神隠しな戦国おたく

TAKAHARA HIROKI

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【時(とき)編】 第1章 涙を拭った日

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博史の葬儀は、しめやかに行われた。
 だが、椎葉の谷には不穏な空気が漂っていた。
「大将が死んだ」「これで椎葉も終わりか」「織田が攻めてくるぞ」
 家臣たちの動揺。周辺諸国の不気味な沈黙。
 わずか十五歳の少女・**時(とき)**の双肩に、全ての重圧がのしかかっていた。
 その夜、時は父の書斎に籠もっていた。
 机の上には、父の形見であるリボルバーと、膨大な**『鷹野全書(父のノート)』**。
 彼女は泣いていた。父のいない恐怖に震えていた。
 だが、窓の外で母・小雪が、不安がる民衆に気丈に振る舞う声が聞こえた。
 時は涙を袖で乱暴に拭った。
「……泣いてる暇なんてない。パパならどうするか、考えなさい」
 翌朝、広場に集まった家臣たちの前に現れた時は、別人のような顔をしていた。
 彼女は腰にリボルバーを差し、父の蒼をマントのように羽織っていた。
「お聞きなさい! 鷹野博史は死にましたが、その知識(たましい)はここにあります!」
 彼女はノートを高々と掲げた。
「今日から私が当主です。文句がある者は前に出なさい。……父の『科学』で相手をします」
 その瞳には、蒼い炎が宿っていた。伝説の女帝が覚醒した瞬間だった。
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