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第四章 洗脳!自己啓発セミナー
第三十三話 妹を探して
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「……というわけで、妹の部屋にこの梅田さん?が写ってるDVDがあった。まさか恭子がMASKセミナーに関わってるなんてね。」
陽子は、思い出した内容を簡単に話した。
「シェアハウスで集団生活というのは心配だな。サークルだけでなくカルト全般に共通するんだけど、ああいう集団は外部からの情報を遮断してマインドコントロールしようとするんだ。シェアハウスに住まわせるのもその一環で、常に同じ考え方の人間と付き合うように仕向ける。情報遮断としては他にもネット禁止、テレビ禁止なんてこともよく行われる。サークルの場合もSNS、テレビ禁止で、ネットの書き込みは『便所の落書き』なんて言われていた。それに、勧誘を始めてるということは、セミナーの最終段階まで行ってるっていうことだから、結構危ないんじゃないかな。自己啓発セミナーは、三段階になってることが多いんだけど、その中でも一番料金が高いのは最終段階じゃなくて第二段階なんだ。何故かというと、第三段階の内容が『これまで学んだ内容を生かして他人を勧誘しましょう』というもので、要は体の良い営業に使われてしまう。むしろお金をもらってやるようなことなんだよね。最終段階までやっているということは、全部で五十万くらい取られてるんじゃないかな。」
済の話を聞くうちに、妹のことが段々心配になってきた。その場でLINEを送る。
「恭子、久しぶり。前にあなたが言ってたセミナー、MASKってやつだよね?過去に死亡事故起こしてるらしいじゃん。大丈夫?今どこにいるの?」
ところがその日、メッセージには返信が来ることも、既読が付くこともなかった。
◇
結局、一週間経っても妹から連絡は来なかった。恭子のSNSを覗いてみたが、半年ほど前から怪しげな集合写真やパーティーの写真が増えており、それまでの食事や友人との写真から一気に意識の高い方向へと雰囲気が変わっていたものの、三ヶ月ほど前に更新が途絶えていた。親に聞いてみても、恭子から連絡は来ていないと言う。念の為、警察に捜索届を出すよう話してから、陽子は次の行動に移った。
恭子が住んでいたシェアハウス、「SHARE APARTMENT MITAKA」の電話番号を調べたところ、ネットで公開されていた。早速電話してみると、若い女性が出た。
「はい、シェアアパートメント三鷹ですが。」
「始めまして。少しお尋ねしたいのですが、そちらに杉永恭子という女性はいますか?私、姉の陽子と申しますが、最近行方が知れなくて。去年そちらに住んでましたよね?」
「すみません、居住者の情報についてはお答えしかねるのですが。」
「家族の要請でもですか?このままだと、居住者が行方知れずになっているということになりますが。」
「とにかくお答えはしかねます。おかしな噂も広めないで頂きたいのですが。」
その後もしばらく粘ったのだが、居住者の情報は出せないの一点張りだった。確かに昨今は個人情報保護が厳しいが、それにしても頑固なものだ。
しかし、ここで記者をなめてもらっては困る。陽子はオフの日に張り込むことにした。SHARE APARTMENT MITAKAの場所はよく覚えている。近くのカフェに居座り、朝から夕方まで張り込んだが妹らしき人影はない。しびれをきらした陽子は、実力行使に出ることにした。玄関に入ろうとしていた女性に声を掛け、直接質問する。女性は三十歳手前くらいで、近所に買い物に行っていたのかラフな格好だった。
「あの、すみません、こちらにお住まいの方ですか?」
突然話しかけられ、女性は驚いたようだ。
「は、はいそうですが。」
「ちょっと聞きたいのですが、こちらに杉永恭子という人は住んでませんか?私、姉なんですが。」
「い、いえそういうのはちょっと……。」
入り口で女性に質問攻撃をしていると、建物から別の女性が出てきた。こちらもほぼ部屋着だ。
「ヨシエさん、どうしたんですか?」
「この人が、住民について聞いてくるんです。」
「もしかしてあなた、この前電話してきた方ですか?困ります。それに、ここに恭子さんはいませんよ。」
「本当ですか?あの部屋に住んでいるんじゃないですか?」
建物の三階を指差す。
「あの部屋には別の方が住んでいらっしゃいます。」
「それじゃあ、妹はどこにいるんですか?」
「私も一居住者なので知りません。とにかく、お引取り下さい。」
「そんな!それじゃ、代表者とお話させてください!」
陽子が食い下がっていると、奥から初老の女性が出てきた。年齢は五十歳を過ぎているだろうか。色白でやや丸顔だ。クリーム色のワンピースを着ており、表の二人とは違って落ち着いた雰囲気だ。
「私がここのリーダーですが。」
「あなたが代表ですか。ここに、杉永恭子はいませんでしたか?」
「恭子さんなら、三ヶ月前まで住んでましたよ。でも引っ越しちゃって。私もその先のことは知らないの。すみませんね。」
その後、何度聞いても答えは同じだった。仕方なくその日は引き下がることにする。女性はカヨコと名乗った。
◇
シェアハウスはかなり怪しかったが、口を割らないなら仕方ない。陽子は次に、職場に電話してみることにした。職場なら無碍にされることもないだろう。恭子の名刺は以前もらったことがあった。
「帝国電算、ヘルスケアビジネスユニット、営業本部、分析機器課……と。」
「はい。帝国電算ですが。」
「すみません、私、杉永陽子と申します。そちらの部署に杉永恭子はいますか?私、姉なんですが、家族の緊急要件がありまして。」
「少々お待ち下さい……。杉永さんなら、三ヶ月ほど前に退職されていますが。」
「えっ、本当ですか?」
「はい。念のため人事に取り次ぎましょうか?」
言われるままに人事部に取り次いでもらったが、結果は同じだった。恭子は三ヶ月前、その後の進路も言わぬまま退職してしまったという。会社としても引き止めたものの、かなり頑固な態度だったようだ。
恭子が、退職していた……。胸騒ぎを感じた陽子は、ついに腹をくくり、あるURLを開いたのだった。
陽子は、思い出した内容を簡単に話した。
「シェアハウスで集団生活というのは心配だな。サークルだけでなくカルト全般に共通するんだけど、ああいう集団は外部からの情報を遮断してマインドコントロールしようとするんだ。シェアハウスに住まわせるのもその一環で、常に同じ考え方の人間と付き合うように仕向ける。情報遮断としては他にもネット禁止、テレビ禁止なんてこともよく行われる。サークルの場合もSNS、テレビ禁止で、ネットの書き込みは『便所の落書き』なんて言われていた。それに、勧誘を始めてるということは、セミナーの最終段階まで行ってるっていうことだから、結構危ないんじゃないかな。自己啓発セミナーは、三段階になってることが多いんだけど、その中でも一番料金が高いのは最終段階じゃなくて第二段階なんだ。何故かというと、第三段階の内容が『これまで学んだ内容を生かして他人を勧誘しましょう』というもので、要は体の良い営業に使われてしまう。むしろお金をもらってやるようなことなんだよね。最終段階までやっているということは、全部で五十万くらい取られてるんじゃないかな。」
済の話を聞くうちに、妹のことが段々心配になってきた。その場でLINEを送る。
「恭子、久しぶり。前にあなたが言ってたセミナー、MASKってやつだよね?過去に死亡事故起こしてるらしいじゃん。大丈夫?今どこにいるの?」
ところがその日、メッセージには返信が来ることも、既読が付くこともなかった。
◇
結局、一週間経っても妹から連絡は来なかった。恭子のSNSを覗いてみたが、半年ほど前から怪しげな集合写真やパーティーの写真が増えており、それまでの食事や友人との写真から一気に意識の高い方向へと雰囲気が変わっていたものの、三ヶ月ほど前に更新が途絶えていた。親に聞いてみても、恭子から連絡は来ていないと言う。念の為、警察に捜索届を出すよう話してから、陽子は次の行動に移った。
恭子が住んでいたシェアハウス、「SHARE APARTMENT MITAKA」の電話番号を調べたところ、ネットで公開されていた。早速電話してみると、若い女性が出た。
「はい、シェアアパートメント三鷹ですが。」
「始めまして。少しお尋ねしたいのですが、そちらに杉永恭子という女性はいますか?私、姉の陽子と申しますが、最近行方が知れなくて。去年そちらに住んでましたよね?」
「すみません、居住者の情報についてはお答えしかねるのですが。」
「家族の要請でもですか?このままだと、居住者が行方知れずになっているということになりますが。」
「とにかくお答えはしかねます。おかしな噂も広めないで頂きたいのですが。」
その後もしばらく粘ったのだが、居住者の情報は出せないの一点張りだった。確かに昨今は個人情報保護が厳しいが、それにしても頑固なものだ。
しかし、ここで記者をなめてもらっては困る。陽子はオフの日に張り込むことにした。SHARE APARTMENT MITAKAの場所はよく覚えている。近くのカフェに居座り、朝から夕方まで張り込んだが妹らしき人影はない。しびれをきらした陽子は、実力行使に出ることにした。玄関に入ろうとしていた女性に声を掛け、直接質問する。女性は三十歳手前くらいで、近所に買い物に行っていたのかラフな格好だった。
「あの、すみません、こちらにお住まいの方ですか?」
突然話しかけられ、女性は驚いたようだ。
「は、はいそうですが。」
「ちょっと聞きたいのですが、こちらに杉永恭子という人は住んでませんか?私、姉なんですが。」
「い、いえそういうのはちょっと……。」
入り口で女性に質問攻撃をしていると、建物から別の女性が出てきた。こちらもほぼ部屋着だ。
「ヨシエさん、どうしたんですか?」
「この人が、住民について聞いてくるんです。」
「もしかしてあなた、この前電話してきた方ですか?困ります。それに、ここに恭子さんはいませんよ。」
「本当ですか?あの部屋に住んでいるんじゃないですか?」
建物の三階を指差す。
「あの部屋には別の方が住んでいらっしゃいます。」
「それじゃあ、妹はどこにいるんですか?」
「私も一居住者なので知りません。とにかく、お引取り下さい。」
「そんな!それじゃ、代表者とお話させてください!」
陽子が食い下がっていると、奥から初老の女性が出てきた。年齢は五十歳を過ぎているだろうか。色白でやや丸顔だ。クリーム色のワンピースを着ており、表の二人とは違って落ち着いた雰囲気だ。
「私がここのリーダーですが。」
「あなたが代表ですか。ここに、杉永恭子はいませんでしたか?」
「恭子さんなら、三ヶ月前まで住んでましたよ。でも引っ越しちゃって。私もその先のことは知らないの。すみませんね。」
その後、何度聞いても答えは同じだった。仕方なくその日は引き下がることにする。女性はカヨコと名乗った。
◇
シェアハウスはかなり怪しかったが、口を割らないなら仕方ない。陽子は次に、職場に電話してみることにした。職場なら無碍にされることもないだろう。恭子の名刺は以前もらったことがあった。
「帝国電算、ヘルスケアビジネスユニット、営業本部、分析機器課……と。」
「はい。帝国電算ですが。」
「すみません、私、杉永陽子と申します。そちらの部署に杉永恭子はいますか?私、姉なんですが、家族の緊急要件がありまして。」
「少々お待ち下さい……。杉永さんなら、三ヶ月ほど前に退職されていますが。」
「えっ、本当ですか?」
「はい。念のため人事に取り次ぎましょうか?」
言われるままに人事部に取り次いでもらったが、結果は同じだった。恭子は三ヶ月前、その後の進路も言わぬまま退職してしまったという。会社としても引き止めたものの、かなり頑固な態度だったようだ。
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