虐げられた少女と、出会いと、報いの話 〜神は乙女を花嫁に望む〜

茅野ガク

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優しい記憶

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『いいかい花耶かや。村の山にある祠は毎日必ずお参りをしてお掃除をするんだよ。それが我が家の……常守つねもりの家のお役目だからね』
『はい、お父さま。かやももう十歳になるのだもの、毎日ちゃんとお掃除もお参りもするわ』
『うん、いい子だ』

 そう言って、父は大きく温かな手で頭を撫でてくれた。
 そんな自分たちの様子を、母は微笑ましそうに優しい瞳で見守っていた。

『しかし花耶の肌は本当に真っ白だなぁ。母さん譲りだ。将来絶対に美人になるぞ』
『あら。それでしたら花耶の黒い瞳と真っ直ぐな黒い髪はあなた似ですわ』
『かや、お父さまにもお母さまにも似ているの?』
『あぁ』
『あなたは私たちの宝物よ』

 これは今から八年ほど前のこと。
 花耶が十歳になる誕生日前日の記憶。
 ――まだ、花耶が幸せだった頃の記憶。

 両親の愛に包まれた穏やかな生活は、その次の日に壊れてしまった。

『大変ですお嬢様! 旦那様と奥様が馬車の事故で……っ!』

 使用人たちの慌ただしい足音と、ばあやの悲鳴。伝えられた言葉の意味。
 十歳になったばかりの少女が受け止めるには重すぎる現実。

 あの日から、花耶にとって自分の誕生日は、父と母が死んでしまった日だ。

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