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第一章 出会い
カールの結婚式
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『今日は都合により お休みします』
そんな張り紙がしてあるドアを開けて店の中に入ると、そこにはアン叔母さんと母方のおばあちゃんが座っていた。
「セリカっ! びっくりしたよ。結婚したんだって?!」
「ごめんね、おばあちゃん。急な事だったの。この人が主人のダニエルよ。ダニエル、こちらは母方のおばあちゃんになるの。そして、この人がお世話になっていた森の家のアン叔母さん。」
「こんにちは。挨拶も出来ずに申し訳ありません。ダニエル・ラザフォードと申します。よろしくお願いします。」
おばあちゃんはダニエルが貴族だと聞いていたのだろう、少し引き気味にお辞儀をしていた。
アン叔母さんの方は、興味津々にダニエルのことを見ていた。
ダニエルがフロイド先生の奥さんのことをアン叔母さんと話し始めたので、セリカは店の奥に入っていって宴会部屋を覗いてみた。
「セリカ…来てくれたのね。」
そこにはウェイティングドレスを着たベッツィーが椅子に座っていた。
「まぁ…ベッツィー、綺麗よ。」
日に焼けた肌のベッツィーに似合うように、薄クリーム色で仕立てられたウェイティングドレスは、ベッツィーの人柄を引き立てるような優しいデザインで作られていた。
「これ、レイチェルの店のドレス?」
「そうなの。これを仕立てる時にセリカの話をたくさん2人でしたのよ。」
「うわっ、何を話されたんだか…。」
「ふふ、セリカは昔からやんちゃだったのね。」
「…小さい頃はハリーたちと遊ぶことが多かったから。」
ベッツィーと話していると、次々に参列者が部屋に入って来た。
みんな近所の人や親族ばかりなので話が弾む。
アン叔母さんがダニエルを連れてきてくれたので、セリカは2人で窓際の座布団に座った。
「この部屋は、本来こうして使うんだな。」
「そうなんです。大勢が集まる時にくつろげるでしょ。」
「うちの屋敷にもこんな部屋が欲しいな。」
ダニエルは本当にこの板間敷きの部屋が気に入っているようだ。
カールが蝶ネクタイをつけて部屋の中に入って来た時には、皆がやんやの喝采で迎え入れた。
「今夜は頑張れよー!」
「おめでとう!」
「嫁さんを大事にしろよー!」
みんな好き放題の声をかけている。
セリカが「おめでとう!」と言うと、カールが照れ臭そうに頷いてくれた。
最後に父さんと母さんが部屋に入って来て2人の側に行くと、カールとベッツィーは立ち上がってファジャンシル王国の結婚の誓いを皆に向かって暗唱した。
縁あっての出会いを大切にして、夫婦2人でこれから頑張って行きます。
私は妻を大切にし、
私は夫に協力し、
力を合わせて幸せな家庭を築いていきます。
これからもよろしくお願いします。
温かい拍手の中で、カールとベッツィーの結婚は皆に了承された。
セリカの胸の中に小さな頃からのカールとの思い出が次々と湧き上がって来た。
かけっこでセリカに勝てなくて悔しそうな顔をした時
木登りが出来るようになって笑ったドヤ顔
父さんに叱られて泣いていた土間の隅
生まれた時からずっと一緒だった弟。
そして一緒に働くようになってからはよき相棒だった。
男の顔をしてベッツィーを見つめているカールに、セリカは心からの拍手を送ったのだった。
◇◇◇
宴会に移る段階になって、セリカは立ち上がって厨房に駆け付けた。
「まぁ、セリカ。お前は貴族の奥様なんだから、こんなところに入って来るんじゃないよ。」
母さんにそう言われたが、セリカはベッツィーのエプロンを取り出して服の上につけた。
「母さん、最後にこの料理を運びたいの。これからはできないから手伝わせて。」
慣れた手つきで大量の料理を運んできたセリカを、皆は笑って受け入れてくれた。
「セリカ…俺…。」
「いいよ、ハリー。わかってる。」
ハリーの好きなものをテーブルにおいて、メグおばさんやトマスにも笑いかける。
「今日は、来てくれてありがとう。」
「セリカの給仕もこれで最後だねぇ。王都に行っても元気でね。」
「ありがとう。おばさんたちも元気でね。カールとベッツィーをよろしくね。」
「ああ、こっちのことは心配しなくていいよ。父さんたちのことも皆で気を付けるからね。」
「ふふ、頼みます。」
ここに来られて良かった。
― そうね。
気持ちの区切りがついたわね。
セリカがピザとエールを持ってダニエルのもとに返って来ると、ダニエルは待ってましたとピザの皿を受け取ってくれた。
隣に座っている親戚のおじさんたちと乾杯をしているダニエルを見ていると、最初にこの部屋で2人で話した時のことが嘘のような感じがする。
今日は貴族の威厳を捨ててくれてるね。
― この人は意外と平民の間でもやっていけそう。
平民として育った幼少期、急に高位貴族としてあつかわれるようになった成長期。
ダニエルの中にはいろんな顔が隠れているような気がする。
今日からダニエルと始まる結婚生活。
カールではないけれど、セリカも新しい一歩を踏み出そうとしていた。
そんな張り紙がしてあるドアを開けて店の中に入ると、そこにはアン叔母さんと母方のおばあちゃんが座っていた。
「セリカっ! びっくりしたよ。結婚したんだって?!」
「ごめんね、おばあちゃん。急な事だったの。この人が主人のダニエルよ。ダニエル、こちらは母方のおばあちゃんになるの。そして、この人がお世話になっていた森の家のアン叔母さん。」
「こんにちは。挨拶も出来ずに申し訳ありません。ダニエル・ラザフォードと申します。よろしくお願いします。」
おばあちゃんはダニエルが貴族だと聞いていたのだろう、少し引き気味にお辞儀をしていた。
アン叔母さんの方は、興味津々にダニエルのことを見ていた。
ダニエルがフロイド先生の奥さんのことをアン叔母さんと話し始めたので、セリカは店の奥に入っていって宴会部屋を覗いてみた。
「セリカ…来てくれたのね。」
そこにはウェイティングドレスを着たベッツィーが椅子に座っていた。
「まぁ…ベッツィー、綺麗よ。」
日に焼けた肌のベッツィーに似合うように、薄クリーム色で仕立てられたウェイティングドレスは、ベッツィーの人柄を引き立てるような優しいデザインで作られていた。
「これ、レイチェルの店のドレス?」
「そうなの。これを仕立てる時にセリカの話をたくさん2人でしたのよ。」
「うわっ、何を話されたんだか…。」
「ふふ、セリカは昔からやんちゃだったのね。」
「…小さい頃はハリーたちと遊ぶことが多かったから。」
ベッツィーと話していると、次々に参列者が部屋に入って来た。
みんな近所の人や親族ばかりなので話が弾む。
アン叔母さんがダニエルを連れてきてくれたので、セリカは2人で窓際の座布団に座った。
「この部屋は、本来こうして使うんだな。」
「そうなんです。大勢が集まる時にくつろげるでしょ。」
「うちの屋敷にもこんな部屋が欲しいな。」
ダニエルは本当にこの板間敷きの部屋が気に入っているようだ。
カールが蝶ネクタイをつけて部屋の中に入って来た時には、皆がやんやの喝采で迎え入れた。
「今夜は頑張れよー!」
「おめでとう!」
「嫁さんを大事にしろよー!」
みんな好き放題の声をかけている。
セリカが「おめでとう!」と言うと、カールが照れ臭そうに頷いてくれた。
最後に父さんと母さんが部屋に入って来て2人の側に行くと、カールとベッツィーは立ち上がってファジャンシル王国の結婚の誓いを皆に向かって暗唱した。
縁あっての出会いを大切にして、夫婦2人でこれから頑張って行きます。
私は妻を大切にし、
私は夫に協力し、
力を合わせて幸せな家庭を築いていきます。
これからもよろしくお願いします。
温かい拍手の中で、カールとベッツィーの結婚は皆に了承された。
セリカの胸の中に小さな頃からのカールとの思い出が次々と湧き上がって来た。
かけっこでセリカに勝てなくて悔しそうな顔をした時
木登りが出来るようになって笑ったドヤ顔
父さんに叱られて泣いていた土間の隅
生まれた時からずっと一緒だった弟。
そして一緒に働くようになってからはよき相棒だった。
男の顔をしてベッツィーを見つめているカールに、セリカは心からの拍手を送ったのだった。
◇◇◇
宴会に移る段階になって、セリカは立ち上がって厨房に駆け付けた。
「まぁ、セリカ。お前は貴族の奥様なんだから、こんなところに入って来るんじゃないよ。」
母さんにそう言われたが、セリカはベッツィーのエプロンを取り出して服の上につけた。
「母さん、最後にこの料理を運びたいの。これからはできないから手伝わせて。」
慣れた手つきで大量の料理を運んできたセリカを、皆は笑って受け入れてくれた。
「セリカ…俺…。」
「いいよ、ハリー。わかってる。」
ハリーの好きなものをテーブルにおいて、メグおばさんやトマスにも笑いかける。
「今日は、来てくれてありがとう。」
「セリカの給仕もこれで最後だねぇ。王都に行っても元気でね。」
「ありがとう。おばさんたちも元気でね。カールとベッツィーをよろしくね。」
「ああ、こっちのことは心配しなくていいよ。父さんたちのことも皆で気を付けるからね。」
「ふふ、頼みます。」
ここに来られて良かった。
― そうね。
気持ちの区切りがついたわね。
セリカがピザとエールを持ってダニエルのもとに返って来ると、ダニエルは待ってましたとピザの皿を受け取ってくれた。
隣に座っている親戚のおじさんたちと乾杯をしているダニエルを見ていると、最初にこの部屋で2人で話した時のことが嘘のような感じがする。
今日は貴族の威厳を捨ててくれてるね。
― この人は意外と平民の間でもやっていけそう。
平民として育った幼少期、急に高位貴族としてあつかわれるようになった成長期。
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