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オープン

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 今日も帰りが遅くなりそうだ…。今朝は5時に出勤したっけ?もう、毎日の事すぎて今が何日なのかわからないや。帰るのはいつも1時過ぎだしさ。家が職場から10分以内なのが幸いか。仕事内容も、かなりハードだけど、たまに良い事があるから辞められないぜ。




 高校を卒業し、すぐに入社した〇〇カフェ。カフェの仕事はオシャレだと思い、10代ならではの発想で、安易に入社してしまったのだ。もう入社して3年が経ち、現在はこの店の店長にまで出世した。

 店の事は完璧にこなせる様になるまでは長かったが、まだ20代に成り立てである。周りの知り合いに比べると、大出世をしたのだが、ここまで来るのには、かなりの苦労があったのだ。


 今日も、仕事開始は5時からだ。
 開店時間は6時なので、この1時間で、支度をしなければならない。店長になるまでは、4時には出勤をしていたが、今となれば1時間あれば余裕である。

 
 朝、来てからやる事は、まずは機械に電源を入れ、温めておき、コーヒー豆を粉にする所からだ。平日でも、朝から行列の出来る店だから、量はこれでもかってぐらいに多くて良い。
 
 この時点で15分を使う。

 次にやる事は食材の仕込みだ。朝は食パンを凄く使うから、出来る限り切っておく事が重要である。バターやジャム、あんこなどの準備は出来る限りあった方が良い。更に言えば、朝からパフェが食べたいと言う人もいるので、フルーツのカットを少しだけしておくのも重要だ。この時に、マシーンにソフトクリームの原液が入っているかに気づくのはいつもの事だ。大体は入っていない事が多いが、30分あれば作れるので、問題はない。


 ここで時計を見ると5時40分。


 さて、仕上げといこう。この時間になれば、お湯を沸かし、食パンを焼き始める。
 食パンが焼けるのには10分程かかるから、この時間からで良い。数枚ダメになってしまっても問題がないのは入社してから直ぐに気づいた。

 この作業をしている時が唯一の休憩時間であり、キッチンでこの後に行われる戦闘に備えるのだ。


 5時55分。

 
 店内の床をサーーーっとモップをかける。


 5時59分。


 戸の鍵を開けて、客を迎える。



「おはようございます。お待たせしました。只今からオープン致します。いらっしゃいませ。」

「長かったわ。1時間ぐらい待たせてもらったわ。いつも早い時間にありがとうね」
 
 
 あぁ、良いな。「ありがとう」この言葉と客の笑顔を、見れるのがこの仕事の良い所だ。だから辞められない。


 さっ、今日も戦闘を開始しますか。
 
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