閏述|あるゾウムシ類の特異行動について

八角泰三

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同期しない個体の発見

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観察を続けるうちに、明確な例外があることに気づいた。
触角を欠損している個体は、例外なく同期行動を示さなかったのである。

最初は偶然だと思った。
しかし、同期している個体の触角を切断してみると、その個体もまた、直後から同期しなくなった。

この段階に至るまで、私は外科的な検証という発想に思い至っていなかった。
昆虫学者であれば、もっと早い段階で疑っていたのかもしれない。
それでも、結果として、彼らが何らかの情報を知覚し、それに基づいて同期していることだけは、もはや否定しようがなくなった。

切断した触角の基部を顕微鏡下で観察した。
内部には、生体組織としては異様に整った空隙構造が見られた。
空隙は途切れることなく連続しており、しかも、その配置は単純な管状構造や神経束とは明らかに異なっていた。

その形状を見たとき、私はそれを「奇妙だ」とは感じなかった。
むしろ、どこかで見たことがあるという印象が先に立った。

その断面に現れる構造は、私が知るいくつかの数学的図版を連想させるものだった(Fig.5)。


Fig.5 a.触角断面の顕微鏡画像 b.正八胞体(4次元超立方体の2次元投影図)
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