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外伝56話 このメッセージは……
しおりを挟むガルドとシムの勝負は拮抗していた。
下手をすれば、自分が負けてしまってもおかしくは無い。
そう考えたシムは一度退避をすることにしたのだ。
時間さえあればシムが好き放題スキルを習得出来るので勝ちである。
逃げ切って、満足いくまで強くなり、再戦すれば良い。
問題は、ガルドがそう簡単には逃してくれないという事である。
(Sit……奴が『縮地』さえ持っていなければ逃げ切る自信があったというのに……)
いくら縮地や転移で逃げようがガルド(ケイン)も縮地を持っているので追いつかれてしまう。
転移は兎も角、縮地は発動の隙が大き過ぎる。
一般人が見ればシムの縮地もほぼ瞬間移動であるが、ケインやガルドレベルになると1000個の縮地と9999個の縮地ではそこそこタイムラグがあるのだ。
少しでもシムが縮地を発動するそぶりを見せれば、その隙にガルドが攻撃してしまう。
今無防備にガルドの攻撃を喰らえばそれこそ致命傷である。
たとえ被弾覚悟で縮地を使ったとしても、縮地は攻撃を受けると上手く発動せず解除されてしまうので、思う様に縮地は使えない。
そこで思い出したのだ。
ルーナから『模倣』したスキルの中に現実世界と灰色の世界を行き来するスキル『ムーブ ザ ワールド』があった事を。
「ムーブ ザ ワールド。さようならガルドよ」
「なっ!?」
すると、シムの体はあの真っ白な世界へと移動して、辺りには何も無くなっていた。
「YES、これでワタシの勝ちです。この間に全てのスキルを習得し、灰色の世界へ到着後向こうの人間も皆殺し。流石に神鈴木は倒せないでしょうが、神鈴木はワタシを消すことが出来ない……全てが終わったら今度はケイン、ガルド、貴方達の番です」
そうしているうちにシムは灰色の世界へと到達した。
初めてきた場所ではあるが、前情報の通り地球から色をなくした様な雰囲気の場所だ。
こうしてシムは危機から退避したのである。
……かに思われた。
「What?おかしい……?なぜ誰の気配も感じない?」
「残念、『ムーブ ザ ワールド』とは本来ルーナのスキルじゃなくてアタシのスキルなんだよ」
背後から声がする。
灰色の世界でたった1人、シムの前に立つ事ができる人間……否、生物といえば奴しかいない。
「神……鈴木」
「ごめんね?君の気配を察知してアタシが皆んなを現実世界へ逃しちゃった」
「OK、それは分かります。そうでは無くて『ムーブ ザ ワールド』がルーナのスキルでは無いとは?」
「分からないかなぁ?そもそもこの灰色の世界はアタシの能力で作り出したんだよ?じゃあここにアクセスする権限は本来アタシにあると思わない?」
「……?」
「アタシはね、ルーナと一緒にここで暮らしたかったからここを作った。ついでに賑やかになりそうだったから4人の亜人達にもアクセス権限を与えてたんだよ。まあ、今となっては要らなかったけどね。スキルもあの連中も」
「Why?それがどうしました?今のワタシにはアクセス権限が……」
「逆に考えてみなよ。アクセス権限があるならこの世界のマスター権限もあると思わないか?アクセス権限を持つ者を拒んだり……逆にこの世界からの退出を規制したり」
「っ!?」
「ようやく気づいたか。お前は嵌められたんだよ。察しの通りこの世界のマスター権限を持つのはアタシだ。この場所ならお前にやるから未来永劫ここで彷徨うと良い」
「NO!お前を倒せばここから脱出でき……」
「あ、言い忘れてたけどこれはただのメッセージ用の立体映像だから本物はここには居ないよ。あと、このメッセージが終わったコンマ一秒後に爆発するからー」
「っ!?」
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