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第30章:残り香(エピローグ)
VIPルーム。
疾風はソファに深く腰掛け、琥珀色の液体が入ったグラスを揺らしていた。
隣に、揚羽が座る。
香水の匂い。ジャスミンと、微かな火薬の残り香。
「出世したそうじゃない、鬼教官殿」
「お前こそ。店の改装費、相当かかったんじゃないか?」
「ええ。だから今日からは、正規料金をいただくわよ」
揚羽が蓮のグラスに自分のグラスを軽く合わせる。
カチャン。
澄んだ音が響く。
「……疾風。世界は変わったかしら」
「さあな。だが、俺たちは変わった。……いや、思い出しただけか」
疾風は懐から、一枚の紙を取り出した。
それは、あの炎上する忍者庁から持ち出した、手書きの「借用書」だった。
『命の借り、必ず返す』と書かれている。
揚羽はそれを見て、くすりと笑った。
そしてライターを取り出し、その紙に火をつけた。
紙は燃え上がり、灰皿の上で灰になっていく。
「貸し借りなしよ。……だって、貴方は私の命(ハート)を盗んだ大泥棒なんだから」
「……それは、忍者庁管轄外の犯罪だな」
二人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。
デジタルな記録には残らない。
ただ、二人の記憶と、この夜の空気だけが知っている物語。
「いらっしゃいませ、『胡蝶』へようこそ」
揚羽の言葉と共に、店内に古き良きダンス・POPが流れ始める。
夜はまだ長い。
影の英雄たちの休息は、誰にも邪魔されることなく続いていくのだった。
【完】
疾風はソファに深く腰掛け、琥珀色の液体が入ったグラスを揺らしていた。
隣に、揚羽が座る。
香水の匂い。ジャスミンと、微かな火薬の残り香。
「出世したそうじゃない、鬼教官殿」
「お前こそ。店の改装費、相当かかったんじゃないか?」
「ええ。だから今日からは、正規料金をいただくわよ」
揚羽が蓮のグラスに自分のグラスを軽く合わせる。
カチャン。
澄んだ音が響く。
「……疾風。世界は変わったかしら」
「さあな。だが、俺たちは変わった。……いや、思い出しただけか」
疾風は懐から、一枚の紙を取り出した。
それは、あの炎上する忍者庁から持ち出した、手書きの「借用書」だった。
『命の借り、必ず返す』と書かれている。
揚羽はそれを見て、くすりと笑った。
そしてライターを取り出し、その紙に火をつけた。
紙は燃え上がり、灰皿の上で灰になっていく。
「貸し借りなしよ。……だって、貴方は私の命(ハート)を盗んだ大泥棒なんだから」
「……それは、忍者庁管轄外の犯罪だな」
二人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。
デジタルな記録には残らない。
ただ、二人の記憶と、この夜の空気だけが知っている物語。
「いらっしゃいませ、『胡蝶』へようこそ」
揚羽の言葉と共に、店内に古き良きダンス・POPが流れ始める。
夜はまだ長い。
影の英雄たちの休息は、誰にも邪魔されることなく続いていくのだった。
【完】
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