異世界でも姉妹の仲は揺るぎません~包丁片手に英雄譚~

楠富 つかさ

文字の大きさ
6 / 20

#5

しおりを挟む
 次の日、私と雨月はエレノアに連れられて彼女の転移の魔法で、件のドラゴンがいる場所へと飛んだ。
 どうやら、騎士団の中にも魔法使いがいて転移用の位置取りをしてくれてあったらしい。とにもかくにもそのドラゴンがいるというエリアに足を踏みいれたのだが、そこは見渡す限り真っ白な雪原だった。

「うわぁ~」

 あまりの寒さに私は声を上げてしまった。正直、温暖な地方で暮らして雪なんて数年一度しか降らないし、家が食堂なだけあって旅行にも無縁だし、こういう景色なんてテレビでしか見たことなかった。そりゃあテンションだって上がる。

「ここがドラゴンの住む山があるという地域ですか?」
「えぇそうです。この辺り一帯までがわたしたちが暮らしている国の領土で、向こうに見える山脈の向こう側が隣国になります」

 そう言ってエレノアは遠くに見える険しい峰々を指差した。

「あの山々の一つにドラゴンの巣窟となっている大洞窟があります。そこに行けばドラゴンがいるはずです」
「寒いけど、とにかく行ってみようか」

 私たちの恰好は動きやすさ再重視で学校指定の体操服の上に同じく学校指定のジャージを着ている。そのうえから一時期スケボーにはまった時につかっていた肘と膝のプロテクターを装着して防具にしている。寒さに体を震わせていると、

「あっ! 待ってくださいっ!! 寒さで体が動かしにくいでしょう? ほら、これを飲んでください」

 エレノアは私たちに瓶を差し出した。中には赤い液体が入っている。

「これは?」
「わたしの作ったポーションです。これを飲むと身体が温かくなり、凍傷や霜焼けなどの症状になりにくくなります」

 私と雨月がお礼を言いながら受け取る。

「いえ、お礼を言うのはこちらの方ですよ。ドラゴンを倒すための準備をしてくださったのですから。お二人には感謝してもしきれません」

 私たちはエレノアからもらったポーションを飲み干す。温かくなるという説明とその色味から辛いことを想定していたが、そこは魔法のポーション。わりと無味無臭でさらりと飲み干してしまった。
 そうして準備も整い、いよいよドラゴン討伐目指して歩き出した。私と雨月の足取りは軽かった。それはもう軽やかに軽やかに、スキップをしながら歩いていくくらいに。身体がポカポカしているというのもあるが、ドラゴンという現実では決してお目にかかれないものを見ることへの興奮もあった。
 ほどなくしてドラゴンが棲み処にしているという大きな洞窟に辿り着いた。
 洞窟の入口にはこれまで足止めを頑張ってくれていた騎士さんたちがおり、そこの隊長さんからドラゴンについて改めて説明を受ける。

「ドラゴンはこの中にいます。洞窟内は暗く、足元も滑りやすいのでご注意ください。ドラゴンは巨体ですが俊敏で、尻尾に薙ぎ払われれば騎士でもすぐには立ち上がれないほどの衝撃です」

 メートルとか具体的な単位がないこちらの世界だが、洞窟の入口がドラゴンにはぎりぎり通れるくらいの大きさと言われて、驚いた。大きめのダンプカーですら通れそうな穴がぎりぎりだというのだから、ダンプカーよりドラゴンの方が大きいということだ。……本当に包丁だけで倒せるのかな。

「一般的な刃物ではびくともしません。加護を得たドラゴンキラーだけが頼りです。ご武運を」

 私たちは顔を見合わせる。

「じゃあ、行こうか」
「うん」
「はい」

 私たちは薄暗い洞窟の中へ足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

処理中です...