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【2】
けっこうな勢いで転んだにも関わらず、そこそこ厚みのある『何か』が緩衝材になって受けるはずの痛みを免れる。バフっと頬に地面以外の感触が当たった。
「――なっ、君は、新入生か……?!」
私の下にある『何か』から発せられた、とんでもない美声。
涼やかで程よく低くて、聞くだけでぞくりと耳が喜ぶような甘い音。
突発的な出来事に驚いて出た声なのに、私が今まで聞いたことのある誰の声よりも良い声だった。
私はその声の主の上に転んだのだ。そう理解するまでに数秒がかかる。
そして、現在進行系で私はその人の身体の上に乗っている。身長155cmの私よりふた回りは大きい、しっかりとした男の人の身体。それが『何か』の正体だ。
私の顔に当たったのはきっとこの人の胸元だろう。質の良い黒いシャツを身に着けている。そして徐々に視線を上げると目に入る、喉仏と形の良い顎。とんでもない美声を発した薄い唇。通った鼻筋に、銀の髪。
神様が全力で愛と技術を注いで創った彫刻のように整ったパーツたち。その美しい顔の中で、更に美を結集させたような金色の瞳と視線があった瞬間。
私は熱した油に落とされた水滴のように『彼』の上から飛び降りた。
「うぃうぃうぃウィレム先生……?! し、失礼しましたっっっ!!!!!」
前方&足元不注意で私が下敷きにした男性。
その人は、入学三日後の私でも知っているアダマス学園の有名教師だった。
「――確かに俺はウィレムだが……まだ一年生の授業はしてないはずなのに、君は俺のことを知っているのか?」
「もちろん知ってます! むしろこの学園の生徒で、いえこの国で貴方のことを知らない人間はいないと思いますウィレム・アダマス先生……!」
ウィレム・アダマス。
そう、アダマス学園を創ったアダマス王家に連なる方。現国王の歳の離れた弟君。彼は私の6歳上だから、この出会いの時は21歳だった。
王族でもあり、強大な魔力を持つ魔術師でもある彼が学園の教師に就任したことは、この国の誰もが知っていた。
え。その王弟殿下を、平民の私が下敷きに? これ、不敬罪になるやつでは?
終わった。私の人生、終わった。
「――なっ、君は、新入生か……?!」
私の下にある『何か』から発せられた、とんでもない美声。
涼やかで程よく低くて、聞くだけでぞくりと耳が喜ぶような甘い音。
突発的な出来事に驚いて出た声なのに、私が今まで聞いたことのある誰の声よりも良い声だった。
私はその声の主の上に転んだのだ。そう理解するまでに数秒がかかる。
そして、現在進行系で私はその人の身体の上に乗っている。身長155cmの私よりふた回りは大きい、しっかりとした男の人の身体。それが『何か』の正体だ。
私の顔に当たったのはきっとこの人の胸元だろう。質の良い黒いシャツを身に着けている。そして徐々に視線を上げると目に入る、喉仏と形の良い顎。とんでもない美声を発した薄い唇。通った鼻筋に、銀の髪。
神様が全力で愛と技術を注いで創った彫刻のように整ったパーツたち。その美しい顔の中で、更に美を結集させたような金色の瞳と視線があった瞬間。
私は熱した油に落とされた水滴のように『彼』の上から飛び降りた。
「うぃうぃうぃウィレム先生……?! し、失礼しましたっっっ!!!!!」
前方&足元不注意で私が下敷きにした男性。
その人は、入学三日後の私でも知っているアダマス学園の有名教師だった。
「――確かに俺はウィレムだが……まだ一年生の授業はしてないはずなのに、君は俺のことを知っているのか?」
「もちろん知ってます! むしろこの学園の生徒で、いえこの国で貴方のことを知らない人間はいないと思いますウィレム・アダマス先生……!」
ウィレム・アダマス。
そう、アダマス学園を創ったアダマス王家に連なる方。現国王の歳の離れた弟君。彼は私の6歳上だから、この出会いの時は21歳だった。
王族でもあり、強大な魔力を持つ魔術師でもある彼が学園の教師に就任したことは、この国の誰もが知っていた。
え。その王弟殿下を、平民の私が下敷きに? これ、不敬罪になるやつでは?
終わった。私の人生、終わった。
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