上 下
1 / 17

第1話 武藤和珠音の朝

しおりを挟む
 私の朝はおっぱいから始まる。いや、授乳ではない。……むしろ、される方に近いかもしれない。

「んむ……むぁあ」

 ここは東海地方某所にある私立星花女子学園の学生寮、私――武藤むとう和珠音かずねとルームメイト愛海いつみりなの部屋だ。
 私のルームメイトを一言で表すなら爆乳ちゃんだ。おっぱいが大きい。背も平均より10センチくらい大きくて、平均より10センチくらい小さい私は、彼女の胸元までしか背がない。そんな私は彼女の抱き枕と化している。……私と彼女の部屋はベッドが二段ベッドなのだが、二人とも下がいいと言った結果が現状だ。

「起きろ~」

 まるでほっぺたをむにむにするような感覚で彼女の大きな、大きなおっぱいを揉む。りなりーの愛称で呼んでいる私のルームメイトは、パーソナルスペースがないのかってくらい人懐っこくて、ボディタッチにも寛容。
 だからこそ抱き枕にされているんだけど……こんなに可愛くておっぱいが大きくて優しい女の子が、こんなにも隙だらけでいいんでしょうか!?

「んみゅ……今日、お休み……れしょ?」
「そうなんだけど、私は今日部活に行くの」

 足を絡めてがっちりホールドされている私。寝ぼけたりなりーは私の膂力じゃ解けない。腕力は自信あるけど、足回りはかなり貧弱だから、りなりーのむっちり太ももに挟まれたら逃げられない。

「まぁ……ねむい……」

 りなりーに抱きくるめられて、その爆乳に顔が埋まる。十分に夏と言っていい七月、おっぱいの谷間はなんというか……うん、濃厚な匂いが溜まっているわけで、嫌いではないし……むしろりなりーの100%を感じられる匂いなんだけど……それでも、限度ってものがあるわけで。

「起きてよー!!」

 おっぱいに埋まってもがもがとした声しか出ないが、なんとか大声と体全体を揺らしてりなりーを起こす。
 りなりーはよく食べてよく眠る子だから、これが毎朝のルーティンになってしまっている。

「……おはよ、かじゅ」

 りなりーは私のことをかじゅって呼ぶ。まだまだ寝ぼけ眼のりなりーを連れて、寮の洗面所に向かう。休日ということでまだそこまで混雑はしていない。朝の歯磨きを済ませて髪も梳かして身だしなみを整える。
 食堂で朝食を済ませたらいったん、部屋に戻る。……寝起きなのにどうしてあんなに食べられるんだろうか、いっつも思う。
 
「じゃあ行ってくるから。夕方には帰ると思うよ」
「……ん、りょうかい。じゃあ、行ってらっしゃいのキスしてあげるねぇ」

 おでこに軽くキスをされて、私はほっぺにキスを返す。これも、いつもの。
 毎晩同じベッドで眠り、毎朝キスを交わす。けれど……私たちは

「行ってらっしゃい」

 りなりーに見送られて部屋を出る。りなりーといると見失いそうになるんだ、友愛と性愛の境界線を。私にはそこを越える勇気がない。……今はまだ、ね。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】ナルシストな僕のオナホが繋がる先は

BL / 完結 24h.ポイント:617pt お気に入り:1,587

乙女ゲーム関連 短編集

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,462pt お気に入り:156

逆転世界で俺はビッチに成り下がる

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:695pt お気に入り:226

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:169,393pt お気に入り:7,830

悪役皇女の巡礼活動 ~断罪されたので世直しの旅に出ます~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:163pt お気に入り:170

氷の狼と令嬢の政略結婚な1年

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:1,766

羞恥と男尊女卑の私立馬花万高校

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:7

処理中です...