42 / 62
第四章 洗脳!自己啓発セミナー
第四十一話 陽子と秘密の部屋
しおりを挟む
二日目のセミナーが終わり、参加者がぞろぞろと会場から出ていく。セミナーを通じて仲良くなったのか、他の参加者と話しながら歩いている人も多い。
陽子は人波に紛れてセミナールームを出るとトイレに向かった。個室に籠もり、人がいなくなったところを見計らってビル内を調べるためだ。
時刻は午後八時を過ぎていた。スマホで時間を潰す。職業柄、張り込みには慣れていた。
二時間ほど過ごし、周囲に人の気配を感じなくなったところでトイレを出た。ニ階廊下の明かりは消えていた。
このビルは三階建てで、一階は受付と控室だけとなっている。何かあるとしたら三階だろう。念のため足音を消して階段を上がると、真っ直ぐ伸びた廊下の左に、職員室のようなオフィスがあった。壁に体を隠しながら中を伺うと、いくつかのデスクに電気が点いているのが見えた。バレないように階段を降りる。
一応二階を見てみたものの、セミナールームとロビーだけで、めぼしいものはない。すぐに一階へと降りた。
一階に降り、建物を見回してみたものの、受付と五、六人が入りそうな控室が二つあるだけで、特に面白いものはなかった。控室がある廊下の突き当りが裏口になっている。控室を覗いてみたものの、机と椅子、モニターがあるだけの質素なものだ。さすがにおかしなものはないか、そろそろ帰ろうか……と思い、ビルの出入り口に向かった時のことだった。受付の壁に切れ目が入っているのを見つけた。受付係が座っていたら、背中にあたる場所だ。
切れ目は天井から床へと真っ直ぐ伸びている。よく見ると、その真ん中あたりに丸い金具が埋め込まれていた。非常口などで見る簡易ドアノブのようだ。それに気づくと、この切れ目がカモフラージュされたドアらしいことが分かった。ドアの部分も壁と同じ濃茶色に塗られており、受付係がいる時には単なる非常口にしか見えないだろう。
記者をやっているくらいである。元来好奇心が強い性分の陽子は、思わずドアノブを引いていた。鍵はかかっておらず、あっさり開く。ドアを開くと、そこにはビルを縦に貫く非常階段があった。何だ、ただの非常階段か……と思ったが、足元を見ると地下へと降りる階段が目に入った。一階を見て回ったが、地下への階段は見つからなかった。非常階段でしか行けないのだろうか?
階段を降りると、一階と同じような非常ドアがあり、それを開くと真っ暗な空間が広がっていた。スマホのライトで照らすと、真っ直ぐに伸びる二十メートルほどの廊下と、両脇に等間隔でドアが並んでいるのが分かる。上の部屋で足りない場合にセミナーで使うのだろうか?それにしてはドアの感覚が短く、部屋が小さいように思える。
足元に気をつけながらゆっくりと歩き、廊下の奥まで進んだ時のことだ。
――カツン、カツン。
遠くから足音が響いてきた。MASKの従業員だろうか。地下一階はセミナーで使うとは思えない作りになっており、陽子は直感的に(ここでバレたらまずい!)と思った。
慌ててスマホのライトを消し、突き当りの壁を探ると、そこにもドアがあるらしく、突起物が手に触れる。音を出さないように回し、ゆっくりとドアを開けて中に入った。部屋の中に転がり込むと、何か布のようなものに触れたので、潜り込んで息を殺す。遠くからドアを開く音がしたのはそれと同時だった。
――ガチャッ。カツン、カツン、カツン……。
足音は明らかにこちらに近づいてきていた。心臓がドクドクと音を立てる。なおも足音は続く。
――カツン、カツン、カツン、……ガッチャン。
部屋のドアが、開いた。布を通してちらちらと光が漏れる。ライトで部屋の中を探っているのだ。ライトは何度か陽子の目の前を通過したが、やがてドアが閉まる音がし、足音は遠ざかっていった。
◇
十分ほど布の中に潜っていただろうか。人の気配がしないことを確認し、陽子は布からゆっくりと外に出た。目は暗闇に慣れており、部屋の様子はおおよそ分かった。広さは十五畳ほどだろうか。陽子が潜り込んでいた布は、部屋の入り口に置いてある机に掛かっていたものだった。机というよりは祭壇のようにも見え、布が床へと垂れ下がっている。さらによく見ると、奥に何か立て看板のようなものが立っていたが、それが何なのかまでは分からない。陽子はスマホを取り出し、画面の明るさを最弱にしてそれを照らしてみた。
「何、これ……。」
それは異様なオブジェのようなものだった。オブジェは三面鏡のような形で陽子を取り囲んでおり、正面には「S」という文字と「Σ」を左右反転させたような記号を組み合わせ、それを六芒星で取り囲んだマークが大きく描かれている。
右の壁には地球に円盤が衝突している絵と、円盤から触手が伸び、地球を覆っている絵が描かれていた。そして、左の壁には分厚い本を持った白衣の男性と両手に太い金属の棒を持った男性が向かい合い、金属の棒を持った男性から霊魂のようなものが抜けている絵が描かれていた。陽子はこの部屋の雰囲気と謎のマークから、秘密結社のような雰囲気を感じ取った。
あまり長居してはまた見回りがくるかもしれない。スマホの光をやや強くし、スパイカメラがぎりぎり映るくらいの状態にして部屋の様子を撮影すると、足音を殺しながら階段へ向かった。
幸い見回りは来ず、ビルの裏口から外へ出ることができた。
陽子は人波に紛れてセミナールームを出るとトイレに向かった。個室に籠もり、人がいなくなったところを見計らってビル内を調べるためだ。
時刻は午後八時を過ぎていた。スマホで時間を潰す。職業柄、張り込みには慣れていた。
二時間ほど過ごし、周囲に人の気配を感じなくなったところでトイレを出た。ニ階廊下の明かりは消えていた。
このビルは三階建てで、一階は受付と控室だけとなっている。何かあるとしたら三階だろう。念のため足音を消して階段を上がると、真っ直ぐ伸びた廊下の左に、職員室のようなオフィスがあった。壁に体を隠しながら中を伺うと、いくつかのデスクに電気が点いているのが見えた。バレないように階段を降りる。
一応二階を見てみたものの、セミナールームとロビーだけで、めぼしいものはない。すぐに一階へと降りた。
一階に降り、建物を見回してみたものの、受付と五、六人が入りそうな控室が二つあるだけで、特に面白いものはなかった。控室がある廊下の突き当りが裏口になっている。控室を覗いてみたものの、机と椅子、モニターがあるだけの質素なものだ。さすがにおかしなものはないか、そろそろ帰ろうか……と思い、ビルの出入り口に向かった時のことだった。受付の壁に切れ目が入っているのを見つけた。受付係が座っていたら、背中にあたる場所だ。
切れ目は天井から床へと真っ直ぐ伸びている。よく見ると、その真ん中あたりに丸い金具が埋め込まれていた。非常口などで見る簡易ドアノブのようだ。それに気づくと、この切れ目がカモフラージュされたドアらしいことが分かった。ドアの部分も壁と同じ濃茶色に塗られており、受付係がいる時には単なる非常口にしか見えないだろう。
記者をやっているくらいである。元来好奇心が強い性分の陽子は、思わずドアノブを引いていた。鍵はかかっておらず、あっさり開く。ドアを開くと、そこにはビルを縦に貫く非常階段があった。何だ、ただの非常階段か……と思ったが、足元を見ると地下へと降りる階段が目に入った。一階を見て回ったが、地下への階段は見つからなかった。非常階段でしか行けないのだろうか?
階段を降りると、一階と同じような非常ドアがあり、それを開くと真っ暗な空間が広がっていた。スマホのライトで照らすと、真っ直ぐに伸びる二十メートルほどの廊下と、両脇に等間隔でドアが並んでいるのが分かる。上の部屋で足りない場合にセミナーで使うのだろうか?それにしてはドアの感覚が短く、部屋が小さいように思える。
足元に気をつけながらゆっくりと歩き、廊下の奥まで進んだ時のことだ。
――カツン、カツン。
遠くから足音が響いてきた。MASKの従業員だろうか。地下一階はセミナーで使うとは思えない作りになっており、陽子は直感的に(ここでバレたらまずい!)と思った。
慌ててスマホのライトを消し、突き当りの壁を探ると、そこにもドアがあるらしく、突起物が手に触れる。音を出さないように回し、ゆっくりとドアを開けて中に入った。部屋の中に転がり込むと、何か布のようなものに触れたので、潜り込んで息を殺す。遠くからドアを開く音がしたのはそれと同時だった。
――ガチャッ。カツン、カツン、カツン……。
足音は明らかにこちらに近づいてきていた。心臓がドクドクと音を立てる。なおも足音は続く。
――カツン、カツン、カツン、……ガッチャン。
部屋のドアが、開いた。布を通してちらちらと光が漏れる。ライトで部屋の中を探っているのだ。ライトは何度か陽子の目の前を通過したが、やがてドアが閉まる音がし、足音は遠ざかっていった。
◇
十分ほど布の中に潜っていただろうか。人の気配がしないことを確認し、陽子は布からゆっくりと外に出た。目は暗闇に慣れており、部屋の様子はおおよそ分かった。広さは十五畳ほどだろうか。陽子が潜り込んでいた布は、部屋の入り口に置いてある机に掛かっていたものだった。机というよりは祭壇のようにも見え、布が床へと垂れ下がっている。さらによく見ると、奥に何か立て看板のようなものが立っていたが、それが何なのかまでは分からない。陽子はスマホを取り出し、画面の明るさを最弱にしてそれを照らしてみた。
「何、これ……。」
それは異様なオブジェのようなものだった。オブジェは三面鏡のような形で陽子を取り囲んでおり、正面には「S」という文字と「Σ」を左右反転させたような記号を組み合わせ、それを六芒星で取り囲んだマークが大きく描かれている。
右の壁には地球に円盤が衝突している絵と、円盤から触手が伸び、地球を覆っている絵が描かれていた。そして、左の壁には分厚い本を持った白衣の男性と両手に太い金属の棒を持った男性が向かい合い、金属の棒を持った男性から霊魂のようなものが抜けている絵が描かれていた。陽子はこの部屋の雰囲気と謎のマークから、秘密結社のような雰囲気を感じ取った。
あまり長居してはまた見回りがくるかもしれない。スマホの光をやや強くし、スパイカメラがぎりぎり映るくらいの状態にして部屋の様子を撮影すると、足音を殺しながら階段へ向かった。
幸い見回りは来ず、ビルの裏口から外へ出ることができた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
