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第二話 出会い(後編)
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午後五時半ちょっと過ぎ。わたし、水藤叶美は図書委員の仕事が終わったので自分が住む寮に帰ろうと、まだ少し青い空の下を歩いていた。すると、寮と校舎の間にある道で小柄な女の子がうろうろしているのが目に留まった。わたしは、学校の敷地の東側を歩いて寮へ向かっていて、寮は東から順に高等部菊花寮、高等部桜花寮、中等部菊花寮、中等部桜花寮と並んでいる。
「君、中学生でしょ? こんな所で何をしてるの?」
つまるところ、帰る途中に通ることもあるが、中学生がうろうろするような場所ではない。
「猫ちゃんを追いかけてきたら、迷子になっちゃったの」
随分とメルヘンな女の子だなぁ。細めに編み込まれた三つ編みと相まってなんだか要請さんみたいな女の子だ。
「君、寮に住んでるの?」
「うん。桜花寮」
中等部の桜花寮かぁ。迷いはしないのは一直線だから大丈夫だろうけれど、またふらふらと猫を追ってしまったら同室の娘も心配するだろう。ここは先輩として送り届けてあげないと。
「連れてってあげる。わたしは高等部二年、水藤叶美。君は?」
「中等部二年、北川かおりだよ」
自己紹介を済ませ、わたしが歩き始めると、かおりちゃんがわたしの手を握ってきた。
「これなら迷子にならないねっ」
あどけない笑顔を浮かべながら嬉しそうに言うかおりちゃん。三つしか歳は変わらないはずなんだけど、どこか母性本能をくすぐられる。そんな彼女に一つ質問。
「かおりちゃんは猫が好きなの?」
「うん! だいすきなの!!」
頭撫でたい可愛さだけど手は握られているので出来ない。
「~♪ ~~♪」
上機嫌のかおりちゃん。学生寮は校舎から見て北に並んでいて、建物もかなり大きい。私が住んでいるのは高等部の菊花寮で、中等部の桜花寮とはそれなりに距離がある。
「かおりちゃんは何部に入ってるの?」
「美術部だよ!! でも、いつもは図書室で猫さんの本を見てるの」
なるほど。どことなく見たことがあったような気がしたのは気のせいじゃなかったんだ。ていうか、
「それって平気なの?」
「コンクール前だけ頑張ればだいじょうぶ!!」
「へぇ。わたしもイラスト描いてるんだよ」
「そうなの!? えへへ、一緒だね」
癒やされる。こんな妹いたら幸せだろうなあ。そう思っていた矢先、かおりちゃんがわたしの腕に絡めていた腕をほどいた。駆け出すかおりちゃんにビックリすると、
「んしょ、よっと、ありがとう! またね、かなみちゃん!!」
中等部の桜花寮が見えてきた。両手で大きく手を振ってくれるかおりちゃんにわたしも手を振って、藍色を濃くする空の下、菊花寮の自室へ帰ることにした。
「君、中学生でしょ? こんな所で何をしてるの?」
つまるところ、帰る途中に通ることもあるが、中学生がうろうろするような場所ではない。
「猫ちゃんを追いかけてきたら、迷子になっちゃったの」
随分とメルヘンな女の子だなぁ。細めに編み込まれた三つ編みと相まってなんだか要請さんみたいな女の子だ。
「君、寮に住んでるの?」
「うん。桜花寮」
中等部の桜花寮かぁ。迷いはしないのは一直線だから大丈夫だろうけれど、またふらふらと猫を追ってしまったら同室の娘も心配するだろう。ここは先輩として送り届けてあげないと。
「連れてってあげる。わたしは高等部二年、水藤叶美。君は?」
「中等部二年、北川かおりだよ」
自己紹介を済ませ、わたしが歩き始めると、かおりちゃんがわたしの手を握ってきた。
「これなら迷子にならないねっ」
あどけない笑顔を浮かべながら嬉しそうに言うかおりちゃん。三つしか歳は変わらないはずなんだけど、どこか母性本能をくすぐられる。そんな彼女に一つ質問。
「かおりちゃんは猫が好きなの?」
「うん! だいすきなの!!」
頭撫でたい可愛さだけど手は握られているので出来ない。
「~♪ ~~♪」
上機嫌のかおりちゃん。学生寮は校舎から見て北に並んでいて、建物もかなり大きい。私が住んでいるのは高等部の菊花寮で、中等部の桜花寮とはそれなりに距離がある。
「かおりちゃんは何部に入ってるの?」
「美術部だよ!! でも、いつもは図書室で猫さんの本を見てるの」
なるほど。どことなく見たことがあったような気がしたのは気のせいじゃなかったんだ。ていうか、
「それって平気なの?」
「コンクール前だけ頑張ればだいじょうぶ!!」
「へぇ。わたしもイラスト描いてるんだよ」
「そうなの!? えへへ、一緒だね」
癒やされる。こんな妹いたら幸せだろうなあ。そう思っていた矢先、かおりちゃんがわたしの腕に絡めていた腕をほどいた。駆け出すかおりちゃんにビックリすると、
「んしょ、よっと、ありがとう! またね、かなみちゃん!!」
中等部の桜花寮が見えてきた。両手で大きく手を振ってくれるかおりちゃんにわたしも手を振って、藍色を濃くする空の下、菊花寮の自室へ帰ることにした。
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