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いくら初陣だからって楽勝すぎるなんてちょっと……
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翌朝。降り注ぐ朝日に目を覚ますと、
「おはようございます。朝食はこちらで。食べ終え次第、出立となります」
と、ルリアが完璧メイドモードでそこにいた。ベッドから下り、昨晩着ていた寝巻きから制服に着替える。軽工業は発展しているようで、下着事情は問題なかった。とはいえ、度装束となると話は別だ。王様が何か用意しようと言っていたけれど、私としては制服でいたかった。出来ることなら、元の世界に戻りたい。初志貫徹の誓いとして、私は制服で身を包むのだ。
「では、召し上がってください」
私が着替え終えると、小さなテーブルに簡単な朝食が並んでいた。サンドイッチや干し肉を焼いたもの、スープ、サラダ。元の世界でも出てきそうな洋風な朝食。手を合わせてフォークで食べ始める。こちらの世界でも、食べ物への感謝は合掌らしい。
「おいしい!」
「えへへ、ありがとございます!」
笑顔を浮かべるルリアを見ながら、朝ごはんを食べ進めていく。思った以上におなかに溜るようで、7割くらい食べた時点でごちそうさまにした。
「私が張り切りすぎただけですので、申し訳無さそうな顔をしないでください。残りは私がいただきますので」
そう言ったルリアが私の残りを食べている間に、私の異世界転移の鍵となった刀を鞘から抜く。30回だけ素振りをして、王様にもらったベルトに鞘を通し腰に装着する。スカートのウエストに合わせつつ、少し調整。左の腰骨に鞘が当たるくらいにしてから、納刀する。剣道しかしたことないため、真剣を抜いたり仕舞ったりする時に指を切らないか不安でしょうがないのだ。
「ご馳走様でした」
ルリアが食べ終わったのを見て、刀の扱いを練習するのをやめた。
「片付けは違うメイドが行います。では、城の正門へ参りましょう」
いよいよ、私は旅に出る。魔王を倒すための旅に。魔王がいるということは、多くの魔物が闊歩しているということが想像できる。不安に押しつぶされそうだけど、それをぐっと堪えて、ルリアの後に続くのだった。
城の正門を後にする――つまり、城を出て魔物が闊歩する世界を刀と共に進む――この瞬間。多くの人が見送りにきてくれた。国王から一般庶民まで。それだけ魔王討伐を願っている人が沢山だということだ。重い使命感が胸にのしかかる。それでも、彼らのために私は進まなければ。
「これを。では、ご武運を」
最後に大量の金貨が入った袋を渡され、私たち三人は旅立った。
……そして、
「これが……魔物」
目の前にいるのは真っ赤な瞳をした狼。その牙は鋭く、こちらを狙っている。
「私が壁になります。まずは戦闘の感覚を掴んでください」
ソニアさんが腕に装備した楯から剣を引き抜く。狼の正面で楯を構え、敵の動きを見る。そして私は、腰から刀を抜く、正眼に構える。すり足で敵の背後へと移動し、様子を見る。
「……ふっ」
ソニアさんが楯を構えたまま前進する素振りを見せると、狼はすぐさま攻撃をしかけた。そこに、
「せりゃあ!!」
上段から振り下ろした私の刀が命中する。一撃ではしとめられず、そのまま手首を返して横薙ぎに切り裂く。
「おしまい!」
狼型の魔物を切り伏せ、納刀する。もちろん、刀に付いた血は始末してある。
「初陣とは思えないです! さすがは勇者様」
「ううん。敵が弱かったし、何よりソニアさんが楯になってくれていたから。だから、私は攻撃だけに集中できたの」
ソニアさんにお礼を言いながら馬車へ戻ると、
「さすがはヒナギク様です。お見事!」
「二人とも褒めすぎ。もう、先に進もう!」
ガルーシャの国は魔王の本拠地に最も遠い国。少しでも進まないと、いつ魔王城へ行けるか分からない。
「では、出発!」
私、烏丸雛菊は今日から本格的に勇者です!
「おはようございます。朝食はこちらで。食べ終え次第、出立となります」
と、ルリアが完璧メイドモードでそこにいた。ベッドから下り、昨晩着ていた寝巻きから制服に着替える。軽工業は発展しているようで、下着事情は問題なかった。とはいえ、度装束となると話は別だ。王様が何か用意しようと言っていたけれど、私としては制服でいたかった。出来ることなら、元の世界に戻りたい。初志貫徹の誓いとして、私は制服で身を包むのだ。
「では、召し上がってください」
私が着替え終えると、小さなテーブルに簡単な朝食が並んでいた。サンドイッチや干し肉を焼いたもの、スープ、サラダ。元の世界でも出てきそうな洋風な朝食。手を合わせてフォークで食べ始める。こちらの世界でも、食べ物への感謝は合掌らしい。
「おいしい!」
「えへへ、ありがとございます!」
笑顔を浮かべるルリアを見ながら、朝ごはんを食べ進めていく。思った以上におなかに溜るようで、7割くらい食べた時点でごちそうさまにした。
「私が張り切りすぎただけですので、申し訳無さそうな顔をしないでください。残りは私がいただきますので」
そう言ったルリアが私の残りを食べている間に、私の異世界転移の鍵となった刀を鞘から抜く。30回だけ素振りをして、王様にもらったベルトに鞘を通し腰に装着する。スカートのウエストに合わせつつ、少し調整。左の腰骨に鞘が当たるくらいにしてから、納刀する。剣道しかしたことないため、真剣を抜いたり仕舞ったりする時に指を切らないか不安でしょうがないのだ。
「ご馳走様でした」
ルリアが食べ終わったのを見て、刀の扱いを練習するのをやめた。
「片付けは違うメイドが行います。では、城の正門へ参りましょう」
いよいよ、私は旅に出る。魔王を倒すための旅に。魔王がいるということは、多くの魔物が闊歩しているということが想像できる。不安に押しつぶされそうだけど、それをぐっと堪えて、ルリアの後に続くのだった。
城の正門を後にする――つまり、城を出て魔物が闊歩する世界を刀と共に進む――この瞬間。多くの人が見送りにきてくれた。国王から一般庶民まで。それだけ魔王討伐を願っている人が沢山だということだ。重い使命感が胸にのしかかる。それでも、彼らのために私は進まなければ。
「これを。では、ご武運を」
最後に大量の金貨が入った袋を渡され、私たち三人は旅立った。
……そして、
「これが……魔物」
目の前にいるのは真っ赤な瞳をした狼。その牙は鋭く、こちらを狙っている。
「私が壁になります。まずは戦闘の感覚を掴んでください」
ソニアさんが腕に装備した楯から剣を引き抜く。狼の正面で楯を構え、敵の動きを見る。そして私は、腰から刀を抜く、正眼に構える。すり足で敵の背後へと移動し、様子を見る。
「……ふっ」
ソニアさんが楯を構えたまま前進する素振りを見せると、狼はすぐさま攻撃をしかけた。そこに、
「せりゃあ!!」
上段から振り下ろした私の刀が命中する。一撃ではしとめられず、そのまま手首を返して横薙ぎに切り裂く。
「おしまい!」
狼型の魔物を切り伏せ、納刀する。もちろん、刀に付いた血は始末してある。
「初陣とは思えないです! さすがは勇者様」
「ううん。敵が弱かったし、何よりソニアさんが楯になってくれていたから。だから、私は攻撃だけに集中できたの」
ソニアさんにお礼を言いながら馬車へ戻ると、
「さすがはヒナギク様です。お見事!」
「二人とも褒めすぎ。もう、先に進もう!」
ガルーシャの国は魔王の本拠地に最も遠い国。少しでも進まないと、いつ魔王城へ行けるか分からない。
「では、出発!」
私、烏丸雛菊は今日から本格的に勇者です!
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