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ファイル13 物件を掃除しよう 4月17日日曜日
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不動産屋さんのお仕事は大きく分けて仲介と管理がある。これから借りたり買ったりするお客様への対応と、物件を貸したり売ったりするお客様への対応だ。
リリィエステートは不動産屋さんとしては何でも屋に近くて、自社で物件の売買もするし、賃貸もする、さらに売買と賃貸それぞれの仲介もするし、物件の管理や家賃の管理も任せてもらえれば対応する。
物件の管理というのは、入居者を入れることもそうだが、入居者からのクレーム対応、退去後の修繕業者の手配や、家賃の入金確認など多岐にわたる。近場の大家さんでも管理を依頼する人もいるし、遠方に住む投資家の大家さんはもっぱら管理を依頼してくる。
「さて、頑張ってお掃除しようっと」
私がやってきたのはルミナスハイツという全6部屋のアパート。大家さんは両親から相続したけど、県外でお仕事していることから管理をリリィエステートに任せてくれている。
現在は103号室だけ空室で、残りは全室入居中。建物のまわりに散らばる桜の花びらをほうきで掃いて掃除する。共用部の電灯カバーに蜘蛛の巣が張っているからそれも掃う。この物件は駐車場がちゃんとアスファルトで舗装されているから、雑草は生えていない。
「あとは……空室のポストはちゃんと目張りされてるね」
建物の外周をまわってゴミが落ちていないか確認する。確認した項目は手元の用紙に記入していく。
こういった点検記録を毎月大家さんに送っているのだという。遠方の大家さんは物件を見にこられないから、こうして毎月の報告で自分の物件に住んでいる入居者さんが、物件を綺麗に使ってくれているかの確認をするのだ。
「さ、次の物件だ」
こうした物件の点検や清掃は物件を管理する上ではオプションなので、全ての管理物件を清掃しているわけではない。リリィエステートでは現状このルミナスハイツを含め三十棟くらいのアパート・マンションを管理しているけど、こうした点検を行うのは七棟しかない。……これを一人でやるのは大変なんだけどね。
私が入る前は社長と専務でやったり、お店がお休みの火曜日水曜日にやっていたらしいから、仕方ないんだけど。
「どこに管理物件があるか覚えられるからいいんだけど」
次にやってきたのはルミナスハイツから車で五分くらいの位置にある山中ハイツ。全20部屋のL字型マンションだ。大家さんは101号室に住んでいるので、清掃前に挨拶するよう三咲ちゃんに言われている。
「ごめんくださーい」
「あーい」
玄関を開けてくれたのは七十歳くらいのお婆さんだ。山中さんの旦那さんが十年ちょっと前に退職金を使って建てたマンションなのだが、旦那さんは二年ほど前に亡くなってしまい、しばらくして管理をリリィエステートに任せることになったとのこと。
「新人の有働七瀬です。よろしくお願いします」
「うん、よろしく。これ、あげる」
そう言って手渡されたのはペットボトルのお茶。ありがたく受け取る。
「さぁて、頑張りますか!!」
リリィエステートは不動産屋さんとしては何でも屋に近くて、自社で物件の売買もするし、賃貸もする、さらに売買と賃貸それぞれの仲介もするし、物件の管理や家賃の管理も任せてもらえれば対応する。
物件の管理というのは、入居者を入れることもそうだが、入居者からのクレーム対応、退去後の修繕業者の手配や、家賃の入金確認など多岐にわたる。近場の大家さんでも管理を依頼する人もいるし、遠方に住む投資家の大家さんはもっぱら管理を依頼してくる。
「さて、頑張ってお掃除しようっと」
私がやってきたのはルミナスハイツという全6部屋のアパート。大家さんは両親から相続したけど、県外でお仕事していることから管理をリリィエステートに任せてくれている。
現在は103号室だけ空室で、残りは全室入居中。建物のまわりに散らばる桜の花びらをほうきで掃いて掃除する。共用部の電灯カバーに蜘蛛の巣が張っているからそれも掃う。この物件は駐車場がちゃんとアスファルトで舗装されているから、雑草は生えていない。
「あとは……空室のポストはちゃんと目張りされてるね」
建物の外周をまわってゴミが落ちていないか確認する。確認した項目は手元の用紙に記入していく。
こういった点検記録を毎月大家さんに送っているのだという。遠方の大家さんは物件を見にこられないから、こうして毎月の報告で自分の物件に住んでいる入居者さんが、物件を綺麗に使ってくれているかの確認をするのだ。
「さ、次の物件だ」
こうした物件の点検や清掃は物件を管理する上ではオプションなので、全ての管理物件を清掃しているわけではない。リリィエステートでは現状このルミナスハイツを含め三十棟くらいのアパート・マンションを管理しているけど、こうした点検を行うのは七棟しかない。……これを一人でやるのは大変なんだけどね。
私が入る前は社長と専務でやったり、お店がお休みの火曜日水曜日にやっていたらしいから、仕方ないんだけど。
「どこに管理物件があるか覚えられるからいいんだけど」
次にやってきたのはルミナスハイツから車で五分くらいの位置にある山中ハイツ。全20部屋のL字型マンションだ。大家さんは101号室に住んでいるので、清掃前に挨拶するよう三咲ちゃんに言われている。
「ごめんくださーい」
「あーい」
玄関を開けてくれたのは七十歳くらいのお婆さんだ。山中さんの旦那さんが十年ちょっと前に退職金を使って建てたマンションなのだが、旦那さんは二年ほど前に亡くなってしまい、しばらくして管理をリリィエステートに任せることになったとのこと。
「新人の有働七瀬です。よろしくお願いします」
「うん、よろしく。これ、あげる」
そう言って手渡されたのはペットボトルのお茶。ありがたく受け取る。
「さぁて、頑張りますか!!」
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