マルチ商法女と戦っていたら、もっととんでもないものと戦うことになってしまった件

青山済

文字の大きさ
60 / 62
第六章 サークル壊滅大作戦!

第五十九話 緊急警報

しおりを挟む
「お前達が飲んだのはな、天然痘の培養液だ。」

島村が決定的な一言を放ったにも関わらず、突然の「テンネントウ」という言葉がピンと来ないのか、多くの者が周囲と顔を見合わせていた。

それを見て島村が続ける。

「お前らアホにも分かるように説明してやろう。天然痘というのは最悪クラスの伝染病だ。皮膚の上にあばたができる病気で、強力な感染力を持つと共に致死率は五十パーセントに及ぶ。しかもお前たちが飲んだのは兵器用にウイルスを改変したもので、致死率を高めてある。さらに悪いことに、今の日本にこいつを診れる医者はいない。何故かって?こいつは人類が初めて根絶に成功した病気なんだ。四十年近く前に根絶されて、ワクチン接種も廃止されてる。つまり実際に天然痘を診察したことのある医師は皆無といって良いわけだ。しかも特効薬は存在しない。お前ら全員、国から見捨てられるぞ。」

七千人のうち、一部でも東京に到達し山手線を一周したら……。

吉井は島村が解説を始めた瞬間にステージ裏に戻り、荷物を引っ掴んだ。エントランスへ向けて走り出した時、ステージへ群衆が駆け上がる音がし、島村のマイクを通じて怨嗟が聞こえてきた。

「クソが!お前は今ここで死ね!」
「騙しやがって!!五年も自己投資してたんだぞ!!」

エントランスを出ると、別のところから出てきた済と鉢合わせした。いつの間にか化粧を落とし、デニムとパーカー姿になっている。

「ヨッさん、ちょうど良かった。東二ゲートの方へ走るぞ。」
「東二ゲート?」
「俺がドローン使って配信してたのがネットでバズっててな、警察に大量の通報があったのと、杉永さんの連絡もあって今警察がこっちに向かってる。警視庁と千葉県警の機動隊及びNBCテロ対策部隊だ。そのうち自衛隊も応援に駆けつけるはずだが、まずは俺達の話を聞きたいってことで東二ゲートのあたりで回収されることになってる。一応俺達も接触者だからな。一般人と接触したらまずいというわけだ。そのうち緊急警報が配信されるはずだ。それから、杉永さんから電話取材の依頼もらってる。サークルについてニュースにしたのはサイバーテレビだけ、しかも取材してたのは彼女だけだから今頃は大忙しだろうな。」

済の話を聞きながら走る。セントラルキャフェテリア、ラウンジの前を突っ切り、メッセ交差点の歩道橋が見えたところで右に折れた。五十メートルほど走ると東二ゲート前に出る。

ゲート前で待っていると、二人のスマホから初めて聞く警報音が流れ始めた。Jアラートが発信されたのだ。

「キュウウウーーーーーーン」という精神をえぐる音が流れ始め、吉井は思わず耳を塞いだ。その警報音は二人とも初めて聞くものだった。二人が聞いたことがあったのは地震の際の「チャンラン、チャンラン」だけで、正直少し聞き慣れてしまっていたが、この音はそれとはレベルが違う不快さを伴っていた。胸が締め付けられるようにきつくなり、吐き気を催す。何度も聞くと涙が出てくるかもしれないと吉井は思った。

「国民保護サイレン」が、千葉県で初めて流された瞬間だった。
※国民保護サイレン:全国瞬時警報システム、通称Jアラートで採用されている警報音の一つ。普段聞くのは「上りチャイム音」というもので、地震情報や気象情報に利用される。一方の「有事サイレン」は、弾道ミサイルや大規模テロの際に流されるもので、空襲警報を思わせる極めて不快な音となっている。政府のサイトやYoutubeから聞くことが可能だが、一般人が公衆の場で放送するのは禁止されている。本当に不快な音なので、聞く際は注意。

スマホには「暴動情報。暴動情報。当地域に暴動の危険が及ぶ可能性があります。避難情報に従い、速やかに避難して下さい。」というメッセージが配信されていた。

サイバーテレビのアプリを開くと、今日サークルの前で流した番組と同じアナウンサーが幕張メッセでの暴動について報じていた。まだ天然痘の現物が確認できていないため、あくまでも「暴動」としての扱いだったが、単なる暴動にしては扱いが大きく、政府としても事態を重く見ているのは確実だった。天然痘の存在が確認されれば、本格的に幕張メッセ周辺を隔離するだろう。

番組の上には緊急情報が常に流れており、「武力攻撃に関わる緊急警報が発信されています。次の区域の方は速やかに避難を開始してください。千葉県船橋市全域、習志野市全域、八千代市全域、千葉市花見川区、稲毛区……」というテロップが出ていた。

公的な情報ではまだ伏せられていたものの、ネットでは済の配信から天然痘の情報が知れ渡っており、

「おいおい、天然痘ってマジか!本当だったらバイオテロじゃん!」
「千葉県全滅するんじゃね?」
「千葉で済むかよ、東京にでも広がってみろ、百万人じゃきかないレベルの被害者が出るぞ。」
「天然痘を持ってたとか、サークルって何者なんだよ!北の工作員集団か!?」

といった投稿がTwitterや5ch、FaceBookを埋め尽くしていた。

済は撮影用のスマホを幕張メッセに残してきたため、配信はまだ続いていた。wifiも電源も幕張メッセから拝借していたため、インフラが生きている限りは様子を確認できる。

吉井が配信URLを開こうとしたその時、二人の前に青い小型トラックのような車が停まった。千葉県警NBCテロ対策部隊の、NBCテロ対策車だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...