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第六章 サークル壊滅大作戦!

第六十一話 テレビ帝都伝説

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「ヨッさん、幕張メッセが燃えてる!」

済が吉井にLINEすると、すぐに返事が返ってきた。

「おう、やっと気がついたか。俺はずっと起きてたぜ。」

入院後も眠れず、配信やTwitter、テレビを確認していたという吉井は、これまでの経緯を説明し始めた。

死体を一箇所に集め終わったサークル会員達の間で、これからどうするのか話し合いが行われた。梅田を殺しに行く、大学病院に行って本当に治療法がないか聞くといった声が出たが、やはり最後に縋るのは自己啓発らしく、マイクを握った女性会員のこの一言で大勢が決まった。

「皆、ピンチをチャンスに変えなきゃ!死ぬのが決まったってことは、何したって大丈夫ってことじゃん!!死ぬまでに好きなことを全部やりましょ!」

皆洗脳されていただけあって、すぐにこの言葉に従った。この言葉を受けて、やりたい放題を始めたのだ。まず始まったのは殴り合いだった。狭いコミュニティの中で過ごしていたため、普段から鬱憤が溜まっている相手がいたのだろう。相手を見つけて殴りかかる会員が見られた。素手での殴り合いはやがてパイプ椅子での殴り合いに発展し、そこら中で流血が起こった。

殴り合いが一段落すると、会員の一人が、どこからか持ってきた灯油を死体の山にぶちまけて火を付けた。それを合図に、数千人が雄叫びを上げながら幕張メッセを飛び出し、避難されて人気のなくなったコンビニやスーパー襲撃し始めた。そこで大量の食料や酒を略奪した彼らは、幕張メッセの目の前にある三井アウトレットパークに押し入り、酒盛りを始めたのだった。今頃は、アウトレットパークの宝石店やブランド店が襲撃されているだろう。この様子を配信しようと、面白半分で近づいたYoutuberが百人以上いたが、例外なく彼らに捕まり、殺害された。ある者は撲殺され、またある者は目玉をくり抜かれ、さらに他の者は首をはねられ、血を吹き出して死ぬ様子が数百万人に流されるという、史上初の同時多発放送事故となった。彼らが殺される様子が埋め込まれたツイートや写真、動画がTwitterやInstagram、TikTokで大量拡散され、SNS各社は注意情報を出した。

「テレビをつけてみろ、全部のチャンネルがこの件の特番になってるぞ。テレビ帝都まで報道番組をやってる。」
「なにっ!?あの湾岸戦争時に楽しいミームン一家、北朝鮮ミサイル発射時にもどうぶつフレンドを放送したテレビ帝都がか!」

済は病室に備え付けられていた小型テレビの電源を入れた。確かに、全てのチャンネルが三井アウトレットパークを映していた。地上に降りると天然痘が感染する可能性があるため、報道ヘリからの望遠映像だ。毎朝テレビだけは陽子の取材映像があったため、サークルやMASKについて、改めて報じていた。

テレビの各チャンネルを見ていると、陽子からLINEが入った。

「入院したばかりで申し訳ないんだけど、一時間後に取材受けてもらっていい?スマホのビデオ通話で。病院には許可取ってあるから。」
「勿論。」
「ありがとう。それじゃ、一時間後くらいにまたLINEした後、うちの局から掛けるから。」
「分かった。」

時刻は既に夜の十時を過ぎていた。テレビもネットも同じ話題一色に染まるという未曾有の事態に興奮し、朝まで眠れそうにない。毎朝テレビの中継を見ながらSNSをチェックしているとすぐに時間が過ぎ、陽子からメッセージが来た後、スマホに着信があった。ビデオ通話で応じる。

「この後『こちらは現場に居合わせた青山さんです!』って紹介するから、質問に答えてね。」
「分かった。」
「……はい、社会部の杉永です。私はこれまで『サークル』について取材してきました。今夜はサークルの集会に居合わせた方と連絡が取れておりますので質問したいと思います。青山さんこんばんは。今夜はよろしくお願いします!」
「こんばんは。こちらこそよろしくお願いします。」
「早速ですが、青山さんは暴動が起きたところに居合わせたということで、その時の状況をお聞かせいただけますか。」
「はい。僕も最近入ったばかりで、サークルの事情はあまり知らなかったのですが、紹介者に誘われて、月に一度の全国会議に参加していたんです。そしたら、途中で何の手違いか、サイバーテレビの放送がスクリーンに映し出されて。それで、『騙された!』と激怒した会員がサークルトップの島村に襲いかかったんです。」

済は、昼に千葉県警にされたのと同じような質問を陽子から受け、同様に答えていた。五分ほどの取材時間が終わり、陽子が「青山さん、ありがとうございました。」と切り上げた時、中継で繋がっていた毎朝テレビのアナウンサーが大きな声を出した。

「皆さん見て下さい!三井アウトレットパークから、大勢の人達が出てきます。数千人はいそうです。一体彼らは、どこに向かうのでしょうか!」

アウトレットから大量の会員が飛び出し、どこかへ向かい始めていた。
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