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26話 11月14日 膳所と白樺の会話
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「もしもし」
「もしもし。白樺先生の携帯電話でよろしかったでしょうか」
「はい。膳所先生ですか?」
「そうです。本日はお時間を作っていただき、ありがとうございます」
「とんでもありません。膳所先生から連絡をいただかなかったら、私もどうしようかと……。職を辞してからかなり経っておりますし」
「それでもまだ、学校支援ボランティアとして活動してくださっているので、こうやってつながりました。本当に感謝しています」
「なにをおっしゃいますやら……。もとはと言えば、私があのときにしっかりと対処をしていなかったからこのようなことに……」
「そんな……」
「いえ、そうなんです」
「退職は……やはり、あの『なおこちゃんの手紙』がきっかけで?」
「ええ。私は……勉強はもちろですが、児童たちに、おもいやりや、他人を気遣う気持ちを教えるために教職に就いたのです。それなのに……。私の力が足らぬばかりに、あの子たちは……」
「先生、どうかご自分を責めず……。我々の予想をはるかに超えてくるのが児童ですから」
「そうでしょうね。そして私にはそもそも教員としての技量も素質もなかったのでしょう」
「……」
「すみません。年を取ると愚痴ばかりで。膳所先生、『なおこちゃんの手紙』の件ですね?」
「はい」
「失礼ですが、いったいどうして『なおこちゃんの手紙』から私のことが? 先生は◎◎小学校の教員ではありませんよね? ……それに、あの小学校から私のところに連絡も来ていませんし……」
「偶然なんです。俺が初めて赴任したのが◎◎小学校で。ほら、白樺先生もご存じでしょう? 教員1年目なんて体力勝負の雑用係じゃないですか」
「否定は……いたしません」
「学校にある倉庫の片づけを命じられたんですよ。夏休みに。そのときに、古い学級通信なんかが出てきて」
「学級……通信」
「いまはメールやLINEで一斉送信じゃないですか。だからものすごく新鮮で……。自分自身も小学校の頃、学年終わりに文集化して手渡してくれる先生がいたのを思い出しましてね」
「ファイリングするように児童には言うんですが、かならずなくす子がいて……」
「それ俺ですね。で、先生が『何号がないの!』って叱られたりして」
「懐かしい」
「俺もすごく懐かしくて、つい読みふけったんです。その学級通信のひとつが、白樺先生がおつくりになった『努力』でした。昭和60年の」
「……なるほど。その年でしたものね。『なおこちゃんの手紙』がまわったのは」
「その文集のことはずっと忘れていて……。つい最近、友人の奥さんから尋ねられたんです」
「……友人の、奥さん?」
「ええ。俺の友人に御子柴という男がいます。彼も小学校教員だったんですが、保護者とのトラブルでうつになりまして……。退職し、いまは違う仕事をしています。その御子柴を心身ともに支えてくれていたのが、伊勢さんという……こちらも元中学校教員で、いまはライトノベル作家をされている女性なんです」
「ひょっとして……多々良リョウ先生?」
「そうです! え⁉ どうしてご存じで……⁉」
「ご存じもなにも……。私は彼女の……というか、男性ではなかったのですか、多々良先生は?」
「え。女性ですが」
「まあ……、てっきり私は……」
「彼女が『なおこちゃんの手紙』についていろいろと調べておりまして」
「ええ。存じております。多々良先生がカクヨム内で掲載されている怪談実話で、私は『なおこちゃんの手紙』を見つけたのですから」
「なんと……!」
「あの、膳所先生」
「はい」
「もちろんお電話で経緯を説明させていただいてもいいのですが、それをまた多々良先生にお話しなさるのでしたら二度手間です。一度、先生を交えてお話できる機会を作っていただけませんか?」
「もちろん。白樺先生さえよろしければ」
「お手数ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
「もしもし。白樺先生の携帯電話でよろしかったでしょうか」
「はい。膳所先生ですか?」
「そうです。本日はお時間を作っていただき、ありがとうございます」
「とんでもありません。膳所先生から連絡をいただかなかったら、私もどうしようかと……。職を辞してからかなり経っておりますし」
「それでもまだ、学校支援ボランティアとして活動してくださっているので、こうやってつながりました。本当に感謝しています」
「なにをおっしゃいますやら……。もとはと言えば、私があのときにしっかりと対処をしていなかったからこのようなことに……」
「そんな……」
「いえ、そうなんです」
「退職は……やはり、あの『なおこちゃんの手紙』がきっかけで?」
「ええ。私は……勉強はもちろですが、児童たちに、おもいやりや、他人を気遣う気持ちを教えるために教職に就いたのです。それなのに……。私の力が足らぬばかりに、あの子たちは……」
「先生、どうかご自分を責めず……。我々の予想をはるかに超えてくるのが児童ですから」
「そうでしょうね。そして私にはそもそも教員としての技量も素質もなかったのでしょう」
「……」
「すみません。年を取ると愚痴ばかりで。膳所先生、『なおこちゃんの手紙』の件ですね?」
「はい」
「失礼ですが、いったいどうして『なおこちゃんの手紙』から私のことが? 先生は◎◎小学校の教員ではありませんよね? ……それに、あの小学校から私のところに連絡も来ていませんし……」
「偶然なんです。俺が初めて赴任したのが◎◎小学校で。ほら、白樺先生もご存じでしょう? 教員1年目なんて体力勝負の雑用係じゃないですか」
「否定は……いたしません」
「学校にある倉庫の片づけを命じられたんですよ。夏休みに。そのときに、古い学級通信なんかが出てきて」
「学級……通信」
「いまはメールやLINEで一斉送信じゃないですか。だからものすごく新鮮で……。自分自身も小学校の頃、学年終わりに文集化して手渡してくれる先生がいたのを思い出しましてね」
「ファイリングするように児童には言うんですが、かならずなくす子がいて……」
「それ俺ですね。で、先生が『何号がないの!』って叱られたりして」
「懐かしい」
「俺もすごく懐かしくて、つい読みふけったんです。その学級通信のひとつが、白樺先生がおつくりになった『努力』でした。昭和60年の」
「……なるほど。その年でしたものね。『なおこちゃんの手紙』がまわったのは」
「その文集のことはずっと忘れていて……。つい最近、友人の奥さんから尋ねられたんです」
「……友人の、奥さん?」
「ええ。俺の友人に御子柴という男がいます。彼も小学校教員だったんですが、保護者とのトラブルでうつになりまして……。退職し、いまは違う仕事をしています。その御子柴を心身ともに支えてくれていたのが、伊勢さんという……こちらも元中学校教員で、いまはライトノベル作家をされている女性なんです」
「ひょっとして……多々良リョウ先生?」
「そうです! え⁉ どうしてご存じで……⁉」
「ご存じもなにも……。私は彼女の……というか、男性ではなかったのですか、多々良先生は?」
「え。女性ですが」
「まあ……、てっきり私は……」
「彼女が『なおこちゃんの手紙』についていろいろと調べておりまして」
「ええ。存じております。多々良先生がカクヨム内で掲載されている怪談実話で、私は『なおこちゃんの手紙』を見つけたのですから」
「なんと……!」
「あの、膳所先生」
「はい」
「もちろんお電話で経緯を説明させていただいてもいいのですが、それをまた多々良先生にお話しなさるのでしたら二度手間です。一度、先生を交えてお話できる機会を作っていただけませんか?」
「もちろん。白樺先生さえよろしければ」
「お手数ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
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