくらいの威力で、エルナとクリフは足を震えさせている。
しかし、エルナはガタガタ体を震わせながらも懸命に言い返す。

「信用出来るわけ無いでしょう!助けてもらったのはありがとうございます!でも、会ってもいない神と大切な人が今も2人っきりなんですよ!心配しないわけ無いでしょう!」

エルナは出せる限りの声を出し反論した。

そこでルーナは覇気を押し込み問うた。

「貴方が死ぬか、ケインが死ぬかなら?」

ルーナは考えていた。
ここで「当然ケインを助けます」等とほざいたらその時点で切り捨てる。
「両方生き残る道を探す!」等と言っても、ただ出来ない事への戯言だ。
「自分だけ生き残る」等論外。
何て返すのかが気になる。
その興味本位で聞いたのだ。

その答えは……

「私は自分だけ生き残ります」

ルーナは大きくため息をついた。

期待外れも甚だしい。
少しも予想外ですら無い。否、ある意味この程度かと予想外である。

だが、その考えは3秒後否定された。

「私が生き残ればガーデンライフで、ケインを生き返らせます。だから2人とも生き残る事が出来ます」

「フッ……そうですか」

「な、何ですか?悪いですか?」

「いや、私個人の感覚でして、小説や物語で主人公達がほざいているくさいセリフが嫌いなんです。貴方は私の嫌いな人種かと思っていましたが、そうでも無さそうです。良いでしょう、彼の方と話す機会だけは作ってあげましょう」

ルーナは表情を変えなかった。
でも、マレトの目には少しだけ笑って見えたのだそうだ……

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