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第3章 カロリー基準による経済活動の再記述
3.2.1 Metabolic Ledger による記録操作|記録操作としてのカロリー移動
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本節では、前節で定義したカロリー基準を、実際の経済活動として記録するための操作体系について述べる。ここで用いられる Metabolic Ledger(以下ML)は、地球外ハビタットにおいて既に一般的に流通している記録装置であり、本研究が新たに提案する技術ではない。本節の関心は、その内部構造や作動原理ではなく、どのような記録操作が可能であり、それが経済活動の再記述にどのような性質を与えるかにある。
ML は、個体に紐づく形で運用され、カロリーの流入、保有、流出を一貫した形式で記録する。この記録は、従来の貨幣的取引記録と同様に、時間順に蓄積され、後から参照・集計が可能である。ただし、ここで記録されるのは価値の評価結果ではなく、エネルギー移動の履歴である点に特徴がある。
記録操作は、大きく三つに整理できる。第一に、カロリーの受取に相当する操作である。これは、生産、供給、あるいは他者からの移転によって、利用可能なカロリーが増加したことを記録する操作であり、その発生源が何であるかは、必ずしも同一の意味を持たない。重要なのは、増加が測定可能な形で確定したという事実である。
第二に、移転および消費に対応する操作である。カロリーは、他者への移転や、個体自身による吸収を通じて減少する。これらの操作は、いずれも ML 上では減算として記録されるが、経済的意味は必ずしも同一ではない。本研究では、この差異を詳細に分類することを目的としない。重要なのは、すべての減少が同一の尺度で記録されるという点である。
第三に、保有状態の更新である。ML は、ある時点におけるカロリー残高を常に保持しており、これは蓄積可能なエネルギー量の指標として機能する。この残高は、必ずしも即時に消費されることを前提としない。したがって、従来の貨幣における価値保存機能と類似した振る舞いを示すが、その対象は抽象的価値ではなく、将来的な生存行為に利用可能なエネルギーである。
このような記録操作の特徴は、評価と記録が分離されている点にある。ML は、ある行為が望ましいか、効率的か、正当であるかといった判断を行わない。ただ、カロリーの移動があったという事実を、一定の規則に従って記録する。この非評価性は、経済活動を倫理的・規範的議論から切り離し、後から多様な解釈を可能にする。
また、記録主体が特定の中央機関に限定されない点も重要である。ML は、制度的には広く共有されているが、運用上は個体単位で完結している。この構造により、カロリー基準の記録は、国家や企業といった上位主体の意思決定から独立して成立する。一方で、その記録が集計されることで、集団レベルの分析が可能になるという二重性を持つ。
以上のように、ML による記録操作は、経済活動をカロリー基準で再記述するための最低限の条件を満たしている。すなわち、測定可能であり、記録可能であり、比較可能であるという条件である。本研究において、この装置は解決策ではなく、記述を可能にする前提として扱われる。
次節では、これらの記録操作が交換や配分といった経済行為とどのように接続されるかを検討し、カロリー基準がどの程度まで既存の経済活動を並行的に表現し得るかを示す。
【参考文献】
マルセル・グラント『保険数理における身体リスクの定量化史』(アクチュアリー・プレス、2168)
イリーナ・ペトロワ『労働者生涯価値――獲得コストと投資判断』(ノヴァ労働研究叢書、2174)
ダニエル・S・ホフマン『QALYという思想――生存年数と生活の質の交換可能性』(ヘルスエコノミクス・レビュー社、2171)
リチャード・E・コールマン『戦時における人的損耗の経済評価』(ストラテジック・アナリシス出版、2162)
ML は、個体に紐づく形で運用され、カロリーの流入、保有、流出を一貫した形式で記録する。この記録は、従来の貨幣的取引記録と同様に、時間順に蓄積され、後から参照・集計が可能である。ただし、ここで記録されるのは価値の評価結果ではなく、エネルギー移動の履歴である点に特徴がある。
記録操作は、大きく三つに整理できる。第一に、カロリーの受取に相当する操作である。これは、生産、供給、あるいは他者からの移転によって、利用可能なカロリーが増加したことを記録する操作であり、その発生源が何であるかは、必ずしも同一の意味を持たない。重要なのは、増加が測定可能な形で確定したという事実である。
第二に、移転および消費に対応する操作である。カロリーは、他者への移転や、個体自身による吸収を通じて減少する。これらの操作は、いずれも ML 上では減算として記録されるが、経済的意味は必ずしも同一ではない。本研究では、この差異を詳細に分類することを目的としない。重要なのは、すべての減少が同一の尺度で記録されるという点である。
第三に、保有状態の更新である。ML は、ある時点におけるカロリー残高を常に保持しており、これは蓄積可能なエネルギー量の指標として機能する。この残高は、必ずしも即時に消費されることを前提としない。したがって、従来の貨幣における価値保存機能と類似した振る舞いを示すが、その対象は抽象的価値ではなく、将来的な生存行為に利用可能なエネルギーである。
このような記録操作の特徴は、評価と記録が分離されている点にある。ML は、ある行為が望ましいか、効率的か、正当であるかといった判断を行わない。ただ、カロリーの移動があったという事実を、一定の規則に従って記録する。この非評価性は、経済活動を倫理的・規範的議論から切り離し、後から多様な解釈を可能にする。
また、記録主体が特定の中央機関に限定されない点も重要である。ML は、制度的には広く共有されているが、運用上は個体単位で完結している。この構造により、カロリー基準の記録は、国家や企業といった上位主体の意思決定から独立して成立する。一方で、その記録が集計されることで、集団レベルの分析が可能になるという二重性を持つ。
以上のように、ML による記録操作は、経済活動をカロリー基準で再記述するための最低限の条件を満たしている。すなわち、測定可能であり、記録可能であり、比較可能であるという条件である。本研究において、この装置は解決策ではなく、記述を可能にする前提として扱われる。
次節では、これらの記録操作が交換や配分といった経済行為とどのように接続されるかを検討し、カロリー基準がどの程度まで既存の経済活動を並行的に表現し得るかを示す。
【参考文献】
マルセル・グラント『保険数理における身体リスクの定量化史』(アクチュアリー・プレス、2168)
イリーナ・ペトロワ『労働者生涯価値――獲得コストと投資判断』(ノヴァ労働研究叢書、2174)
ダニエル・S・ホフマン『QALYという思想――生存年数と生活の質の交換可能性』(ヘルスエコノミクス・レビュー社、2171)
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