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勇気が欲しいです。
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ありがとうございます。っと素直に言えればどれだけこの気持ちが楽になるだろうか。いつもなんだかんだで、恥ずかしくなり逃げてしまう自分が恥ずかしい…
「お母さん。行ってきます」
「車に気をつけるのよ」
朝の6時00分。いつもは7時に出るのだが、毎週水曜日には通学路の河川敷であの人に会えるからである。
あの人とは、同じ学校の2つ上の先輩。水曜日には生徒会の仕事でこの時間帯に学校に行っている。会長に少しでも近付きたく、私はこの時間にわざと登校している。
「やぁ。おはよう。今日も早いんだね」
「え……」
今日も走って逃げてしまった。一見、怪しい関係に見えるが、会長とは中学も一緒である事がきっかけで知り合ったのである。
☆
中学の全校集会の時。この日も校長先生のよくわからない長い話が続いていた。身長の高い私は、列の後ろの方に並んでいる。体育館のもあっとする熱気に私は目の前がクラクラしていて、保健室に行こうと体育館を出た。
ゆっくりと歩いて向かうと、階段を慌てて降りて来る人がいた。それが会長との出会いである。
当時も生徒会長をしていたのだが、会長らしくなく結構不真面目であった。今日の様な集会があると、会長は挨拶があるのだが、いつも副生徒会長がやっている。誰もがサボりたくなる集会なのに、1番サボってはいけない人が毎回の様に、先生に叱られている姿を私はどことなく目にする事があった。
「ん?君、大丈夫か?具合悪いのか?」
「は…はぃ…。気分悪くなったので、保健室行く所なんです…」
「そうなんだ。まだ距離あるし、俺保健室まで付き添うわ。集会も今更行ってもだしな」
「えっ……。ありがとうございます…」
頭の中がグルグルと回っていたので、壁つたいに歩いていた私の手を会長は躊躇なく取ったのだ。
「まだ歩けるか?」
「ぅ"………」
「大丈夫か⁉︎」
気持ち悪くなり、蹲ってしまった。そして遂には嘔吐をしてしまったのだ。最悪であった。先輩の服にも私の吐いた物が付いているのが、ぼんやりとする目の中に入っていた。
それから5分程だろうか。吐き気は止まったのだが、動けなくなっていた私を先輩はお姫様抱っこをし、保健室まで運んでくれたのだ。
「先生いるー?ちょっとこの子休ませてくれない?後、服も汚れているから、なんか貸してあげてくんないか」
「あら大変。取り敢えず、そこのベッドに降ろして。」
「じゃあ俺戻るわ」
私を降すとそのまま会長は部屋から出て行った。先生が私を着替えさせて、休ませてくれたのは、起きてから知った事だ。
教室に戻る途中の廊下には私の嘔吐した場所があるが、綺麗に片付けてあった。多分、会長がやったのだろう。
会長は不真面目なのに、人助けには全力で行う。これが会長を続けられ、みんなに信頼される証でもあるのだ。まぁ副生徒会長がしっかりとフォローをしているおかげでもある。
「鮎美、大丈夫だった⁉︎中々戻って来なくて、心配したよ」
「ありがとう。もう大丈夫だよ。この暑さだからさ」
3時間目の終わりに教室に戻った。友達が心配してくれたが、私の頭の中では、会長はあの汚れた服をどうしたのかを考えていた。だが、1年と3年では、生活をする棟が違う事から中々関わる機会がないのだ。
そんな事を考えていたらこの日の、授業もあっという間に終わった。会長にお礼を言いたかったのだが、この日は会えなかった。
☆
それから会長と話をする機会はなく、私は同じ高校に入学した事をきっかけに、あの時のお礼を言う決意をしたのだ。
だが、人見知りな性格のせいで、勇気が出ず更には、会長を目の前にすると、緊張して逃げ出してしまうのだった。
このままではいつになっても、お礼が言えずまた距離が離れてしまう。それを脱出すべく、私は会長が生徒会の人だと知り、会長の事を調べた末に、毎週水曜日の登校時間を知ったのだ。
それからわざとらしく、会長と出会い登校するのだが、いつも走って逃げてしまう。
でも、今朝は大丈夫だった。それは今朝、会長の発した言葉のおかげだった。
「おはよう。今日、体調良さそうだね。また倒れない様にね」
「………お、おはよう…あ、あの、か、会長…。中学の時、服汚しちゃってすみませんでした‼︎あの時はありがとうございました‼︎」
ついに念願の言葉が言えた。
頭を下げながらお礼を言い、顔を上げた時の会長は、ニカっと笑顔を見せ、一言「おうっ」と言ったのだった。
「お母さん。行ってきます」
「車に気をつけるのよ」
朝の6時00分。いつもは7時に出るのだが、毎週水曜日には通学路の河川敷であの人に会えるからである。
あの人とは、同じ学校の2つ上の先輩。水曜日には生徒会の仕事でこの時間帯に学校に行っている。会長に少しでも近付きたく、私はこの時間にわざと登校している。
「やぁ。おはよう。今日も早いんだね」
「え……」
今日も走って逃げてしまった。一見、怪しい関係に見えるが、会長とは中学も一緒である事がきっかけで知り合ったのである。
☆
中学の全校集会の時。この日も校長先生のよくわからない長い話が続いていた。身長の高い私は、列の後ろの方に並んでいる。体育館のもあっとする熱気に私は目の前がクラクラしていて、保健室に行こうと体育館を出た。
ゆっくりと歩いて向かうと、階段を慌てて降りて来る人がいた。それが会長との出会いである。
当時も生徒会長をしていたのだが、会長らしくなく結構不真面目であった。今日の様な集会があると、会長は挨拶があるのだが、いつも副生徒会長がやっている。誰もがサボりたくなる集会なのに、1番サボってはいけない人が毎回の様に、先生に叱られている姿を私はどことなく目にする事があった。
「ん?君、大丈夫か?具合悪いのか?」
「は…はぃ…。気分悪くなったので、保健室行く所なんです…」
「そうなんだ。まだ距離あるし、俺保健室まで付き添うわ。集会も今更行ってもだしな」
「えっ……。ありがとうございます…」
頭の中がグルグルと回っていたので、壁つたいに歩いていた私の手を会長は躊躇なく取ったのだ。
「まだ歩けるか?」
「ぅ"………」
「大丈夫か⁉︎」
気持ち悪くなり、蹲ってしまった。そして遂には嘔吐をしてしまったのだ。最悪であった。先輩の服にも私の吐いた物が付いているのが、ぼんやりとする目の中に入っていた。
それから5分程だろうか。吐き気は止まったのだが、動けなくなっていた私を先輩はお姫様抱っこをし、保健室まで運んでくれたのだ。
「先生いるー?ちょっとこの子休ませてくれない?後、服も汚れているから、なんか貸してあげてくんないか」
「あら大変。取り敢えず、そこのベッドに降ろして。」
「じゃあ俺戻るわ」
私を降すとそのまま会長は部屋から出て行った。先生が私を着替えさせて、休ませてくれたのは、起きてから知った事だ。
教室に戻る途中の廊下には私の嘔吐した場所があるが、綺麗に片付けてあった。多分、会長がやったのだろう。
会長は不真面目なのに、人助けには全力で行う。これが会長を続けられ、みんなに信頼される証でもあるのだ。まぁ副生徒会長がしっかりとフォローをしているおかげでもある。
「鮎美、大丈夫だった⁉︎中々戻って来なくて、心配したよ」
「ありがとう。もう大丈夫だよ。この暑さだからさ」
3時間目の終わりに教室に戻った。友達が心配してくれたが、私の頭の中では、会長はあの汚れた服をどうしたのかを考えていた。だが、1年と3年では、生活をする棟が違う事から中々関わる機会がないのだ。
そんな事を考えていたらこの日の、授業もあっという間に終わった。会長にお礼を言いたかったのだが、この日は会えなかった。
☆
それから会長と話をする機会はなく、私は同じ高校に入学した事をきっかけに、あの時のお礼を言う決意をしたのだ。
だが、人見知りな性格のせいで、勇気が出ず更には、会長を目の前にすると、緊張して逃げ出してしまうのだった。
このままではいつになっても、お礼が言えずまた距離が離れてしまう。それを脱出すべく、私は会長が生徒会の人だと知り、会長の事を調べた末に、毎週水曜日の登校時間を知ったのだ。
それからわざとらしく、会長と出会い登校するのだが、いつも走って逃げてしまう。
でも、今朝は大丈夫だった。それは今朝、会長の発した言葉のおかげだった。
「おはよう。今日、体調良さそうだね。また倒れない様にね」
「………お、おはよう…あ、あの、か、会長…。中学の時、服汚しちゃってすみませんでした‼︎あの時はありがとうございました‼︎」
ついに念願の言葉が言えた。
頭を下げながらお礼を言い、顔を上げた時の会長は、ニカっと笑顔を見せ、一言「おうっ」と言ったのだった。
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可愛い❤️💘❣️
こういう可愛いショートショートは、思春期のみずみずしい感覚に立ち返らせてくれる気がします🎵
いやぁ、私も随分大人になった……を、通りすぎていたか、ハハハ_(^^;)ゞ
開眼したような気分‼️
有り難うございます\(^^)/