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第三章 サークル構成員吊し上げ作戦
第二十三話 済、オタク飲み会メンバーから貴重な証言を得る
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吉井を市村に紹介する日を待つ間、済はオタク飲み会の参加者に聞き込みを進めた。あの会が勧誘用なのであれば、他にも勧誘されている人物がいる可能性は高い。ただし、既にサークルに入会した人物に聞いてしまうとこちらの意図がバレてしまうため、常連ではない参加者に話を聞くことにした。
月曜日から毎日、一人ずつ聞き込みを進める。非常連ということもあり、四人目まではあまり収穫がなかった。強いて挙げるとすれば、サスケに食事に誘われたものの、オタクな話はせずに将来の夢の話ばかり聞かれて辟易したという証言があったくらいだ。これもサークルの典型パターンなので怪しいとは言えるが、もっと直接的な証拠が欲しい。そう思いながら五人目に声を掛けた時、事態は進展した。
五人目に聞き込みをしたのは女性コスプレイヤーのナナさん。文字で証拠が残ると、万が一後でサークルメンバーに見られると困るので、LINEで通話する。済はこれまでの経緯を簡潔に話し、本題に入った。
「……というわけで、オタク飲み会がサークルの勧誘の会なんじゃないかと疑ってるんですよね。メンバーに意識の高い話をされたり、師匠を紹介されたことはないですか?」
「ここまで聞いた内容に、知ってる名前が何度も出てきて驚いています。この前ターリーさんに食事に誘われたので行ってきたんですが、オタク飲み会で知り合った割にやたらと将来の話とか起業の話ばかりで違和感がありました。それでも何となく話を聞いていたら、今度は師匠に紹介するって言われて、秋葉原のベローチェで会うことになったんです。その師匠がこしじさんでした。何となく話を合わせただけで、やる気があまりないのが分かったのかその後は声を掛けてきてませんけどね。あ、それから私も無仁会に誘われたけど断りました。」
「ありがとうございます!ナナさんの証言は、ターリーがサークルに所属しているという動かぬ証拠となります。貴重な証言を頂けてとても助かります。僕は意識の高い話をされた時点で激怒してしまったので、師匠を紹介されなかったんだと思います笑」
ターリーについて確かな証言が得られた。サークルの師匠であるこしじを紹介してくるということは、彼はその弟子である。間違いなくサークルの会員だろう。これでまた吊し上げ会のネタが増えた。
このことを吉井にLINEで送り、明日はよろしくと伝える。吉井は「任しとけ!」と楽しそうだった。
◇
翌日、昼。市村とは秋葉原のラーメン屋で会うことになっていた。秋葉原の電気街口に出ると、吉井が待っていた。スマホゲームのキャラクターがプリントされた柱の前に立っている。吉井は学生の頃からぽっちゃり体型だが、ラグビー部に所属していたため運動神経は良い。いわゆる動けるぽっちゃりである。済に気づくと、「おっす」と声を上げた。近づくと、「ちょっとこれ」と、身をかがめて腕時計を見せてきた。一見普通の腕時計だが、見たことのないメーカーだ。ベースの色は黒く、デザインがG-SHOCKに似ているが、少し違和感がある。よくよく見ると小さな黒い穴が空いていた。
「何だこの穴は。あっ、もしかしてお前これ!」
「この時計、ここにカメラが付いてるんだぜ。しかも専業メーカーの日本製。さらにICレコーダーも買って鞄に入れてある。これで証拠もばっちりよ!」
時計の穴はカメラのレンズ穴だった。ネットではよく五千円前後の中国製が売られているが、吉井が着けているのは一ランク値段が上がる日本製だ。スパイ役をやって欲しいとお願いしたら、本当にスパイ道具を持ってきたらしい。録音・撮影した内容を吊し上げ会で市村に見せたら、さぞびっくりするだろう。期待を裏切らない男だ。
市村は相変わらず時間にルーズで、十分ほど遅れてやってきた。もしかしたらこの前にもカモと会っていたのかもしれない。ジーンズの上にポロシャツを着ているが、よく見るとベルトの上に腹の肉が乗っている。カモとの外食のし過ぎだろうか。
大学時代の同期で、大阪で化学メーカーの開発職をしている吉井です、と簡単に紹介を終えると、早速秋葉原UDXに向かう。ラーメン屋はUDXの二階に入っており、ハンバーグ屋や中華料理屋などと共同の、広いスペースに席が準備されている。フードコートに近い形態だ。席はかなり空いており、これなら録音も入るだろう。西向きの壁は全面ガラス張りで光がよく入り、昼過ぎの日差しが心地良かった。
ラーメンと白飯を注文すると、吉井はすぐトイレに消えていった。ICレコーダーとカメラの設定をするためだろう。その間に市村と雑談をする。
「ワタルさん、今日はありがとうございます。お友達を紹介してくれるそうで。」
「この前イッチーさんが経営の勉強してると聞きましてね。僕も色んなところに出入りしてるので、起業家志望の知り合い多いんですよ。イッチーさんの話をしたら、会ってみたい友人がいたのでこれから紹介していきますよ。」
「是非よろしくお願いします!」
これからもカモが供給されると思っているのだろう、市村の口元は緩みっぱなしだった。スパイを送り込まれるとも知らずに。
吉井はトイレから戻ってくると、市村の隣にバッグを置いた。恐らく中にICレコーダーが入っているのだろう。市村の向かいに済と吉井が座り、三者面談のような形で会話が始まった。
月曜日から毎日、一人ずつ聞き込みを進める。非常連ということもあり、四人目まではあまり収穫がなかった。強いて挙げるとすれば、サスケに食事に誘われたものの、オタクな話はせずに将来の夢の話ばかり聞かれて辟易したという証言があったくらいだ。これもサークルの典型パターンなので怪しいとは言えるが、もっと直接的な証拠が欲しい。そう思いながら五人目に声を掛けた時、事態は進展した。
五人目に聞き込みをしたのは女性コスプレイヤーのナナさん。文字で証拠が残ると、万が一後でサークルメンバーに見られると困るので、LINEで通話する。済はこれまでの経緯を簡潔に話し、本題に入った。
「……というわけで、オタク飲み会がサークルの勧誘の会なんじゃないかと疑ってるんですよね。メンバーに意識の高い話をされたり、師匠を紹介されたことはないですか?」
「ここまで聞いた内容に、知ってる名前が何度も出てきて驚いています。この前ターリーさんに食事に誘われたので行ってきたんですが、オタク飲み会で知り合った割にやたらと将来の話とか起業の話ばかりで違和感がありました。それでも何となく話を聞いていたら、今度は師匠に紹介するって言われて、秋葉原のベローチェで会うことになったんです。その師匠がこしじさんでした。何となく話を合わせただけで、やる気があまりないのが分かったのかその後は声を掛けてきてませんけどね。あ、それから私も無仁会に誘われたけど断りました。」
「ありがとうございます!ナナさんの証言は、ターリーがサークルに所属しているという動かぬ証拠となります。貴重な証言を頂けてとても助かります。僕は意識の高い話をされた時点で激怒してしまったので、師匠を紹介されなかったんだと思います笑」
ターリーについて確かな証言が得られた。サークルの師匠であるこしじを紹介してくるということは、彼はその弟子である。間違いなくサークルの会員だろう。これでまた吊し上げ会のネタが増えた。
このことを吉井にLINEで送り、明日はよろしくと伝える。吉井は「任しとけ!」と楽しそうだった。
◇
翌日、昼。市村とは秋葉原のラーメン屋で会うことになっていた。秋葉原の電気街口に出ると、吉井が待っていた。スマホゲームのキャラクターがプリントされた柱の前に立っている。吉井は学生の頃からぽっちゃり体型だが、ラグビー部に所属していたため運動神経は良い。いわゆる動けるぽっちゃりである。済に気づくと、「おっす」と声を上げた。近づくと、「ちょっとこれ」と、身をかがめて腕時計を見せてきた。一見普通の腕時計だが、見たことのないメーカーだ。ベースの色は黒く、デザインがG-SHOCKに似ているが、少し違和感がある。よくよく見ると小さな黒い穴が空いていた。
「何だこの穴は。あっ、もしかしてお前これ!」
「この時計、ここにカメラが付いてるんだぜ。しかも専業メーカーの日本製。さらにICレコーダーも買って鞄に入れてある。これで証拠もばっちりよ!」
時計の穴はカメラのレンズ穴だった。ネットではよく五千円前後の中国製が売られているが、吉井が着けているのは一ランク値段が上がる日本製だ。スパイ役をやって欲しいとお願いしたら、本当にスパイ道具を持ってきたらしい。録音・撮影した内容を吊し上げ会で市村に見せたら、さぞびっくりするだろう。期待を裏切らない男だ。
市村は相変わらず時間にルーズで、十分ほど遅れてやってきた。もしかしたらこの前にもカモと会っていたのかもしれない。ジーンズの上にポロシャツを着ているが、よく見るとベルトの上に腹の肉が乗っている。カモとの外食のし過ぎだろうか。
大学時代の同期で、大阪で化学メーカーの開発職をしている吉井です、と簡単に紹介を終えると、早速秋葉原UDXに向かう。ラーメン屋はUDXの二階に入っており、ハンバーグ屋や中華料理屋などと共同の、広いスペースに席が準備されている。フードコートに近い形態だ。席はかなり空いており、これなら録音も入るだろう。西向きの壁は全面ガラス張りで光がよく入り、昼過ぎの日差しが心地良かった。
ラーメンと白飯を注文すると、吉井はすぐトイレに消えていった。ICレコーダーとカメラの設定をするためだろう。その間に市村と雑談をする。
「ワタルさん、今日はありがとうございます。お友達を紹介してくれるそうで。」
「この前イッチーさんが経営の勉強してると聞きましてね。僕も色んなところに出入りしてるので、起業家志望の知り合い多いんですよ。イッチーさんの話をしたら、会ってみたい友人がいたのでこれから紹介していきますよ。」
「是非よろしくお願いします!」
これからもカモが供給されると思っているのだろう、市村の口元は緩みっぱなしだった。スパイを送り込まれるとも知らずに。
吉井はトイレから戻ってくると、市村の隣にバッグを置いた。恐らく中にICレコーダーが入っているのだろう。市村の向かいに済と吉井が座り、三者面談のような形で会話が始まった。
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