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第二章 「のっぽのノッコ」に恋した長男アレックス
だから言ったでしょう
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アレックスに建物だけではなく、皇居で見たような日常生活や社交行事が写っている写真も見せてもらった。
「私、ノッコの悩んでたことがやっとわかったわ。」
お母さん、今更なんですけど…。
でも貴族の社交の様子を実際に映像で見ると、自分たちの想像以上だった事がわかるんだよね。
日本に住んでる一般人には貴族の世界の事なんかわからないもの。
それも狭い我が家に馴染んでいるアレックスを見ているとこういう生活は想像できないよね。
ノッコも皇居で写真を見た時には出来なかった質問をアルにした。
「どうして誕生パーティーにこんなにたくさんの人がいるの?」
「僕たちの誕生パーティーは特殊なんだ。僕は将来的に伯爵家を継ぐ人間だからね。サマー子爵領だけでなくてストランド伯爵領からも要人が出席するし、近隣の付き合いのある貴族や名を売りたい有名人も出席したがる。まぁ、有名人なんかは極力母様が排除して知り合いの人を優先して招待してるけどね。それにエム。妹本人はのんびりしてるから気づいてなかっただろうけれど、エムは将来の公爵夫人だとみんなが考えてたんだ。公爵の嫡子になるロベルトは幼馴染で、エムと小さい頃からずっと仲が良かったから、たぶん2人は結婚するんじゃないかとずっと周りの人間に思われてきたんだ。貴族たちの中ではそれが常識で本人たちの気持ちより噂の方が先行してたぐらいさ。だから招待されて断る貴族はまずいないよ。将来の公爵夫婦と馴染みになりたい人は多いからね。」
「ふぅーん、なるほどー。馴染みになっても本人たちに嫌われてたらかえってマイナス要因だと思うけど、中身がない人はそこまで考えないか…。」
ノッコがボソッと正直な感想を言うと、アルが笑い出した。
「だから僕はノッコが好きさ。そこまでハッキリと言う人は貴族にはいないよ。いや、家族うちではたまに言うけどね。」
「僕はなんでイギリス国王やクロード・ベネットが写真に写っているのかが知りたいよ。まさかノッコの結婚式にこの人たちも来るなんて言わないよな。」
伸也はこの2人に会うのが心配なのか嬉しいのかわからないような顔をしてアルさんに聞いている。
「ああ、その2人はエムの関係者だから僕たちの結婚式には来ないよ。」
その言葉に伸也よりお父さんたちの方が安心していた。
私も心底ホッとした。
「ただ、M2は来るかも。僕の結婚式では歌いたいと言われてるんだ。」
「マジッ?!!」
あら、伸也はこの人のこと知ってるんだ。
うちの両親は知らなかったし、ノッコもアルさんにその事を言われた時にM2のことを初めて知った。
曲は最近よく聞くので知っていたが新人歌手なので名前までは知らなかったのだ。
M2はエミリーさんの幼馴染らしく、アルとも小さい頃から知り合いらしい。
本当は内緒だから他の人には言わないでね、実はこの子がM2なんだよとお嬢様のような写真を見せられても、以前見せてくれたCDジャケットの姿とは全然違うのでわからなかった。
M2は顔半分を仮面で隠していて、素性を秘密にしていることで有名なんだそうだ。
そして、服装が…露出の多い男の人受けする感じなのだ。
「ちょっとかすれた色っぽい声がいいんだよなぁ。へー、普段はこんなにお嬢様な感じなんだー。萌えるなぁ。」
伸也が食い入るように写真を見ていたので、アルさんが重ねて「内緒だからね、身内しか知らない秘密なんだ。本当に、本人の身内も知らないんだよ。」と言っていた。
本人の家族が知らないなんて、そんなことが出来るのだろうか?
◇◇◇
次の日おばあちゃんの家に着て行くために、ノッコは自宅の向かいにある美容室で振袖を着せてもらった。
背が高すぎてノッコが着ることが出来る貸衣装がなかったので、成人式用に作ってもらった着物だ。
あまり着ないのにもったいないなぁと思っていたのだが、今となっては作ってもらっていて良かったかもしれない。
イギリスでの結婚式で着ることが出来そうだ。
ノッコの着物姿を見たアルは、一瞬言葉を失っていた。
「凄いよ! ゴージャスだ。うわー、ノッコにこんな一面があるなんて思わなかったよ。」
しかし褒め始めると止まらない。
伸也が「よかったな。ここまで手放しで褒めてくれる男が見つかって。僕らのツレだったら恥ずかしくてこんなこと言わないよ。」とぼそっと言ったけど、確かにそうだ。
日本人だったら絶対こういう褒め方はしないよね。
でも、ノッコは小さい頃から背が高すぎてコンプレックスがあったので自分に自信が持てなかった。
だからアルさんの手放しの称賛は、その場では恥ずかしくて見悶えするけれど、じんわりとノッコの中に染み込んで自分に自信を取り戻してくれる気がする。
誰かに心から認めてもらうって大切な事なんだな。
みんなで一緒におばあちゃんちに行くと、親族全員が押し合いへし合いして玄関に出て来てくれた。
「いらっしゃい。よー来たねー。入られー入られー。ノッコ、この度はおめでとう。良かったねぇ。」
おばあちゃんが代表して挨拶をしてくれる。
どこかで見た光景だ。
血の繋がりって怖いものがあるな。
ノッコとアルさんが並ぶと迫力があるらしく、従妹の恵里ちゃんの子ども達が「スゲースゲー、おっきいー。」と言いながら私達の周りを駆け回る。
きみたちねぇ…私とアルさんは大型戦隊ロボじゃないんだからね。
ここの男の子2人は、恐竜とか巨大ロボットとか、とにかく大きいものが好きなので、アレックスのことを気に入ってまとわりつくばかりしている。
アルさんも一緒になって遊んでやっているので、子どもって言葉が通じなくても何とかなるもんなんだなと感心する。
おばあちゃんと悦子おばちゃんはノッコの着物を褒めてくれた。
「ノッコは背が高いから柄行が全部見えて映えるねぇ。」
「本当に。ノッコちゃんはこういう派手な柄が似合うわ。地の色を赤にしたのも今から考えたらよかったじゃなの、ねぇ泉さん。」
おばちゃんに言われてうちのお母さんも「義姉さんは先見の明があるわ。」と言っている。
実はノッコの着物を作る時に、うちのお母さんが悦子おばちゃんに頼んで一緒について行ってもらったのだ。
ノッコとお母さんは着物の事がさっぱりわからないので、お茶の先生をしていた伯父さんの奥さんである悦子おばちゃんを頼ることにしたのだけど…。
私達は、おばちゃんの娘である恵里ちゃんに選んだような青い地に白い葉や黄色の小花の柄が付いているようなスッキリとした着物を選んでくれると思っていた。
ところがおばちゃんが選んだ着物は、全く予想外だった。
赤い地色に牡丹や芍薬の柄が入ったキンキラ金のド派手な着物をおばちゃんが強く勧めるので、正直その時は困った。
大きな身体でこんな目立つ着物を着たら、小さくなって隠れることも出来ない。
悩んでいるノッコに、悦子おばちゃんと着物売り場の人が二人して、「背の高さを生かして小柄な人が着ることのできない着物にするべきだ。」と強く主張するので、その押しに負けた形で買ってしまった着物だった。
今ならあのイギリスの豪奢な雰囲気に負けないこの派手な着物で良かったと思える。
正直、ノッコが買おうと思っていた黒地の地味な着物にしなくてよかった。
おばちゃんは先見の明があるよ、本当に。
座敷に長い座卓をたくさん繋げて料理を出す様子がアレックスは気に入ったらしく、伸也に質問したリ写真に撮ったりしている。
ノッコが恵里ちゃんたちを手伝おうとすると、「ノッコは今日は座ってなさい。着物が汚れたらお母さんに蹴られるから。」と言ってくれたので、アレックスと伯父ちゃんやおばあちゃんが話しているのを通訳していた。
「しかし泉さんはお前たちに早くから英語を習わせてたけど、こんな状況になることを予期してたのかねぇ。俺も少しは英語をやっとけばよかったよ。うちで話せるのは洋子ぐらいか?」
「そうだね。あの子は大学に行ったから…。あんたたち2人はあの頃スポーツに夢中でねぇ。ちっとも勉強をしなかった。」
やっぱり放射線技師の洋子おばさんは、少しは英語ができるようだ。
伯父さんとうちのお父さんは工業高校出身だから、腕に技術はあるけれど英語を話している所なんて見たことない。
アレックスが「オバアチャン、重夫伯父さんや修オトウサンは、何のスポーツをやっていたんですか?」と聞くので…仕方がなくノッコもそれを翻訳した。
伯父さんにスキーを語らせると長いんだよねー。
「俺たちはねぇ、スキーをやっていたんだよ。ドイツに日本代表の合宿で行った時にさぁ、そう言えばイギリスの代表団の合宿所が近くて練習が一緒になった時もあったなぁ。スキー用語はドイツ語だからドイツ人とは話が出来るんだけど、英語は何言ってるんだかさっぱりわからなかったよ。」
出た出た伯父さんの十八番『俺は英語は話せないけどドイツ語は話せるんだ』
ところがスキーと聞いてアレックスが急に張り切りだした。
「うちの父もスキーをやるんです。レオポルド・サマーって聞いたことないですか?」
するとそれを聞いた伯父さんがあんぐりと口を開けた。
「おいおい、修っ、修ちょっとここへ来い。お前、こいつが大回転のレオ・サマーの息子だって知ってたのか?!」
うちのお父さんも慌ててやって来た。
「知らんよー、貴族様だって聞いたからスキーのレオ・サマーだなんて気づくかよっ!」
…なんとお父さんと伯父さんはアレックスのお父さんに会ったことがあるらしい。
世の中は狭いね。
アルのお父さんには当時誰も勝てなかったそうだ。
唯一、1度だけ勝てたのがジャック・デボンという人だそうだが、アルによるとこの人がエミリーさんの義理の父になる予定のデボン公爵ということだ。
何という事でしょう…だね。
おばあちゃんちの宴会では定番の恵里ちゃんと悦子おばちゃんの持ちネタ話を聞きながら、ノッコとアルさんの話も魚にされつつお正月の夜は更けていく。
ノッコが恵里ちゃん達の話をアルさんに話して聞かせると、アルさんは大いにウケて、「彼女たちは、漫才師なのかい?」と聞くので、その言葉に皆がまたどっと沸いた。
アルさんはこんなに可笑しな親族と縁組してもいいのかしら?
お上品な貴族とは正反対の親族なんだけど…。
お父さんは、スキーの事でぐっとアルさんに親近感が湧いたようだ。
そのことだけでも良かったかもしれない。
「私、ノッコの悩んでたことがやっとわかったわ。」
お母さん、今更なんですけど…。
でも貴族の社交の様子を実際に映像で見ると、自分たちの想像以上だった事がわかるんだよね。
日本に住んでる一般人には貴族の世界の事なんかわからないもの。
それも狭い我が家に馴染んでいるアレックスを見ているとこういう生活は想像できないよね。
ノッコも皇居で写真を見た時には出来なかった質問をアルにした。
「どうして誕生パーティーにこんなにたくさんの人がいるの?」
「僕たちの誕生パーティーは特殊なんだ。僕は将来的に伯爵家を継ぐ人間だからね。サマー子爵領だけでなくてストランド伯爵領からも要人が出席するし、近隣の付き合いのある貴族や名を売りたい有名人も出席したがる。まぁ、有名人なんかは極力母様が排除して知り合いの人を優先して招待してるけどね。それにエム。妹本人はのんびりしてるから気づいてなかっただろうけれど、エムは将来の公爵夫人だとみんなが考えてたんだ。公爵の嫡子になるロベルトは幼馴染で、エムと小さい頃からずっと仲が良かったから、たぶん2人は結婚するんじゃないかとずっと周りの人間に思われてきたんだ。貴族たちの中ではそれが常識で本人たちの気持ちより噂の方が先行してたぐらいさ。だから招待されて断る貴族はまずいないよ。将来の公爵夫婦と馴染みになりたい人は多いからね。」
「ふぅーん、なるほどー。馴染みになっても本人たちに嫌われてたらかえってマイナス要因だと思うけど、中身がない人はそこまで考えないか…。」
ノッコがボソッと正直な感想を言うと、アルが笑い出した。
「だから僕はノッコが好きさ。そこまでハッキリと言う人は貴族にはいないよ。いや、家族うちではたまに言うけどね。」
「僕はなんでイギリス国王やクロード・ベネットが写真に写っているのかが知りたいよ。まさかノッコの結婚式にこの人たちも来るなんて言わないよな。」
伸也はこの2人に会うのが心配なのか嬉しいのかわからないような顔をしてアルさんに聞いている。
「ああ、その2人はエムの関係者だから僕たちの結婚式には来ないよ。」
その言葉に伸也よりお父さんたちの方が安心していた。
私も心底ホッとした。
「ただ、M2は来るかも。僕の結婚式では歌いたいと言われてるんだ。」
「マジッ?!!」
あら、伸也はこの人のこと知ってるんだ。
うちの両親は知らなかったし、ノッコもアルさんにその事を言われた時にM2のことを初めて知った。
曲は最近よく聞くので知っていたが新人歌手なので名前までは知らなかったのだ。
M2はエミリーさんの幼馴染らしく、アルとも小さい頃から知り合いらしい。
本当は内緒だから他の人には言わないでね、実はこの子がM2なんだよとお嬢様のような写真を見せられても、以前見せてくれたCDジャケットの姿とは全然違うのでわからなかった。
M2は顔半分を仮面で隠していて、素性を秘密にしていることで有名なんだそうだ。
そして、服装が…露出の多い男の人受けする感じなのだ。
「ちょっとかすれた色っぽい声がいいんだよなぁ。へー、普段はこんなにお嬢様な感じなんだー。萌えるなぁ。」
伸也が食い入るように写真を見ていたので、アルさんが重ねて「内緒だからね、身内しか知らない秘密なんだ。本当に、本人の身内も知らないんだよ。」と言っていた。
本人の家族が知らないなんて、そんなことが出来るのだろうか?
◇◇◇
次の日おばあちゃんの家に着て行くために、ノッコは自宅の向かいにある美容室で振袖を着せてもらった。
背が高すぎてノッコが着ることが出来る貸衣装がなかったので、成人式用に作ってもらった着物だ。
あまり着ないのにもったいないなぁと思っていたのだが、今となっては作ってもらっていて良かったかもしれない。
イギリスでの結婚式で着ることが出来そうだ。
ノッコの着物姿を見たアルは、一瞬言葉を失っていた。
「凄いよ! ゴージャスだ。うわー、ノッコにこんな一面があるなんて思わなかったよ。」
しかし褒め始めると止まらない。
伸也が「よかったな。ここまで手放しで褒めてくれる男が見つかって。僕らのツレだったら恥ずかしくてこんなこと言わないよ。」とぼそっと言ったけど、確かにそうだ。
日本人だったら絶対こういう褒め方はしないよね。
でも、ノッコは小さい頃から背が高すぎてコンプレックスがあったので自分に自信が持てなかった。
だからアルさんの手放しの称賛は、その場では恥ずかしくて見悶えするけれど、じんわりとノッコの中に染み込んで自分に自信を取り戻してくれる気がする。
誰かに心から認めてもらうって大切な事なんだな。
みんなで一緒におばあちゃんちに行くと、親族全員が押し合いへし合いして玄関に出て来てくれた。
「いらっしゃい。よー来たねー。入られー入られー。ノッコ、この度はおめでとう。良かったねぇ。」
おばあちゃんが代表して挨拶をしてくれる。
どこかで見た光景だ。
血の繋がりって怖いものがあるな。
ノッコとアルさんが並ぶと迫力があるらしく、従妹の恵里ちゃんの子ども達が「スゲースゲー、おっきいー。」と言いながら私達の周りを駆け回る。
きみたちねぇ…私とアルさんは大型戦隊ロボじゃないんだからね。
ここの男の子2人は、恐竜とか巨大ロボットとか、とにかく大きいものが好きなので、アレックスのことを気に入ってまとわりつくばかりしている。
アルさんも一緒になって遊んでやっているので、子どもって言葉が通じなくても何とかなるもんなんだなと感心する。
おばあちゃんと悦子おばちゃんはノッコの着物を褒めてくれた。
「ノッコは背が高いから柄行が全部見えて映えるねぇ。」
「本当に。ノッコちゃんはこういう派手な柄が似合うわ。地の色を赤にしたのも今から考えたらよかったじゃなの、ねぇ泉さん。」
おばちゃんに言われてうちのお母さんも「義姉さんは先見の明があるわ。」と言っている。
実はノッコの着物を作る時に、うちのお母さんが悦子おばちゃんに頼んで一緒について行ってもらったのだ。
ノッコとお母さんは着物の事がさっぱりわからないので、お茶の先生をしていた伯父さんの奥さんである悦子おばちゃんを頼ることにしたのだけど…。
私達は、おばちゃんの娘である恵里ちゃんに選んだような青い地に白い葉や黄色の小花の柄が付いているようなスッキリとした着物を選んでくれると思っていた。
ところがおばちゃんが選んだ着物は、全く予想外だった。
赤い地色に牡丹や芍薬の柄が入ったキンキラ金のド派手な着物をおばちゃんが強く勧めるので、正直その時は困った。
大きな身体でこんな目立つ着物を着たら、小さくなって隠れることも出来ない。
悩んでいるノッコに、悦子おばちゃんと着物売り場の人が二人して、「背の高さを生かして小柄な人が着ることのできない着物にするべきだ。」と強く主張するので、その押しに負けた形で買ってしまった着物だった。
今ならあのイギリスの豪奢な雰囲気に負けないこの派手な着物で良かったと思える。
正直、ノッコが買おうと思っていた黒地の地味な着物にしなくてよかった。
おばちゃんは先見の明があるよ、本当に。
座敷に長い座卓をたくさん繋げて料理を出す様子がアレックスは気に入ったらしく、伸也に質問したリ写真に撮ったりしている。
ノッコが恵里ちゃんたちを手伝おうとすると、「ノッコは今日は座ってなさい。着物が汚れたらお母さんに蹴られるから。」と言ってくれたので、アレックスと伯父ちゃんやおばあちゃんが話しているのを通訳していた。
「しかし泉さんはお前たちに早くから英語を習わせてたけど、こんな状況になることを予期してたのかねぇ。俺も少しは英語をやっとけばよかったよ。うちで話せるのは洋子ぐらいか?」
「そうだね。あの子は大学に行ったから…。あんたたち2人はあの頃スポーツに夢中でねぇ。ちっとも勉強をしなかった。」
やっぱり放射線技師の洋子おばさんは、少しは英語ができるようだ。
伯父さんとうちのお父さんは工業高校出身だから、腕に技術はあるけれど英語を話している所なんて見たことない。
アレックスが「オバアチャン、重夫伯父さんや修オトウサンは、何のスポーツをやっていたんですか?」と聞くので…仕方がなくノッコもそれを翻訳した。
伯父さんにスキーを語らせると長いんだよねー。
「俺たちはねぇ、スキーをやっていたんだよ。ドイツに日本代表の合宿で行った時にさぁ、そう言えばイギリスの代表団の合宿所が近くて練習が一緒になった時もあったなぁ。スキー用語はドイツ語だからドイツ人とは話が出来るんだけど、英語は何言ってるんだかさっぱりわからなかったよ。」
出た出た伯父さんの十八番『俺は英語は話せないけどドイツ語は話せるんだ』
ところがスキーと聞いてアレックスが急に張り切りだした。
「うちの父もスキーをやるんです。レオポルド・サマーって聞いたことないですか?」
するとそれを聞いた伯父さんがあんぐりと口を開けた。
「おいおい、修っ、修ちょっとここへ来い。お前、こいつが大回転のレオ・サマーの息子だって知ってたのか?!」
うちのお父さんも慌ててやって来た。
「知らんよー、貴族様だって聞いたからスキーのレオ・サマーだなんて気づくかよっ!」
…なんとお父さんと伯父さんはアレックスのお父さんに会ったことがあるらしい。
世の中は狭いね。
アルのお父さんには当時誰も勝てなかったそうだ。
唯一、1度だけ勝てたのがジャック・デボンという人だそうだが、アルによるとこの人がエミリーさんの義理の父になる予定のデボン公爵ということだ。
何という事でしょう…だね。
おばあちゃんちの宴会では定番の恵里ちゃんと悦子おばちゃんの持ちネタ話を聞きながら、ノッコとアルさんの話も魚にされつつお正月の夜は更けていく。
ノッコが恵里ちゃん達の話をアルさんに話して聞かせると、アルさんは大いにウケて、「彼女たちは、漫才師なのかい?」と聞くので、その言葉に皆がまたどっと沸いた。
アルさんはこんなに可笑しな親族と縁組してもいいのかしら?
お上品な貴族とは正反対の親族なんだけど…。
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