めぐる季節を君の隣で

楠富 つかさ

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3ページ目:係決め

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 高校生活二日目、この日は朝のロングホームルームで配布物が大量に配られた。入学前にもちょっとした問題集や校歌のCD、生徒手帳といった物が配られたというのに、よくそんなに配布物があるなと思う。保護者向けのものもあるが、健康診断についてなど私たち向けのものも当然ある。
 それから校内を担任の案内で見て回ることになった。私たち二組は図書室からのスタートだ。

「図書室のガイダンスは別途行われるが、その時の集合場所がここだ。覚えておいてくれよな」

 空の宮東高校は南北に細長い形をしているが、図書室は一階の北側に位置している。それから家庭科室、理科室、職員室など順繰りに紹介されるが、中学校からそこまで大きな変化があるわけではないようだ。まぁ、どちらも公立高校の設備なのだから当然と言えば当然なのだろうけれど。

「なんだか、普通だよね」

 実際、さとみも同じようなことを思ったらしい。さとみとは以前、市内にある私立の女子校、星花女子学園に文化祭の見学で行ったことがある。たいへん広く、設備も充実している星花と比べてしまうと、東校はあまりに普通である。まぁ、不足なところはないだろうけれど。
 さほど広くはない学校ということで、二時限目が終わる時間には校内の散策は終わってしまった。休み時間を挟んだ三時限目は学級委員以外の委員会決めをするようだ。

「ここに委員会の一覧がある。取り敢えずやりたい委員会に、我々が散策中に手の空いた先生が届けてくれたネーム磁石を張るように」

 図書委員、美化委員、放送委員、保健委員、風紀委員、奉仕委員、体育委員といった委員会以外に、各授業の御用聞きなんかを担当する係が一覧で書かれている。

「悠李、どれにする?」
「御用聞き系が楽そう……。ちょうど担任だし、古文係がいいかも」
「なるほど。んじゃ、私もそこ狙うわ。というかついでに貼ってくるよ」

 そう言ってネームプレートを古文係の下に二人分貼るさとみ。一頻り全員が貼り終えると、古文係のところには私たち以外にも三人の生徒がネームプレートを貼っていた。

「二人以上のところはじゃんけんして決めろー」

 中村先生のゆるい声に応じて、教室内でじゃんけん合戦が始まる。

「古文係ここしゅーごー」

 一人の男子が中村先生の近くで手を挙げる。古文の係が集まるにはちょうどいい目印なのかもしれない。しぶしぶ、さとみと二人で男子三人の輪に加わる。

「じゃん、けん、ぽん!」

 五人でじゃんけんすると一回で決着がつくのは低確率だ。確率と割合とかいう数学の単元でやるような話だけれど、それはここでは一旦置いておこう。実際、あいこを四回ほど経てようやく決着がついた……。私の負けだった。さとみも負けていたが。

「こりゃ二人一緒の委員ってわけにもいかないか。好きに決めよ」

 さとみはそう言って適当な空きに、自分のネームプレートをぺたりと貼った。私は取り敢えず男子とペアになりたくはないなと思いながら、まだ一枠しか決まっていない委員を吟味する。ここからは実質早い者勝ちのようだからさっさと決めなくては。

「……あ」

 すると、図書委員に空席があることに気付いた。人気そうだから埋まっていると思っていたのだけれど。一人は誰なのだろうかと確認したら、なんとなく納得した。渡泉希だ。人見知りしそうな彼女と組むというのは大変そうだが、そもそも私だって人見知りする方だ。人見知りへの対応は慣れている……はず。私は意を決して、図書委員の枠にネームプレートを貼って自分の席に戻った。

「お、全員決まったな? じゃあ取り敢えず顔合わせしておけよ」

 というわけで席も近い泉希の方へ行くと……。

「よろしく」

「うん。あの、なんて呼んだらいい?」
「泉希でいいよ。悠李って呼んでいい?」
「まあ、いいよ。んじゃ」

 話は弾まないが、まあグイグイくる相手よりは楽だという結論に至った。午前中はそんな感じで過ぎていって、午後はどうやら部活動紹介らしい。東高は自称進学校あるあるの部活動必修というか、全員が何らかの部活に所属する義務付けがされているらしい。特にやりたいことは無いのだけれどなぁ。中学の頃は美術部でなんとなく過ごしてきたけれど、東校の美術部はわりとちゃんとしているなんて聞いてしまったから、入る気はさらさらない。悩ましい……。

「うーし、じゃ。昼休み取ってくれ」

 中村先生が教室を出て行き、教室内は一気に昼休みの空気に緩んだ。険しい雰囲気を出す先生ではないが、先生がいるかいないかで教室の空気はけっこう変わるようだ。

「山田さんも一緒にお昼どう?」

 さとみが山田美咲に声をかける。いいんですか? と、小動物じみた反応を返す彼女も机をくっつけ島にする。見れば本間律子、若林このみ、渡泉希も同じように三人で島を形成している。

「あのー。わたしも混ぜてもらえない?」
「ん? あ、えっと」
「似鳥芹菜です。芹菜って呼んでね」

 私たちの列の一番前、わりと男子の多いエリアにぽつんとたたずむ美少女、それが似鳥芹菜だった。人の容姿にさほど頓着しないけれど、可憐さを感じさせる人物だった。

「本田、ちょっとあっちで飯食おうぜ。ここ、使って良いからな」

 空気が読めるのか、男子の多いクラスで女子に囲まれるのが居心地悪いのか弓削和磨が本田浩介を連れて窓側、男子の多いエリアへと移動した。結局、私、さとみ、美咲、芹菜……そして。

「和磨ちょうどよくどいたな。そっちの島とも合体しようよ」

 律子、このみ、泉希……計七人という大所帯でお昼ご飯を食べることになった。……女子はどうして、群れるのだろうか。そんなどうしようもないことを考えながら、自分で作ったお弁当をつつくのだった。
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