恋は芽吹いて百合が咲く

楠富 つかさ

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第九話 三人でお風呂を

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 食後少し時間をおいて、わたし達は寮の大浴場へやってきた。手早く服を脱ぎながら、ついつい二人の方へ視線がいってしまう。かおりちゃんは上下真っ白の下着をためらいなく脱いでもう裸だ。紅葉ちゃんは制服で来たこともあって脱ぐのに時間がかかっているが、真っ赤な下着に思わず見とれる。

「紅葉ちゃん、それどこのブランド?」
「え、あ、ピーチフィールです。種類も大きさもけっこう豊富なんで助かってます」

 なんだかんだ高いものを買って後から財布がつらくなるという経験を何度かしているから、安くて良い物への興味はかなりある。もちろん、高いだけあって今着けている下着はフィット感もあるし、よれないから長く使える。どっちがお得なんだろう……。

「下着はまた今度見に行きましょう。さあ、お風呂に入りましょう?」


 運良く空いている時間にあたったため、お風呂にわたし達以外の人影はない。

「ふたりともおっきー。にへ~」

 二人で並ぶわたしと紅葉ちゃんに正面から抱きつくかおりちゃん。温もりとミルクのような匂いが伝わってくる。

「かなみちゃーん。髪の毛洗ってぇ」

「いいよ。じゃ、取り敢えずお湯から出ようか」
「では、私はお姉様のお背中流しますね」

 浴槽を出て洗い場の風呂椅子にかおりちゃんが座る。わたしはかおりちゃんの後ろで膝立ちの体勢になってシャンプーを泡立てる。さらにわたしの後ろで、紅葉ちゃんがボディーソープを泡立てている。

「かゆいとこあったら言ってね」

 三つ編みをほどいた髪は思ってたより量があり、思ったより大変。それと……。 

「あの、紅葉ちゃん……あたってる」
「あててるんですよ。どうです? お姉様」

 背中にぴったりとくっつく紅葉ちゃんの温もりと柔らかさに鼓動が高まる。一瞬離れたかと思いきや……。 

「ふふ、お姉様の背中、気持ちいいです」

 わたしの背中、紅葉ちゃんのおっぱいで洗われてる? ぬるぬると背中で蠢く二つの柔らかな感触と……ちょっとだけコリッとした感触が。

「く、紅葉ちゃん……ダメだよ、それ」
「イケナイですか?」
「耳元で囁くのだめぇ」
「かなみちゃんとくれはちゃんだけ楽しそうなのずるい。わたしもぉ」

 シャンプーの手が止まった隙に振り向いたかおりちゃんが、わたしにぎゅっと抱きついてくる。もちっとした肌が、わたしの肌に吸い付くように温もりが伝わってくる。

「ちょ、かおりちゃん、シャンプーの泡、が! 二人ともちょっと離れて!」
「はわわ、ごめんなさい]

 目に入りそうで怖いのなんの。離れて座り直すかおりちゃんの泡をシャワーで流しながら紅葉ちゃんにも離れてもらう。

「わたし、かなみちゃんの髪洗う!」
「では私は自分で髪を洗いますね。身体も洗わないとですし」

 そんな感じで三人で入るお風呂を過ごしていった。それから……。
 

 

「わたしが……真ん中なんだね」

 愛用しているシンプルなネグリジェを着て、見慣れない天井を眺めるわたしの隣には、わたしが部屋に入った時とは別のベビードールを着た紅葉ちゃんと、ネコの肉球がキュートなパジャマ姿のかおりちゃん。
 どうしてこうなったかと言えば、夕飯とお風呂も済んだので、そろそろ寝ようということになったのが数分前。それまでちょっとトランプで遊んでいたんだけど、ばば抜き勝負で勝った人のお願いを負けた人が聞くということになって、かおりちゃんが勝ってわたしが負けたので「川の字で寝る」というお願いを叶えることになりました。

「お姉さま、いい匂いがします」
「かなみちゃんいい匂い」

 両サイドを年下の女の子に挟まれてなんだかドキドキしちゃってるけど……わたし、どうしちゃったんだろう?

「お姉さま、まだ起きていますか?」
「んぅ? どうしたの?」

 わたしの左手に指を絡めたまま、紅葉ちゃんが耳元で囁く。

「もしよろしければ、今度はお姉さまのお部屋に泊まりたいです」
「わたしも、わたしも一緒がいい!」

 右腕を抱く力を強めてかおりちゃんも言う。二人からお願いされたらしょうがないかな。

「次の土日だったらいいよ。泊りに来ても」
「嬉しいです」
「やったあ!」
「ふふ、じゃあ今日はもう寝ようか」
 
 そうして、わたしたち三人の夜はゆっくりと更けていった。
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