ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ

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第二十五話「平原の遭遇戦」

 適度な休憩を取りながら歩き続け、東側にあった森が遥か後方に霞んでいく頃には、太陽はもう真上に高く昇っていた。街道は相変わらず整備されているが、両側には見渡す限りの広大な平原が広がっている。

「ナオ君と初めて会ったあの森は、魔物にとって過ごしやすい環境だから、あの森の外に魔物が出ることは少ないの。でもここから先、森から離れるにつれて魔物が出やすくなるから気を付けてね」

 エルにそう言われ、お気楽に旅路を歩いていた俺も、少し警戒心を持つ。街道として整備されているから魔物が現れないと勝手に思い込んでいたが、そういうことかと得心がいった。
 平原を吹き抜ける風が、ざわざわと草を揺らす。どこまでも続く緑の絨毯は、一見すると平和そのものだ。だが、その草陰に何が潜んでいるかはわからない。

「なにか気配を感じる?」

 エルが尋ねるが俺は首を横に振った。鑑定スキルこそ持ってはいるが、索敵スキルのような便利なものはない。ひとまず俺は片手槍を右手に持ち、エルもすぐ矢を射れるように準備しておく。
 それから数分後、遠くから獣の吠えるような声がしたことに気付いた。

「来るぞ、エル」
「うん!」

 エルは素早く矢を番え、平原の奥に目を凝らす。
 草が大きく揺れ、その中から現れたのは、小さな狼の群れだった。体長は柴犬ほどだが、その目には獰猛な光が宿っており決して可愛いとは言っていられない。
 グラスウルフという魔物で、俺とエルが初めて会った時、エルを追いかけていたフォレストウルフより一回り小さい。そんなグラスウルフたちが、獲物を見つけたかのように、唸り声を上げながら一斉にこちらへ向かってきた。

「まず一匹、牽制するよ!」

 エルの言葉と同時に、放たれた矢が群れの先頭を走る一匹に命中する。だが、致命傷には至らず、グラスウルフは悲鳴を上げて転がっただけだった。

「動きが速いな!」
「小柄だけど俊敏で体力もあるよ!」

 グラスウルフたちは四体、俺たちを包囲するように散開していく。
 俺は片手槍で向かってくる一匹を迎え撃った。槍を突き出すが、素早く身を翻され、避けられる。

「くっ……!」

 さらに俺に向かってきたもう一匹に気を取られている間に、別の二匹がエルのほうに迫っていた。

「エル、後ろ!」

 俺の声に、エルは素早く振り返り、弓を構える。だが、至近距離では弓は不利だ。

「きゃっ!」

 グラスウルフの一匹が、エルの足に噛み付こうと跳びかかった。
 その瞬間、俺は咄嗟に収納スキルを発動させ、取り出したポーションの瓶を投げつけた。

 カシャンッ!

 鈍い音を立ててガラス瓶が砕け散り、中に入っていた液体がグラスウルフの顔に飛び散る。

「キュウウウン!」

 液体を浴びたグラスウルフは、苦痛に満ちた悲鳴を上げ、その場でもがき苦しみ始めた。もう一体もじりじりと後退するので、そこをナオが射抜く。
 こちらも二匹を相手に槍では分が悪いため、剣を抜いて対峙する。風向きも相まってか、俺が相手する二匹の動きも鈍ってきた。流石にそんな状況のグラスウルフに苦戦はしない。合わせて四匹、きっちり討伐した。

「ナオ君、投げたあのポーションは何だったの……?」

 戦闘終了後、四体のウルフを解体したエルが尋ねてくる。

「悪臭ポーションだよ。毒ポーションの派生系で、まぁウルフ種にはけっこう効いたね」

 俺はそう答えながら、グラスウルフたちの素材を回収する。やはりダンジョンの外での戦闘では解体の手間がかかってしまう。死体丸ごと収納に入れてしまうこともできるが、今回は悪臭ポーションのおかげで解体中に魔物に襲われる心配がなかったから、その場でやってもらった。

「人が嗅ぐ分には少し青臭いとは思うけど、そこまでひどい臭いじゃないんだね」
「組み合わせる素材によっては気付ポーションにもなるからな」

 地球の植物に喩えるならニラとかニンニクとか、そういう臭いだろうか。まぁ、実際に素材として使った植物はそれらと似ても似つかない見た目の単なる葉っぱなのだが。

「そんじゃ、先に進もう」

 俺は、もう一度周囲に警戒しながら、エルと共に歩き始めた。この広い平原を抜け、次の町へと辿り着くまで、まだしばらくかかる。
 だが、隣にエルがいる。そして、俺の錬金術と、彼女の弓術があれば、どんな困難も乗り越えられると信じている。
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