サマー子爵家の結婚録    ~ほのぼの異世界パラレルワールド~

秋野 木星

文字の大きさ
33 / 100
「めんどくさがりのプリンセス」の末っ子エミリー

それぞれが決めた未来

しおりを挟む
 私達が捜索船に乗ってクラフの港に着いた時、船から無線連絡が入っていたのだろう、港には父様、母様、キャサリン、マリカをはじめクラフの町の知り合いが皆集まっていた。

母様とマリカには泣かれた。
キャサリンには涙目で頭をひっぱたかれた。

私が悪い。
本当に。

父様は、私達をギュッと無言で抱きしめて「捜してくださった皆さんにお礼を言いなさい。」と言った。

ロブと私は、海難救助隊や一緒に捜してくれていた漁師の人たちにお礼を言って回り、カトリーヌさんたち出迎えに来てくださっていた人たちにも、挨拶にまわった。
みんな、無事でよかったと笑顔で肩を叩いてくれた。

本当によかった、帰ってこられて。

ほんのちょっとの気のゆるみといくつかの間の悪い条件が重なると事故になるんだな。
大反省のエミリーであった。

 
翌日の新聞には、こんな記事が載った。

「ゴールデンカップル、今度はロビンソンクルーソーを発見す」

ロビンソンクルーソーじゃなくて、ロビン・ウィルソンさんだけど…。
それに、発見しに行ったんじゃなくて、私達も遭難してたんだけど…と突っ込みどころ満載だ。

新聞を読んだ時、金塊事件のあの騒ぎが再び起こるのかとぞっとしたけれど、今回は事が事だったので思ったより早く騒がしい事態は収束した。

余談だが、ロビンさんのことをお伝えしておこう。

ニューポンドランドの人たちはこの一週間、島民の人が総出でロビンさんを捜していたそうだ。
しかし、どこにも見つからなかった上に、ロビンさんの乗っていた船の破片がどこかの島に流れ着いたらしく、生存は絶望と思われ、今日にもお葬式をあげる予定になっていたようだ。

「お前さんたちが遭難してくれてよかった。」と後でロビンさんに変な感謝をされてしまった。


何日かして日常が戻って来ると、もう二度と見たくないと思っていた海にも出かけて、平気で泳いでいる自分に気が付いた。
人間とは思っているより案外しぶとい生き物なのかもしれない。

ロブの両親のジャックおじ様たちも、ロブのことを心配してしばらくクラフの町に来ていたが、ロブが全く平気でボートに乗ってデビ兄と遊んでいるのを見て、これなら大丈夫だと安心して帰って行った。


そんな生活の中で、エミリーはおかしなことに気が付いた。

キャサリンがいやに頻繁に父様たちと話し合いをしているのだ。
そう言えば、ここに着いた最初の日も長い時間、話をしていた。

何の話をしているのだろう。


キャスに聞いてみると、進路の事らしい。
この夏が終わり九月の新学期になったらハイスクール最終学年の三年生になるので、将来の進路を相談しているということだ。

「相談というより、私の方は大学に進むと決めてるんだけど、父様と母様がグズグズ言っているだけ。」

なんだそうだ。

そうだよね。
キャスは、ブリーとは違って「貴族の嫁」になるという夢は全然ない。

学問を身に着けて、社会に出てバリバリ働きたい。
弱っちい貴族のぼんぼんなんかくそくらえって感じだもんね。


でも今まではそれでもよかったんだけど、ブリーがああいう事になったから、キャスは貴族に嫁いでくれれば…なんていうことになっているのかもね。

アメリカの民主主義やフランスの革命が有名なため、西欧諸国は皆平等主義、国民主権の国だと勘違いされているけれど、イギリスは今だ国王が主権を握っている君主国家だ。
カナダの一部もアジアの幾つかの国々もイギリスの国であり、統治しているのは国王の派遣した領事である。
国会の運営にも半分以上は貴族が関わっている。

こういう政治経済の事情を考えると、父様たちにすれば今後の伯爵領、子爵領の領地経営をかんがみて、出来れば貴族間に縁戚関係を持っておきたいというところなのだろう。

その大人の事情はわかるが…キャスにすれば自分の今後の生き方に関わることなので、なかなか譲れないんだろうな。


しかし、キャスのように悩むにはもう五年はあるよねとのんびりと構えていたが、この問題はエミリーにも飛び火してきた。
いや、私たちに、飛び火してきたのだ。

「ロブとの結婚問題」である。

まだ私たちがジュニア・ハイの学生なので、大人たちははっきりとは口出ししてこなかったが、心の中では2人を結婚させる算段であったらしい。

…なるほど。
赤ちゃんの時からの付き合いは、ここに繋がっていたのね。


ロブとしては、唯一の姉弟であるリサお姉さんが結婚して家を出たこともあって、デビ兄やエミリーなどの遊び相手のいる家によく入り浸っていたというそれだけの事だったのだろう。

けれど公爵家でも、本邸のある地元のジュニア・ハイではなく、わざわざサマー領に近いポルトの町のジュニア・ハイに通わせて、エミリーとの親交を深めさせるという隠れた意図を持っていたらしい。

開けてびっくり、聞いてびっくりの策略である。

それを母様の口から聞いた時には、あんぐりと開けた口が塞がらなかった。
エミリーとしては、キャスの応援をするつもりで何気なく母様に話しかけてみただけだったのだが、藪から蛇が飛び出してきてしまったようだ。


エミリーが公爵家と正式に婚約の運びになれば、キャスの進路も少しは融通が利くようになる…んだってさっ。

何という時代錯誤。
信じられない。

10歳で、いや秋には11歳だけどさ、結婚なんて考えられる?


エミリーは、この突然降ってわいた持って行き場のない憤りを誰かにぶちまけたかったが、ことは公爵家に関わる結婚問題だ、いくら一緒に別荘に来ているとは言っても、マリカに相談するわけにもいかない。

ということで、なつみさんに聞いてもらうことにした。

部屋で一人になってなつみさんを呼び出す。


「【アラバ グアイユ チキ チキュウ】」


ピーーンポーーン


『はぁい。呼んだぁ?』

「うん。なつみさん、ちょっと聞いてよ。」

エミリーは、ロブとの結婚話が出ていること、ブリーの結婚のこと、キャスの進路の事、大人たちの思惑のことなどをつらつらとなつみさんに打ち明けた。


なつみさんは、うんうんと言いながら全部聞き終わってから、しばらく考えて言った。

「今の話はちょっと棚の上に置いといて、ずばり聞くわね。エミリーはロブの事をどう思っているの? 結婚したくない程、嫌な奴? それともそういう関係になっても楽しく生活が送れそうな相手なの? 例えば、このお話が無くなって、エミリーとロブがそれぞれ別の相手を見つけて結婚しても友達として付き合っていけるのかしら。…まずは、そこからじゃない?」


え?
…そういうことは考えていなかった。

策略にはめられた理不尽さへの憤りの方が頭のほとんどを占めていて、そういう観点からこの問題を考えてはいなかったのである。


ロブのことか…。
正直、その辺にいて当たり前の存在で、取りたてて深く考えてみたこともない。

結婚っていうのは、どういうことだろう。

ずっと一緒に生活するっていうこと?
人生を共に歩むパートナーとしてロブを考えられるかということなの?


一緒に生活をする上では、違和感も何もない。
考え方も癖もお互いに知り過ぎるほど知っている。

頼りになるかと言われれば、今回の遭難時にも身に染みたし、その事は疑いようもない。
勉強でも、こういう事が起こった時でも一番頼りになる存在である。

経済力もある。なんせ5年後には侯爵閣下だ。

背も私より高くなった。
肩幅も…と考えて、ソリでロブの背中に抱きついたことを思い出した。

ああいう事をロブが他の人とする?
………なんか嫌だな。

私が他の人とするのも……想像ができない。

あれ?
あれぇーーーっ?!

「なんか、ロブと結婚するのもありなのかと思えて来た。」


『気づくのが遅いわ、エミリー。』

「でも、でもロブはどうなのかな。私とは結婚したくないんじゃないのかな。私、めんどくさがりだし、いつもロブにあきれられてるし。」

『エミリー、ロブは頭の回転が速い子でしょ。大人たちの思惑なんてわかった上で、エミリーとつき合ってきたんじゃないかしら…。本人に聞いて御覧なさい。』

なつみさんがそう言うのを聞いて、再び私は仰け反った。

嘘ぉーーーーーっ。
えっ、マジ?!



◇◇◇



エミリーは慌ててロブの部屋に行ってみた。

ロブは寝ようとしていたところらしく、エミリーがバタンと戸を開けて飛び込んで来た時に、パジャマのズボンに片足を突っ込んだまま振り返った。

「うわっ、何事?! ノックしろよっ、エム!」

そう言って、即座にベッドに飛び込んで布団の下でゴソゴソと残りのズボンをはいた。

「…………。」

私達は、たいていこういう感じだ。

これで、結婚?
可笑しくない?


「それで、何の用? 何か用があるから来たんだろ。」

ズボンをはき終わったロブがベッドから出て来て、窓の側にある椅子の所へ歩いて行く。

その様子をエミリーはじっと眺める。

お互いに子どもだ子どもだと思っていたけれど、ロブもジュニア・ハイに入ってから子どもから青年へと移行する過程にあるようだ。
もう少年とは言えないその姿態に、改めて気づいた。

私もそういう変化が外に現れてきているのだろうか?


エミリーはロブの部屋へ入って、ドアをきっちりと閉めた。

ロブは何か言いたそうにドアを見ていたが、エミリーの様子を見て言うのをやめたようだった。

こういう「あ・うんの呼吸」というか、お互いの意図を言わずして察する感じはロブとの間にしかないものだ。
海で遭難した時も、次に何をするか何をしたらいいか、お互いにわかっていた。


部屋の中へ歩いて行って、エミリーもロブの前の椅子に座った。

「キャスの将来について母様に頼んでたら、私の将来について言われたの。」

「…うん。僕との結婚を考えろとでも言われた?」

「何で知ってるの?! ロブは何か聞いてたの?」

「…エムは気づいてないだろうと思ってたよ。この間デビ兄に言われた時も、寝耳に水って感じだったしね。僕はデビッドが知っていることの方に驚いたけど。デビッドはエムに近い感性だと思ってたからね。…かなりあからさまだったよ、エムの親もうちの親も。」


「やっぱり、知ってたんだね。」

「やっぱりって?」

「なつみさんに相談したら、ロブはもう気づいてると思うって言われた。」

「うん。気づいてたよ。ずっと前から。」

「いいの? ロブはそれで。だって結婚だよ。…私のこといつも呆れた顔をして見てるじゃん。」

「そこは今更かな。でも、自分の隣にエム以外の人が立っていることの方が想像できない。この前の遭難した時だって、エムと一緒だったから乗り切れた。あれが、ごめん私のせいでぇーとか言って、べそべそ泣き崩れるタイプの女の子と一緒だったら、助かってないよ。あの時、エムがあの島にしがみついてでも生きてやるって思ってたのがわかったから、僕もなけなしの力を振り絞れたんだ。僕たちいいチームだと思うけど…エムは、どう思ってるの?」

「…うん。私もロブ以外の人が側にいるのって、想像できない…かも?」

「かも?」

「だってぇーー、今まで一緒にいるのが普通で、その後の事なんて考えてこなかった。」

「いいよ、それで。僕たちの関係にどういう言葉をあてはめられようと、僕たちは僕たちのままでいいんだよ。ただ…正式に婚約しといたほうが、今後の展開としては楽なのかなと思う。そういう関係がないと、こうやって2人っきりで居てもいろいろ周りがうるさいだろ。んー、婚約式だけでもやっとく? そしたらキャスも晴れて自由の身だ。」

「うん。…そうだね。そうしよっか。」


エミリーは気楽にそう返事をした。

安易に考えすぎてたかも…と後で2人が思ったのは、ロブの母親、デボン公爵夫人の話を聞いた時の事だった。

そんなことを言っても後の祭り。
動き出した車輪は容易に止まれない。

私達の11歳の秋は、すぐそこまで迫ってきていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...