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僕のクラスのさえずりくん

第6話/僕のさえずりくん

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人気の無い路まで来ると、さえずりくんを勢い良く壁に追いやった。
逃げれない様に、僕は腕を壁に充て〝逃げ道〟を塞ぐ。
少し怯えているさえずりくんの顔に近付くと

「今の何?!!」

声を荒げた。

「くすのー」
「なんでお金貰ってるの?!なんでキスしてたの?!!」

僕はコツンとさえずりくんの額に自分の額を擦り合わせた。

「水稀くんは…お金を貰うと…しちゃう子なの?…違うよね?」

僕の声は震えていた。

「…そうだよって言ったら、樟くんはどうするの?」

真っ直ぐ見つめてくるさえずりくんに僕は

「じゃあ!僕も払うよ!!」

ポケットから財布を取り出し、有り金を全部さえずりくんの胸元に押し付けた。

「樟くん」

僕の目から温かみのある雫が落ちた。
どうやら僕は、感情の操縦が出来ずに涙を零してしまったみたいだ。

さえずりくんが僕を抱き締める

「嘘に決まってるじゃん…」

さえずりくんは、僕の頬に甘える様に頭を擦り寄らせ囁く

「一体、俺をなんだと思ってるのさ?」

聞き覚えのあるセリフに僕は、バツが悪そうな目で、さえずりくんを見つめた

「仕返し」

そう言いながら、さえずりくんは悪戯っ子の様に笑うと舌を出した。

舌にはルビーの石が付いたピアスが見える。

「水稀くん」
「な、ン」

僕は引き寄せられるように、さえずりくんの唇に自分の唇を重ね合わせていた。

軽く触れただけのキス

驚いて目をパチクリとさせている、さえずりくんの瞳に自分を映す

ひと呼吸の後

「好きだよ」

人生で初めての告白だというのに、された本人が微動だにしない。
僕は、さえずりくんの頬を優しく撫でると微笑んだ。

「あの日から、僕は〝水稀 椹みずき さわら〟という人物と一緒に過ごして、ちゃんと考えて出した答えだから」

さえずりくんは動かない。

「僕と、僕と付き合ってくれますか?」

さえずりくんの目には涙が滲んでいた。

「ん、ん…付き合う、絶対、離さないんだからな」

涙を手荒く拭うと何度も頷き、僕の服裾を掴む。

「僕のセリフかなぁ…それは」


ー僕のクラスのさえずりくんは、見た目を裏切るだったけど、いつの間にか僕の大切な大切な愛おしい人へとなっていました。


これから先、色々な事が待ち受けていても、一緒に乗り越えて行けると僕は思っている。


「ところで、さっきの誰?なんでホテルにいたの?!」

手を繋いで帰る、帰り道
僕は、ずっと気になっていた事を食い気味で問い掛ける

「一緒にいたのは、俺の兄貴で…ホテルは、親父のだから」

さえずりくんが笑いながら僕に答えてくれた。

僕は安堵の溜息を漏らすと、繋いだ手を強く握り直した。






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