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第一幕
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「死にたくない! まだだ、まだ生きていたい! くっそ、なんでこのタイミングで魔物に見付かってんだよ俺は!」
自分自身への文句を叫びながらひたすらに走り続ける俺の背後には、顔の無い四本足の獣が迫っていた。濃い茶色で、てらてらと光るヤツらは俺たちの生命を脅かす存在であり、愛用の木剣を失った今の俺には抵抗できない相手だ。
「くそっ! こっちに逃げたのはミスだったか!」
俺が住む村の外れにあるたまり場へ向かう最中に魔物に見付かり、俺は無我夢中で走っている中で北へ逃げていたらしい。北には村が祀る祭壇があり、普段なら俺みたいなガキが入って良い場所じゃない。
「緊急事態なんだよ!」
親父に聞いた話が確かなら山の上にある祭壇は結界に守られていて安全なはず。そこまで逃げ延びれば魔物も立ち去るだろう。その思いだけで坂道を駆け上がった。上り坂に俺の走るペースもやや落ち、魔物との距離も縮まっているように思える。挙げ句、いつの間にか魔物は一体から二体に増えてきた。必死の思いで山を登り、祭壇へと足を踏み入れる。
「ここまで来れば!」
俺が思ったとおり、魔物は祭壇に近付くものの、それ以上進みはしなかった。心に少しばかりの余裕が出来た俺は、祭壇に祀られている長剣に手を伸ばした。魔を祓う雷鳴の剣とされていて、選ばれた者にしか引き抜けないらしい。だがそんなお伽話を信じる程、俺も子供ではない。どのみち、この剣であの魔物を殺さない限り帰れないのだから。
「んな!」
剣は想像以上にあっさりと抜けた。だが……それと同時に祭壇を守る結界が姿を消した。
「やってやる!」
ヤツら魔物は、この世界の存在ではない。異世界から侵略してきた魔王が、この世界クルビストランドを滅ぼすために放った尖兵なのだ。俺が今、相対しているパンサー型の他にスライム型やゴーレム型なんかがいる。対抗手段としてどこかの王族が勇者召喚なんて儀式をしたらしいが、失敗して滅びたと聞く。
「せりゃあ! はぁ!!」
棒きれじゃ相手に出来なかったパンサー型の魔物を、この剣はいともたやすく切り裂いて見せた。一匹を撃破したら、もう一匹は逃げようと俺に背を向けた。捕食者と獲物の立場はあっさりと逆転した。背を向けたそいつに剣を突き立てると、すぐに絶命した。
「はは、あっけねぇな。……いや、ほんとに抜けるとか思ってなかったぞ……」
まじまじと抜いてしまった聖剣を見る。魔物を斬ったというに刀身にはキズ一つない。……これが聖剣ってものなのか。
抜き身の剣を片手に山を下り、俺は家へと戻った。
自分自身への文句を叫びながらひたすらに走り続ける俺の背後には、顔の無い四本足の獣が迫っていた。濃い茶色で、てらてらと光るヤツらは俺たちの生命を脅かす存在であり、愛用の木剣を失った今の俺には抵抗できない相手だ。
「くそっ! こっちに逃げたのはミスだったか!」
俺が住む村の外れにあるたまり場へ向かう最中に魔物に見付かり、俺は無我夢中で走っている中で北へ逃げていたらしい。北には村が祀る祭壇があり、普段なら俺みたいなガキが入って良い場所じゃない。
「緊急事態なんだよ!」
親父に聞いた話が確かなら山の上にある祭壇は結界に守られていて安全なはず。そこまで逃げ延びれば魔物も立ち去るだろう。その思いだけで坂道を駆け上がった。上り坂に俺の走るペースもやや落ち、魔物との距離も縮まっているように思える。挙げ句、いつの間にか魔物は一体から二体に増えてきた。必死の思いで山を登り、祭壇へと足を踏み入れる。
「ここまで来れば!」
俺が思ったとおり、魔物は祭壇に近付くものの、それ以上進みはしなかった。心に少しばかりの余裕が出来た俺は、祭壇に祀られている長剣に手を伸ばした。魔を祓う雷鳴の剣とされていて、選ばれた者にしか引き抜けないらしい。だがそんなお伽話を信じる程、俺も子供ではない。どのみち、この剣であの魔物を殺さない限り帰れないのだから。
「んな!」
剣は想像以上にあっさりと抜けた。だが……それと同時に祭壇を守る結界が姿を消した。
「やってやる!」
ヤツら魔物は、この世界の存在ではない。異世界から侵略してきた魔王が、この世界クルビストランドを滅ぼすために放った尖兵なのだ。俺が今、相対しているパンサー型の他にスライム型やゴーレム型なんかがいる。対抗手段としてどこかの王族が勇者召喚なんて儀式をしたらしいが、失敗して滅びたと聞く。
「せりゃあ! はぁ!!」
棒きれじゃ相手に出来なかったパンサー型の魔物を、この剣はいともたやすく切り裂いて見せた。一匹を撃破したら、もう一匹は逃げようと俺に背を向けた。捕食者と獲物の立場はあっさりと逆転した。背を向けたそいつに剣を突き立てると、すぐに絶命した。
「はは、あっけねぇな。……いや、ほんとに抜けるとか思ってなかったぞ……」
まじまじと抜いてしまった聖剣を見る。魔物を斬ったというに刀身にはキズ一つない。……これが聖剣ってものなのか。
抜き身の剣を片手に山を下り、俺は家へと戻った。
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