2 / 33
第一章 エレス=センティア篇
魔王をさがして
しおりを挟む
「ここが私たちの住むエレス=センティアにございます」
例の鴉―カラウという名らしい―の展開した魔方陣で送られた先は城の謁見の間のようだった……否、実際にそうなのだ。後方には一対の女神像が佇んでおり、本来の道である階段を昇ると、彼女らが出迎えてくれる配置になっているのだろう。微かに放つ神聖さ……信仰対象なのだろうか。
どんな動物の毛かは不明だが、赤い絨毯は革靴越しでも分かるフカフカ感。高い天井は豪奢ながらも繊細な装飾がなされており、少し離れた位置にある荘厳な玉座に腰掛ける若い男、豪奢な衣装を身に纏い黄金の冠を戴くその男こそ、エレス=センティアの王であるアヴァンである。眉目秀麗に手足を付けたような人間で、端正な顔立ちに気品に満ちた仕草、まさに王者たる姿だった。
「お待ちしておりました、救世の魔導師様。まさか本当にお会いできるなんて……爺や、アレを持ってきてくれ」
爺やと呼ばれた初老の老人―おそらく大臣だろう―は玉座の側からこれまた豪奢な縦長の箱を持ってきた。それを我が目の前に置くとアヴァンが何やら詠唱を始めた。
「これは、王家に伝わりし黒曜石を嵌め込んだ杖にございます。貴方の魔力をより純度の高いものにするでしょう。長きに渡り正当なる継承者を待ちながら封印の眠りについていたのですが、今しがた封印を解きました。……おや、そちらの女性は?」
アヴァンはユフィに気付き声をかけた。ユフィは一瞬だけ驚いてから姿勢を正し挨拶をした。
「え、えぇと……やな……じゃなくて、ユフィ・ソルディバリーです。剣士としてクライトに同行します」
ユフィがそう言うと、アヴァンは驚愕の表情を浮かべた。
「伝説の通りだ……。異界の魔導師と共に現れる剣士……爺やアレもすぐに用意してくれ」
大臣は謁見の間から外へ出ていった。
「アヴァン王、この箱を開けてよろしいのかな?」
アヴァンはすぐに我に向き直り許可をした。箱に手をかけ、ゆっくりと開ける。そこにあったのは、我が身の丈と相違ない長さの杖、先端は豪奢な刀剣の鍔のようにアーチを描いている。魔力がたぎる感覚に満足していると、さっきの大臣が一振りの剣を持って戻ってきた。それをアヴァンに渡すと、ユフィに柄を向けた。
「ユフィ殿、この剣を抜いてみてくれまいか?」
ユフィが剣の柄に手を掛けると、一瞬だけ閃光が迸った。閃光が収まる頃にはユフィは鞘から剣を抜ききっていた。この場にいる全員が唖然としている中、おもむろにアヴァンが口を開いた。
「それは王家に伝わりし聖剣、銘をブライトスターという。抜くことができるということは、やはり……いや、何でもない。旅の資金や諸々の道具はこちらで揃えてある。それと、この指輪をクライト殿に。魔力強化の指輪で王家の紋が刻まれているから関所の兵に見せれば通してくれるだろう。では、武運を祈る」
こうして、城の者に見送られ我等は旅立つのだった。
例の鴉―カラウという名らしい―の展開した魔方陣で送られた先は城の謁見の間のようだった……否、実際にそうなのだ。後方には一対の女神像が佇んでおり、本来の道である階段を昇ると、彼女らが出迎えてくれる配置になっているのだろう。微かに放つ神聖さ……信仰対象なのだろうか。
どんな動物の毛かは不明だが、赤い絨毯は革靴越しでも分かるフカフカ感。高い天井は豪奢ながらも繊細な装飾がなされており、少し離れた位置にある荘厳な玉座に腰掛ける若い男、豪奢な衣装を身に纏い黄金の冠を戴くその男こそ、エレス=センティアの王であるアヴァンである。眉目秀麗に手足を付けたような人間で、端正な顔立ちに気品に満ちた仕草、まさに王者たる姿だった。
「お待ちしておりました、救世の魔導師様。まさか本当にお会いできるなんて……爺や、アレを持ってきてくれ」
爺やと呼ばれた初老の老人―おそらく大臣だろう―は玉座の側からこれまた豪奢な縦長の箱を持ってきた。それを我が目の前に置くとアヴァンが何やら詠唱を始めた。
「これは、王家に伝わりし黒曜石を嵌め込んだ杖にございます。貴方の魔力をより純度の高いものにするでしょう。長きに渡り正当なる継承者を待ちながら封印の眠りについていたのですが、今しがた封印を解きました。……おや、そちらの女性は?」
アヴァンはユフィに気付き声をかけた。ユフィは一瞬だけ驚いてから姿勢を正し挨拶をした。
「え、えぇと……やな……じゃなくて、ユフィ・ソルディバリーです。剣士としてクライトに同行します」
ユフィがそう言うと、アヴァンは驚愕の表情を浮かべた。
「伝説の通りだ……。異界の魔導師と共に現れる剣士……爺やアレもすぐに用意してくれ」
大臣は謁見の間から外へ出ていった。
「アヴァン王、この箱を開けてよろしいのかな?」
アヴァンはすぐに我に向き直り許可をした。箱に手をかけ、ゆっくりと開ける。そこにあったのは、我が身の丈と相違ない長さの杖、先端は豪奢な刀剣の鍔のようにアーチを描いている。魔力がたぎる感覚に満足していると、さっきの大臣が一振りの剣を持って戻ってきた。それをアヴァンに渡すと、ユフィに柄を向けた。
「ユフィ殿、この剣を抜いてみてくれまいか?」
ユフィが剣の柄に手を掛けると、一瞬だけ閃光が迸った。閃光が収まる頃にはユフィは鞘から剣を抜ききっていた。この場にいる全員が唖然としている中、おもむろにアヴァンが口を開いた。
「それは王家に伝わりし聖剣、銘をブライトスターという。抜くことができるということは、やはり……いや、何でもない。旅の資金や諸々の道具はこちらで揃えてある。それと、この指輪をクライト殿に。魔力強化の指輪で王家の紋が刻まれているから関所の兵に見せれば通してくれるだろう。では、武運を祈る」
こうして、城の者に見送られ我等は旅立つのだった。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる
邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。
オッサンにだって、未来がある。
底辺から這い上がる冒険譚?!
辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。
しかし現実は厳しかった。
十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。
そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる