マルチ商法女と戦っていたら、もっととんでもないものと戦うことになってしまった件

青山済

文字の大きさ
19 / 62
第三章 サークル構成員吊し上げ作戦

第十八話 プロローグを思い出せ

しおりを挟む
市村のLINEプロフィールを見た済の頭の中を、様々な情報がフラッシュバックした。

LINEの「自分が源☆」、メッセージで使われる古い顔文字、秋葉原のベローチェで聞いた「自己投資」、「夢の実現にかかる資金」、「経営の勉強」、「師匠」……。全ての情報がサークルに繋がっていた。

タケシの場合は後になって相手がサークルと気づいたが、今回はほぼリアルタイムで気づくことができた。もしも彼らを呼び出し、「お前ら、俺は気づいていたぞ、サークルに入っているんだろう?」とやったらどんな反応をするのだろうか。もしかしたら良いネタになり、音声をYouTubeにでもアップすればバズるかもしれない。ネット歴が長い済は、この先の展開にワクワクしてしまう。そのためには、彼らがサークルに所属しているという確実な情報が欲しかった。今はあまりにも情報が足りない。「お前らのことは調べさせてもらった。本名は○○だろう。」という風に相手を脅すことも考えると、個人情報を特定しつつ調査を進めたかった。こうして入里麻里奈に続く特定作戦、プロジェクト・オタク飲み会が始まったのである。

何か特定に繋がりそうな情報は……と二人に関する記憶を辿ると、ターリーの声が脳内に蘇ってきた。

「ヒューマンビートボックスの大会スタッフをやってるんですよ。」

今は何にでもウェブサイトを作る時代だ。イベントや大会についても、ホームページやスタッフブログに写真や名前が掲載されており、そこから情報を割り出せることがある。一度口論していることもあり、返信が来ない可能性もあったが、市村にLINEをしてみる。オタク飲み会で何度も顔を合わせていたにも関わらず、市村以外の主催からLINEの交換を求められたことはなかった。これも、他のメンバーのカモには手を出さないというサークルのルールによるものだろう。

「この間はありがとうございました!ところでターリーさんが参加されてたヒューマンビートボックスの大会って名前分かりますか?大きめの大会だったら凄いなと思って!」

少し持ち上げ風味の文章にしたところ、翌朝返事が来た。

「ターリーが参加してたのはZEROって大会ですよ^_^ 日本で一番大きい大会らしいです(^_^)v」
「なるほどありがとうございます、やっぱりターリーさん凄いですねー!!」

その日は平日だったため、会社から帰ってから「ZERO」について調査を始める。

「ヒューマンビートボックス ZERO」で検索したところ、すぐに大会のホームページが見つかった。確かに、日本最大のヒューマンビートボックス大会のようだ。参加者一覧は見つかったものの、残念ながらスタッフの情報は見当たらない。個人情報保護が厳しくなっている昨今である。おいそれと情報は出さないのだろう。ホームページをチェックするうち、ZEROが単独の大会ではなく、「ドリワン」という大会で行っているコンテストの一つであることが分かった。「ドリワン」というのは夢に向けて頑張っている人のNo.1を決めるコンテストで、Dコレクションという企業が主催している。様々なコンテストをまとめて1つのイベントとしており、ミスコンテストやミスターコンテスト、歌唱力コンテストからお笑いコンテストまでが含まれていた。ZEROはその中の1つであり、ヒューマンビートボックス界の実力者が集まること自体は確かなようだ。

済は、まともなイベントなのかもしれないと思いつつも、ホームページに掲載されていた動画を見ることにした。すると、そこには異様な光景が広がっていた。大して面白くもない漫才にオーバーな笑いを起こし、またそこまで格好良くは見えないミスターコンテスト参加者に激しい声援を送る、幕張メッセ一杯の観客……。まるでカルト教団の集会のようだった。一気に怪しさを感じ始めた済は、すぐにドリワンについて検索することにした。すると、表示された関連キーワードは次のようなものだった。


「ドリワン やらせ」
「ドリワン マルチ」
「ドリワン ニューステージ」
「ドリワン ドリームランド」

ニューブリッジの時と全く同じパターンである。ドリワンと旧ドリームランド=現サークルの関係について調べてみると、脱会者の情報をまとめたブログが見つかった。Twitterアカウント自体は削除されているものの、引用部分は記事として残っている。その記事を読んだところ、ドリワンが「ドリームランドナンバーワン」の略であること、ヒューマンビートボックスや歌唱力のコンテストは真面目なコンテストであるものの、ミスコンやミスターコンに関しては出場者のうちサークルの関係者がほとんどを占めていること、ドリームランドがサークルになってからも主催は変わらずサークルであることが分かった。このコンテストとサークルとの関係はほぼ確実だったものの、済はTwitterで脱会者から情報を集めることにした。情報収集用のアカウントにログインし、ドリワンのURLを記載したツイートを投稿する。

「知り合いがドリワンてイベントのZEROっていうコンテストのスタッフやってるみたいなんですが、これもサークル関係なんでしょうか?」

すると、しばらくして複数人からリプライが付いた。

「はいそうです。ドリームランド時代から主催してるイベントですね。」
「スタッフは勿論、観客も7割くらいは関係者ですよ。あとは騙されて連れてこられた一般人ですね。」
「8,000円って価格の割にレベル低いから、怒って帰る人もいました笑」

これでターリーがサークルの人間であることがほぼ確実になった。済は続いて、個人情報の特定に取り掛かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...