紅の忍法帖 ~伊賀幕府・ラスト・アナログ~

TAKAHARA HIROKI

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第26章:崩れゆく城

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首領(ホスト)を失ったメガフロートは、断末魔の叫びを上げていた。
 制御を失った動力炉が暴走し、あちこちで爆発が起きている。
 床が傾き、海水が浸入し始めた。
「揚羽!」
 蓮が駆け寄り、崩れ落ちそうになる揚羽を抱きとめる。
 彼女の左肩からは鮮血が流れているが、傷は急所を外れていた。
「……痛っ……。まったく、高い修理代を請求してやるんだから……」
「ああ、いくらでも払う。一生かけてな」
 疾風は自分の着物を裂き、揚羽の傷を縛る。
 脱出ルートはない。大凧は使い捨てた。海面までは五十メートル。飛び込めば瓦礫と渦潮に巻き込まれて死ぬ。
「……飛ぶぞ、揚羽」
「え?」
 疾風が指差したのは、司令室の壁に飾られていた、ヴォイドの巨大なシンボルマークが描かれたタペストリー(旗)だった。
 分厚く、丈夫な化学繊維の布だ。
 蓮は刀でタペストリーを切り裂き、四隅にロープを結びつけた。
 即席のパラグライダー、いや、巨大な**「風呂敷」**だ。
「昔、里の修行でやっただろう? 『ムササビの術・大(オオ)ムササビ』だ」
「……あんな子供騙しの術を、こんな死地でやるなんてね」
 揚羽は痛みをこらえて笑った。
 爆発音が迫る。天井が崩れ落ちてくる。
「行くぞ!」
「ええ、地獄の底まで付き合ってあげる!」
 二人は巨大な布を広げ、爆風を背に受けて、窓の外の虚空へと飛び出した。
 ゴオオオオッ!!
 吹き荒れる風が布を孕み、二人を宙に浮かべる。
 眼下には、燃えながら沈みゆく鋼鉄の城。
 夜明けの空を、二匹のムササビが――いや、一対の蝶と影が、海風に乗って滑空していく。
 それは、どんな最新鋭戦闘機よりも美しく、自由な姿だった。
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