神隠しな戦国おたく

TAKAHARA HIROKI

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第10章(最終回) 継承される鉄の意志

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西暦2025年。
 かつて鷹野博史が生きていた「史実の日本」とは、似ても似つかない世界がそこには広がっていた。
 帝都・東京。
 そこは、SF映画と平安京が融合したかのような、息を飲むほど美しい超未来都市だった。
 空には、排気ガスを出さない**「反重力リニアカー」が静かに行き交い、摩天楼はガラスと檜(ひのき)を組み合わせた「新和風建築」で彩られている。
 化石燃料による公害も、資源戦争もない。
 この世界線における日本――「大日本皇国」**は、博史の技術遺産(レガシー)によってフリーエネルギー革命をいち早く成し遂げ、世界大戦の悲劇を一度も経験することなく、世界の調停者として平和を維持する超大国となっていた。
 その帝都の喧騒から離れた郊外。
 最先端の研究機関が集まる『学術特区』の、緑豊かな丘の上に、一つの聖地がある。
 『鷹野科学記念館』。
 館内の中央ホール、厳重な警備に守られた防弾ガラスのケースの中に、この国の礎(いしずえ)となった**「四つの聖遺物」**が展示されている。
 一つ目は、泥と煤で黒ずんだ**『蒼い旗』**。
 そこには、自由と高潔さを象徴する「白い鷹」の紋章が刺繍されており、幾多の戦場を潜り抜けた傷跡が残っている。
 二つ目は、無骨ながらも美しい鉄の輝きを放つ小銃、『鷹野一式歩兵銃(タカノ・ライフル)試作一号機』。
 博史がこの時代で改良し設計・製造したボルトアクション式連発銃であり、後に列強の侵略から日本を守り抜く「鉄の牙」の原型となった、歴史を変えた名機である。
 三つ目は、グリップが使い込まれた一丁の**『リボルバー』**。
 国母・時(とき)が「愛こそ最強の盾」と呼び、生涯肌身離さず持っていた、父・博史の形見である。
 そして、中央に鎮座するのが、ひどくひしゃげた鉛の欠片。
 かつて博史が放った最後の一発、敵の爆薬を誘爆させ、愛する娘と未来を守り抜いたあの弾丸の破片。
 人々はこれを、建国の伝説として畏敬の念を込めてこう呼んだ。
 『蒼い弾丸(ブルー・バレット)』。
 その展示の背後には、二人の銅像――設計図を手に遠くを見つめる『技術の父・鷹野博史』と、ノートを抱き凛と前を見据える『国母・鷹野時(とき)』が並んで立っている。
 そこへ、一人の青年が花を手向けにやってきた。
 彼は博史の直系の子孫であり、この国の若き内閣総理大臣でもある。
「……ご先祖様。今年も日本は、そして世界は平和です」
 青年は『鷹野式小銃』と『蒼い弾丸』に向かって深く一礼した。
 彼が見上げる銅像の足元には、博史がノートの最後のページに書き残した言葉が、金色のプレートに刻まれていた。
 『未来は、選ぶことができる。
  知識は力なり。されど、愛は最強の盾なり』
 窓の外には、博史が夢見、命を賭して守り抜いた「退屈で、平和で、どこまでも美しい未来」が広がっていた。
 
 蒼い空を、鷹のような白い翼を持った旅客機が、音もなく飛んでいく。
 その機体には、平和の象徴として、蒼い弾丸と鷹のエンブレムが描かれていた。
 時を越えた一人の男の願い。
 その魂は、今も形を変えて、この美しい国の空を飛び続けている。
 

 その物語は、改変された新しい歴史の中で、永遠の伝説となって生き続ける。
(全編完)
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