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次の日、私と雨月はエレノアに連れられて彼女の転移の魔法で、件のドラゴンがいる場所へと飛んだ。
どうやら、騎士団の中にも魔法使いがいて転移用の位置取りをしてくれてあったらしい。とにもかくにもそのドラゴンがいるというエリアに足を踏みいれたのだが、そこは見渡す限り真っ白な雪原だった。
「うわぁ~」
あまりの寒さに私は声を上げてしまった。正直、温暖な地方で暮らして雪なんて数年一度しか降らないし、家が食堂なだけあって旅行にも無縁だし、こういう景色なんてテレビでしか見たことなかった。そりゃあテンションだって上がる。
「ここがドラゴンの住む山があるという地域ですか?」
「えぇそうです。この辺り一帯までがわたしたちが暮らしている国の領土で、向こうに見える山脈の向こう側が隣国になります」
そう言ってエレノアは遠くに見える険しい峰々を指差した。
「あの山々の一つにドラゴンの巣窟となっている大洞窟があります。そこに行けばドラゴンがいるはずです」
「寒いけど、とにかく行ってみようか」
私たちの恰好は動きやすさ再重視で学校指定の体操服の上に同じく学校指定のジャージを着ている。そのうえから一時期スケボーにはまった時につかっていた肘と膝のプロテクターを装着して防具にしている。寒さに体を震わせていると、
「あっ! 待ってくださいっ!! 寒さで体が動かしにくいでしょう? ほら、これを飲んでください」
エレノアは私たちに瓶を差し出した。中には赤い液体が入っている。
「これは?」
「わたしの作ったポーションです。これを飲むと身体が温かくなり、凍傷や霜焼けなどの症状になりにくくなります」
私と雨月がお礼を言いながら受け取る。
「いえ、お礼を言うのはこちらの方ですよ。ドラゴンを倒すための準備をしてくださったのですから。お二人には感謝してもしきれません」
私たちはエレノアからもらったポーションを飲み干す。温かくなるという説明とその色味から辛いことを想定していたが、そこは魔法のポーション。わりと無味無臭でさらりと飲み干してしまった。
そうして準備も整い、いよいよドラゴン討伐目指して歩き出した。私と雨月の足取りは軽かった。それはもう軽やかに軽やかに、スキップをしながら歩いていくくらいに。身体がポカポカしているというのもあるが、ドラゴンという現実では決してお目にかかれないものを見ることへの興奮もあった。
ほどなくしてドラゴンが棲み処にしているという大きな洞窟に辿り着いた。
洞窟の入口にはこれまで足止めを頑張ってくれていた騎士さんたちがおり、そこの隊長さんからドラゴンについて改めて説明を受ける。
「ドラゴンはこの中にいます。洞窟内は暗く、足元も滑りやすいのでご注意ください。ドラゴンは巨体ですが俊敏で、尻尾に薙ぎ払われれば騎士でもすぐには立ち上がれないほどの衝撃です」
メートルとか具体的な単位がないこちらの世界だが、洞窟の入口がドラゴンにはぎりぎり通れるくらいの大きさと言われて、驚いた。大きめのダンプカーですら通れそうな穴がぎりぎりだというのだから、ダンプカーよりドラゴンの方が大きいということだ。……本当に包丁だけで倒せるのかな。
「一般的な刃物ではびくともしません。加護を得たドラゴンキラーだけが頼りです。ご武運を」
私たちは顔を見合わせる。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
「はい」
私たちは薄暗い洞窟の中へ足を踏み入れた。
どうやら、騎士団の中にも魔法使いがいて転移用の位置取りをしてくれてあったらしい。とにもかくにもそのドラゴンがいるというエリアに足を踏みいれたのだが、そこは見渡す限り真っ白な雪原だった。
「うわぁ~」
あまりの寒さに私は声を上げてしまった。正直、温暖な地方で暮らして雪なんて数年一度しか降らないし、家が食堂なだけあって旅行にも無縁だし、こういう景色なんてテレビでしか見たことなかった。そりゃあテンションだって上がる。
「ここがドラゴンの住む山があるという地域ですか?」
「えぇそうです。この辺り一帯までがわたしたちが暮らしている国の領土で、向こうに見える山脈の向こう側が隣国になります」
そう言ってエレノアは遠くに見える険しい峰々を指差した。
「あの山々の一つにドラゴンの巣窟となっている大洞窟があります。そこに行けばドラゴンがいるはずです」
「寒いけど、とにかく行ってみようか」
私たちの恰好は動きやすさ再重視で学校指定の体操服の上に同じく学校指定のジャージを着ている。そのうえから一時期スケボーにはまった時につかっていた肘と膝のプロテクターを装着して防具にしている。寒さに体を震わせていると、
「あっ! 待ってくださいっ!! 寒さで体が動かしにくいでしょう? ほら、これを飲んでください」
エレノアは私たちに瓶を差し出した。中には赤い液体が入っている。
「これは?」
「わたしの作ったポーションです。これを飲むと身体が温かくなり、凍傷や霜焼けなどの症状になりにくくなります」
私と雨月がお礼を言いながら受け取る。
「いえ、お礼を言うのはこちらの方ですよ。ドラゴンを倒すための準備をしてくださったのですから。お二人には感謝してもしきれません」
私たちはエレノアからもらったポーションを飲み干す。温かくなるという説明とその色味から辛いことを想定していたが、そこは魔法のポーション。わりと無味無臭でさらりと飲み干してしまった。
そうして準備も整い、いよいよドラゴン討伐目指して歩き出した。私と雨月の足取りは軽かった。それはもう軽やかに軽やかに、スキップをしながら歩いていくくらいに。身体がポカポカしているというのもあるが、ドラゴンという現実では決してお目にかかれないものを見ることへの興奮もあった。
ほどなくしてドラゴンが棲み処にしているという大きな洞窟に辿り着いた。
洞窟の入口にはこれまで足止めを頑張ってくれていた騎士さんたちがおり、そこの隊長さんからドラゴンについて改めて説明を受ける。
「ドラゴンはこの中にいます。洞窟内は暗く、足元も滑りやすいのでご注意ください。ドラゴンは巨体ですが俊敏で、尻尾に薙ぎ払われれば騎士でもすぐには立ち上がれないほどの衝撃です」
メートルとか具体的な単位がないこちらの世界だが、洞窟の入口がドラゴンにはぎりぎり通れるくらいの大きさと言われて、驚いた。大きめのダンプカーですら通れそうな穴がぎりぎりだというのだから、ダンプカーよりドラゴンの方が大きいということだ。……本当に包丁だけで倒せるのかな。
「一般的な刃物ではびくともしません。加護を得たドラゴンキラーだけが頼りです。ご武運を」
私たちは顔を見合わせる。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
「はい」
私たちは薄暗い洞窟の中へ足を踏み入れた。
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