48 / 62
第五章 恐怖!カルト宗教
第四十七話 体験!カウンセリング
しおりを挟む
科学の道本部の入り口をくぐると、左側に受付があった。一階の一番奥には陽子が送ってきたあのマークが大きく飾られており、左右には扉が並んでいる。カウンセリングルームだろうか。済は受付の女性に声を掛けた。
「あの、あそこに無料カウンセリングと書いてあったんですが。ちょっと興味がありまして。」
「カウンセリングですね。三十分ほどかかりますが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。」
「それでは、こちらへどうぞ。」
そう言うと、受付の女性は一階に並ぶ部屋の一つへ済を案内した。やはりここがカウンセリングルームだったようだ。部屋は人が五人も入れば一杯になるくらいの広さで、テーブルが一つと、椅子が二脚置かれているだけの殺風景なものだ。警察の取り調べ部屋のようにも見える。それにしても、一階には受付の女性しか人影が見当たらない。ちゃんと信者はいるのだろうか?
「それでは、しばらくお待ちください。」
そう言って受付の女性が出ていくと、しばらくして痩せた中年男性が電圧計のような器具を持って入ってきた。これが噂のEメーターか。独立したとは言え、サイエンス・ムーブメントとほぼ同じカウンセリングをしているように見えるが、訴えられないのだろうか?まあ、小さな団体なので黙認されている可能性はある。
「はじめまして。科学の道でカウンセラーをやっております吉野と申します。カウンセリングを申し込まれたとのことで、今日はよろしくお願いします。まず状態の確認ですが、今空腹だったり、寝不足だったりしますか?あるいは昨夜結構な量の飲酒をしたとか。」
「いえ、特にそういったことはないです。」
「分かりました。では始めていきましょう。椅子に深く腰掛けてください。そうしましたら、この電極を握って下さい。これはEメーターと言いまして、あなたの心の動きを読み取るものです。ゆっくり呼吸をして、肩の力を抜いていきましょう。」
吉野は単一電池ほどの太さがあるEメーターの電極を二本、両手に握らせた後、済をリラックスさせる段階に入った。心の動きを読み取ると言っていたが、これは恐らく、昔からあるウソ発見器と同じ原理だろう。警察の本格的なポリグラフでは呼吸や心拍なども測定しているが、市販のおもちゃで見ているのはほぼ手汗と言って良い。人間は緊張すると手に汗をかくことが知られている。このため、ウソを吐いた時には手に汗が分泌されることで電気抵抗が減る。これによって電極が振れるというわけだ。
吉野はゆっくりと済に話しかける。
「段々とリラックスしていきましたね。今日はカウンセリングにご興味がおありということでしたが、何か悩みはありますか?」
「そうですね、上司が高圧的な人に変わっちゃったんですが、なかなか合わなくて。上から一方的に言われるとモチベーション下がっちゃうんですよね。」
「なるほど、それは大変ですね。うまくいかないのは、もしかしたらあなたの過去に原因があるのかもしれません。子供の頃に似たような経験はありましたか?過去に戻ってみましょう……十年前……二十年前……ほら、今は小学生時代です。」
「うーん、そういえば親から理不尽に怒られたことがあったような……。」
「今、Eメーターが振れました。このあたりに何か強い思いがありそうです。もう少し思い出してみましょう。」
「友達に自転車を貸してたら鍵がなくなってたことがあって、親がそれを僕がなくしたんだって怒ってきたことがありましたねえそういえば……。」
「それは辛かったですね……。あなたはその時どう感じましたか……?」
科学の道のカウンセリングは、退行催眠とまではいかないものの、今の悩みの原因を過去に遡って調べていくものだった。カウンセリングのスタイルもほぼサイエンス・ムーブメントと同じようだ。こんな調子で子供時代の記憶をほじくり返されること三十分。原因が分かったような分からなかったような調子でカウンセリングは終了した。
済は途中から(というかこれ、ほとんどの場合親の育て方が原因という結論になるんじゃ?どう考えても上司がサイコパスなのが原因なんだけど。)と思っていたが、潜入のことを考え、それとなく話を合わせていた。
「悩みの原因に近いところまで行けたようですね。ご興味ありましたら、是非また連絡下さい。ウェブのフォームからも問い合わせできますし、私の名刺に書いてあるメールアドレスにご連絡頂いても大丈夫です。」
「ありがとうございます。ところでここ、入会とかってあるんですか?」
「ありますよ。私ども科学の道では、カウンセリングを重ね、また施術を行う側に回ることで『クリア』な状態を目指すことができると考えています。もし良ければこのあと説明しますよ。」
「是非よろしくお願いします。」
こうして済は、入会説明を受けることになった。
「あの、あそこに無料カウンセリングと書いてあったんですが。ちょっと興味がありまして。」
「カウンセリングですね。三十分ほどかかりますが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。」
「それでは、こちらへどうぞ。」
そう言うと、受付の女性は一階に並ぶ部屋の一つへ済を案内した。やはりここがカウンセリングルームだったようだ。部屋は人が五人も入れば一杯になるくらいの広さで、テーブルが一つと、椅子が二脚置かれているだけの殺風景なものだ。警察の取り調べ部屋のようにも見える。それにしても、一階には受付の女性しか人影が見当たらない。ちゃんと信者はいるのだろうか?
「それでは、しばらくお待ちください。」
そう言って受付の女性が出ていくと、しばらくして痩せた中年男性が電圧計のような器具を持って入ってきた。これが噂のEメーターか。独立したとは言え、サイエンス・ムーブメントとほぼ同じカウンセリングをしているように見えるが、訴えられないのだろうか?まあ、小さな団体なので黙認されている可能性はある。
「はじめまして。科学の道でカウンセラーをやっております吉野と申します。カウンセリングを申し込まれたとのことで、今日はよろしくお願いします。まず状態の確認ですが、今空腹だったり、寝不足だったりしますか?あるいは昨夜結構な量の飲酒をしたとか。」
「いえ、特にそういったことはないです。」
「分かりました。では始めていきましょう。椅子に深く腰掛けてください。そうしましたら、この電極を握って下さい。これはEメーターと言いまして、あなたの心の動きを読み取るものです。ゆっくり呼吸をして、肩の力を抜いていきましょう。」
吉野は単一電池ほどの太さがあるEメーターの電極を二本、両手に握らせた後、済をリラックスさせる段階に入った。心の動きを読み取ると言っていたが、これは恐らく、昔からあるウソ発見器と同じ原理だろう。警察の本格的なポリグラフでは呼吸や心拍なども測定しているが、市販のおもちゃで見ているのはほぼ手汗と言って良い。人間は緊張すると手に汗をかくことが知られている。このため、ウソを吐いた時には手に汗が分泌されることで電気抵抗が減る。これによって電極が振れるというわけだ。
吉野はゆっくりと済に話しかける。
「段々とリラックスしていきましたね。今日はカウンセリングにご興味がおありということでしたが、何か悩みはありますか?」
「そうですね、上司が高圧的な人に変わっちゃったんですが、なかなか合わなくて。上から一方的に言われるとモチベーション下がっちゃうんですよね。」
「なるほど、それは大変ですね。うまくいかないのは、もしかしたらあなたの過去に原因があるのかもしれません。子供の頃に似たような経験はありましたか?過去に戻ってみましょう……十年前……二十年前……ほら、今は小学生時代です。」
「うーん、そういえば親から理不尽に怒られたことがあったような……。」
「今、Eメーターが振れました。このあたりに何か強い思いがありそうです。もう少し思い出してみましょう。」
「友達に自転車を貸してたら鍵がなくなってたことがあって、親がそれを僕がなくしたんだって怒ってきたことがありましたねえそういえば……。」
「それは辛かったですね……。あなたはその時どう感じましたか……?」
科学の道のカウンセリングは、退行催眠とまではいかないものの、今の悩みの原因を過去に遡って調べていくものだった。カウンセリングのスタイルもほぼサイエンス・ムーブメントと同じようだ。こんな調子で子供時代の記憶をほじくり返されること三十分。原因が分かったような分からなかったような調子でカウンセリングは終了した。
済は途中から(というかこれ、ほとんどの場合親の育て方が原因という結論になるんじゃ?どう考えても上司がサイコパスなのが原因なんだけど。)と思っていたが、潜入のことを考え、それとなく話を合わせていた。
「悩みの原因に近いところまで行けたようですね。ご興味ありましたら、是非また連絡下さい。ウェブのフォームからも問い合わせできますし、私の名刺に書いてあるメールアドレスにご連絡頂いても大丈夫です。」
「ありがとうございます。ところでここ、入会とかってあるんですか?」
「ありますよ。私ども科学の道では、カウンセリングを重ね、また施術を行う側に回ることで『クリア』な状態を目指すことができると考えています。もし良ければこのあと説明しますよ。」
「是非よろしくお願いします。」
こうして済は、入会説明を受けることになった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる