9 / 9
Day46-⑨ 遊園地獄
しおりを挟む
『地獄』とは言ったが、比喩表現なんかじゃない。
見渡す限り土は火が点いて焼け爛れてるし、そこかしこに拷問用具が何気無く置いてあるし、う~わ、ウンコ臭ッ!! 真っ茶色なあの沼? 何アレ!? 伝承通りならウンコとオシッコと膿と腐肉と、溶けた銅で出来てるって事!? あっ、目を凝らすと色んな虫ケラが中でウジュルウジュルしてる……。
「オイ留美、お前が悪の弟子だから私まで地獄に道連れになっちまっただろが、どうしてくれる」
「俺が悪の弟子なら、オメーは悪の師匠だッ!!」
いや、コイツが悪の師匠であっても、俺の善悪に無関係か。
「まあ良い。私達は裸足でも大丈夫な様だし、少しここを調べよう。お前が先頭な」
「何でだよ」
「探検ってのは先頭が一番危険なんだぞ?」
「だったらオメーが行けィ!」
「だって私、単独行動の時は毎回先頭だしィーッ」
「良いから行け」
「何だお前、師匠でありハゲを先に行かせんのか?」
「行けっつってんでしょ!」
「はいはい……」
渋々ながら、一壊歯車を引き摺って進む兄やん。こんな調子だから、勇示さんが兄やんを軽く扱うのも無理は無いんだ。
しっかしまあ……、何て汚らしい所なんだ。悪臭は濃く漂ってるし、蝿っぽいのも霧の様に群れを成して飛び回ってる。刀剣やら金串やら大鍋やらは、どれもこれも血錆が浮いてるし。やれやれ……、粛清後の約2年間を思い出すよ。
……のだが、明らかにおかしい。獄卒も亡者も居ない。てっきり阿鼻叫喚なのかとも想像してたが、そうでもない。聞こえるのはゴウゴウと音を立てて燃える火炎ばかり。
いや、耳を澄ますと違う。微かだが、工場する音が聞こえて来る。何かを叩く音、擦る音が……。頂が見えない位に高い塀の向こうから……。
「オイハゲ、あっちから……」
「確かに物音が聞こえるな。お前はここに一人で居ろ」
「ちょっと待て、一人にするなーッ!」
「だろうと思ったから、折角一人にしようとしたのに」
「ゴチャゴチャうっさい!」
『ねーたん、怖いプー……』
「あっ、プーちゃんゴメンね? 全部このハゲが悪いんだからね?」
警戒と小芝居をしながらも、俺達は塀のドアを開けて中を覗いてみた。
すると……、中の光景は、確かに工事現場だった。
ただの工事現場じゃない。亡者どころか鬼やら猛獣やら怪物やらが揃って鉄球付きの手枷足枷を着けられ、痩せ細った上に泣き叫びながら、素手で地面を掘ったり木や鉄筋を噛み切ったりと作業を続けている。しかも、十王らしき人達まで一緒だ。どうなってるんだ一体……。
そう言えばここは、土煙が多少舞ってはいるが、塀の外より断然空気が良い。
作業の進捗は、地均しがやっと終わった所らしく、今は建物の基礎を作る事に精を出している様だ。
そこで、やけに汚い声が上空から響いた。
「ようこそいらっしゃい。……兄貴! そしてその愛弟子の留美!」
ハッとして俺と兄やんは空を見上げると、そこには工事現場によく在るプレハブの事務室が浮いており、そこから一人の人影が跳び降りて来た。
その人影は、俺達の目の前にふわりと着地。その容姿は、ドカヘルを被ったスーツ姿の白人の男。如何にも乗っ取り屋や支配人と言った出で立ちだ。
「ようトワイライト。地獄らしき所で何してる? そんなに悪い事はしてないよな? ちょっくら連続大量・強盗強姦放火誘拐殺人犯になった位で」
ゴミやんけ……。
しかしコイツがトワイライト、か……。勇示さんがチラッと言ってた、全能の能力を持つと嘯く第五生物、だったかな。
「いやいや兄貴ィ。幾ら何でもそんなに悪かないって。核爆発を乱発したのが精々だって」
もっと悪い……。
で、トワイライトは至ってにこやかに話を続ける。
「でさ、三日前にまた兄貴に殺られたろ? そん時、『地獄にもお前の居場所は無い』とか言ってたじゃん? だから試しに地獄に来てみたって訳よ」
「住めば都、とはならなかったって感じだな」
「そうなのよ。だから今コイツ等を扱き使って、急ピッチで工事をさせてるんだけどさ――」
道具も与えずに何が『急ピッチ』だ……。
と内心ツッコむ暇も有らばこそ、トワイライトは一瞬の内に亡者の一人に近寄るといきなり殴り飛ばし、その亡者は作ってる途中の基礎を深々と削りながら、遥か彼方にブッ飛んで行った。
「元々チンタラやってるし、この通り俺の発破掛けでの妨害は入るしで、中々作業が進まねんだわ」
工事をさせる気無いだろ……。
するとトワイライトは、今度は俺を指差した。
「そこの留美さんとやら。きっと『建築を名目にしたイジメだろ』とかって思っただろうが、俺としてもプランは有るのさ」
結構勘が鋭いと言うか、空気の読めるタイプと言うか……。
トワイライトはこう続ける。
「今作らせてる建物は、天国行きが決まった者が天国の代わりに来る、謂わばVIPルームさ。兄貴は当然として、兄貴の親類縁者や友人知人、一族郎党は入居確約済みだ、いつでも安心して死ね。因みに天国は壊滅させたから悪しからず」
「それで?」
「まー聞けや。でよ、改装が済んだ暁には地獄は、亡者や獄卒を虐待すると言うプレイを体験したり、ショーを観たり出来るテーマパークに生まれ変わるって訳よ、こんな風に」
言いながらトワイライトは虚空から溶鋼で満たされた鍋を取り出すと、念力らしき力で一匹の鬼を引き寄せてソイツを逆さまにすると、また虚空から出した漏斗をケツの穴に突っ込み、溶けた金属を流し込む……。
大気を震わす程の鬼の悲鳴が……、あーあー! 聞こえない聞こえない聞こえなーい!
「なーに、コイツ等を幾らイジメようが気に病む事は無い。亡者は当然として獄卒共は、今まで懲罰を食らわしておきながら『自分達がやられるのは御免被る』とは通らないだろ? なっなっなっ?」
トワイライトは馴れ馴れしく鬼に尋ねるが、返事を待たずにその頭を踏み潰した。
「大体にして仏教の地獄じゃ、風が吹くとすぐ生き返るしな……」
そのデモンストレーションとしてトワイライトは、風が吹いて鬼が生き返る、その鬼の頭を踏み潰す、を何度か繰り返してみせた。
「ざっ、残酷だっ……!」
あ、ヤバい。この状況下で敵を非難してしまった……!
案の定トワイライトは、細くした目とへの字口の表情で俺を見た。頭来たかな……?
何をするかと思いきや、トワイライトが指パッチンをすると、急に厩舎らしき所に俺達はワープした。
そこでは女の餓鬼達が、皆して出産の真っ最中であると来た。
そしてトワイライトはおもむろに一匹の餓鬼のマンコに手を肩まで突っ込むと、子供を無理矢理引き摺り出して、デカい金串でその子供を串刺しにした。
「アトラクションがお気に召さないお方の為にも、地獄ならではの御当地グルメも考えてよ、それがコレだ……」
トワイライトはその子供を足元の地面の炎で丸焼きにすると、ムシャムシャと食ってみせた。
「無害なのは当然として、遺伝子改造したから牛肉みたいで旨い! 料理名もちょっと洒落て、『餓鬼ガキのぉ~丸焼きィ!!』。なんちゃってな?」
そんな事より、その子供の母親餓鬼が嘆いてるんですけど……?
「おっと、このメス餓鬼共にも同情する必要は無い。何しろ生前の悪事のカドで、実子しか食えないタイプの餓鬼なんだからなぁ。今だって、自分のメシを取られて怒ってるのかもな……」
そうだろうか……? く、狂ってる……!
ドン引きしてると、いつの間にかさっきの工事現場に戻っていた。
そこで、珍しく暫く黙っていた兄やんが口を開いた。
「私達は地獄にお呼ばれしてる場合じゃないんだがな……」
「知ってるよ? 現世でバケモノ共が彷徨き回ってるんだろ? その真相を話してやろうとも思って呼んだのさ」
えっ……!? し、知りたい!
「知りたいだろう? でもタダでは教えねーよ。丁度退屈してたんだ。俺達を倒したら教えて、あ、げ、る。おいハードワーカー!」
トワイライトが高らかに何者かを呼ぶと、その頭上に太さも長さも何メートルも有る爆弾らしき物が現れた。しかも中央の放射線マークのレリーフは、真ん中の丸がリボンをした頭蓋骨になっている。
「呼んだ~?」
そのハードワーカーとやらはちっちゃい女の子みたいな声で訊くと、トワイライトは作業してる人員を指差した。
「人払いだ。起爆」
「良いよ~!」
快く返事するや否や、ハードワーカーは太陽より眩い閃光を放つ……。
すると次の瞬間時間がスローモーションになり、亡者や獄卒や十王は衣服が燃え上がって肌に焼き付き、続いて髪が飛び散って目は飛び出し、肉体は赤黒く変色しながら縮み上がって行く……!
その光景は、以前反戦教育のアニメで観た、広島や長崎の原爆の様子その物だった。またしてもトラウマが蘇って来る……。まあ当時からして兄やんは、「あの人達は爆風より速く動いていたのが凄いが」とか言ってたが。
そして一拍遅れて発生した強力過ぎる爆風が、炭のマネキンと化した犠牲者を粉々にして吹き飛ばしてしまった。
今のスローな光景は幻覚……?
「そして、留美さんの相手には……、『トワイライト・メデューサ』! 出番だ!」
お次は何だと思いきや、一人の大女がこっちに歩いて来る。
名前の通り、ただの女じゃない。遠目から見たシルエットは触覚と尻尾が一本ずつ生えたグラマーな女だが……。
接近するとその容貌が明らかになった。蛇腹を人間の女型に膨らませた大蛇だ!? 身長も、女部分だけで2メートル位有るかも知れない。こんなヤツと戦えってのか……!?
で、そのメデューサ。女の頭頂部から伸びている形の、蛇の頭が流暢に喋った。
「ちょっとトワイライト? アタシにイオタの方を譲ってよ。こないだ散々コケにされたんだからさぁ……」
どうやらさっきの話に有った三日前の時に、兄やんに虐殺ならぬギャグ殺をされたらしい。
その兄やんも、
「何だ、何かと思えば『トワイライト・バジリスク』の変化バージョンか」
どうやらこれの他に基本形態が有るみたいだ。
そしてメデューサの要望が認められて、俺がトワイライトを相手にする事になってしまった。どっちにしろ勝てる気がしない……。
「さあて、無限に回復出来るから、そっちが勝つまで殺し合いでもしようじゃねーか……!」
トワイライトの戦意に応じて、俺達は身構えた。
と、その時、駆け足の足音がこっちに近付いて来た!
「肉肉肉ぅぅ! 肉っ! 肉ぅぅぅぅ肉!!」
「あ」
兄やんはその声の主に驚きもしない様だが、俺は違う。肉好娘!? 何故ここにも!?
で、肉好娘はトワイライトに狙いを定めたらしく、彼の眼前でピタッと止まった。
「な、何だお前は……」
やっぱ初対面だと引くよなぁ……。トワイライト・メデューサまで驚き、戸惑っている……。
「肉?」
「……はい?」
あ~あ……。
「肉ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!」
不意に肉好娘はトワイライトに飛び掛かり、奴の首筋に食らい付きながら押し倒した!
「な、何だコイツはぁぁ!?」
哀れトワイライト、返答を間違えたので肉好娘の餌食になってしまった……。
トワイライトは食われながら、死期を悟った人の様に、息も絶え絶えといった感じで手招きしながら言う。
「兄貴……、よくぞ俺を倒した……。約束通り、教えて、やるよ……」
倒したのは肉好娘だろうが。しかも両方の肺を引き抜かれていながら何故喋れる!?
で、トワイライトは耳を近付けた兄やんに、小声で何事か耳打ちをした。
「うん……、うん……、……ふーん……。……本当なのか……?」
「確かめる術は、兄貴は持ってる筈だろ……?」
何を教えてるんだろう……。
「そうだ、地獄からの、出口は……。兄貴達が来た部屋に入って、また戸を、開ければ、元の世界に戻れる……、グフッ……」
トワイライトは臭い演技をしながら力無く倒れた。御愁傷様でーす……。肉好娘も腹が落ち着いたらしく、少しは大人しくなった。
兄やんは肉好娘を、その片脚を引っ張る事で引き摺り、ノコギリ部屋に向かって歩き始めた。
「さて、さっさと元の世界に帰ろう。私は急用が出来た」
「何をするって?」
「人子切 鉈式の試し切りに決まってるだろうが……」
すんげーヤな予感……。
ついでにトワイライト・メデューサは、何をするか迷ってか俺達に手を振りながら見送っている……。
見渡す限り土は火が点いて焼け爛れてるし、そこかしこに拷問用具が何気無く置いてあるし、う~わ、ウンコ臭ッ!! 真っ茶色なあの沼? 何アレ!? 伝承通りならウンコとオシッコと膿と腐肉と、溶けた銅で出来てるって事!? あっ、目を凝らすと色んな虫ケラが中でウジュルウジュルしてる……。
「オイ留美、お前が悪の弟子だから私まで地獄に道連れになっちまっただろが、どうしてくれる」
「俺が悪の弟子なら、オメーは悪の師匠だッ!!」
いや、コイツが悪の師匠であっても、俺の善悪に無関係か。
「まあ良い。私達は裸足でも大丈夫な様だし、少しここを調べよう。お前が先頭な」
「何でだよ」
「探検ってのは先頭が一番危険なんだぞ?」
「だったらオメーが行けィ!」
「だって私、単独行動の時は毎回先頭だしィーッ」
「良いから行け」
「何だお前、師匠でありハゲを先に行かせんのか?」
「行けっつってんでしょ!」
「はいはい……」
渋々ながら、一壊歯車を引き摺って進む兄やん。こんな調子だから、勇示さんが兄やんを軽く扱うのも無理は無いんだ。
しっかしまあ……、何て汚らしい所なんだ。悪臭は濃く漂ってるし、蝿っぽいのも霧の様に群れを成して飛び回ってる。刀剣やら金串やら大鍋やらは、どれもこれも血錆が浮いてるし。やれやれ……、粛清後の約2年間を思い出すよ。
……のだが、明らかにおかしい。獄卒も亡者も居ない。てっきり阿鼻叫喚なのかとも想像してたが、そうでもない。聞こえるのはゴウゴウと音を立てて燃える火炎ばかり。
いや、耳を澄ますと違う。微かだが、工場する音が聞こえて来る。何かを叩く音、擦る音が……。頂が見えない位に高い塀の向こうから……。
「オイハゲ、あっちから……」
「確かに物音が聞こえるな。お前はここに一人で居ろ」
「ちょっと待て、一人にするなーッ!」
「だろうと思ったから、折角一人にしようとしたのに」
「ゴチャゴチャうっさい!」
『ねーたん、怖いプー……』
「あっ、プーちゃんゴメンね? 全部このハゲが悪いんだからね?」
警戒と小芝居をしながらも、俺達は塀のドアを開けて中を覗いてみた。
すると……、中の光景は、確かに工事現場だった。
ただの工事現場じゃない。亡者どころか鬼やら猛獣やら怪物やらが揃って鉄球付きの手枷足枷を着けられ、痩せ細った上に泣き叫びながら、素手で地面を掘ったり木や鉄筋を噛み切ったりと作業を続けている。しかも、十王らしき人達まで一緒だ。どうなってるんだ一体……。
そう言えばここは、土煙が多少舞ってはいるが、塀の外より断然空気が良い。
作業の進捗は、地均しがやっと終わった所らしく、今は建物の基礎を作る事に精を出している様だ。
そこで、やけに汚い声が上空から響いた。
「ようこそいらっしゃい。……兄貴! そしてその愛弟子の留美!」
ハッとして俺と兄やんは空を見上げると、そこには工事現場によく在るプレハブの事務室が浮いており、そこから一人の人影が跳び降りて来た。
その人影は、俺達の目の前にふわりと着地。その容姿は、ドカヘルを被ったスーツ姿の白人の男。如何にも乗っ取り屋や支配人と言った出で立ちだ。
「ようトワイライト。地獄らしき所で何してる? そんなに悪い事はしてないよな? ちょっくら連続大量・強盗強姦放火誘拐殺人犯になった位で」
ゴミやんけ……。
しかしコイツがトワイライト、か……。勇示さんがチラッと言ってた、全能の能力を持つと嘯く第五生物、だったかな。
「いやいや兄貴ィ。幾ら何でもそんなに悪かないって。核爆発を乱発したのが精々だって」
もっと悪い……。
で、トワイライトは至ってにこやかに話を続ける。
「でさ、三日前にまた兄貴に殺られたろ? そん時、『地獄にもお前の居場所は無い』とか言ってたじゃん? だから試しに地獄に来てみたって訳よ」
「住めば都、とはならなかったって感じだな」
「そうなのよ。だから今コイツ等を扱き使って、急ピッチで工事をさせてるんだけどさ――」
道具も与えずに何が『急ピッチ』だ……。
と内心ツッコむ暇も有らばこそ、トワイライトは一瞬の内に亡者の一人に近寄るといきなり殴り飛ばし、その亡者は作ってる途中の基礎を深々と削りながら、遥か彼方にブッ飛んで行った。
「元々チンタラやってるし、この通り俺の発破掛けでの妨害は入るしで、中々作業が進まねんだわ」
工事をさせる気無いだろ……。
するとトワイライトは、今度は俺を指差した。
「そこの留美さんとやら。きっと『建築を名目にしたイジメだろ』とかって思っただろうが、俺としてもプランは有るのさ」
結構勘が鋭いと言うか、空気の読めるタイプと言うか……。
トワイライトはこう続ける。
「今作らせてる建物は、天国行きが決まった者が天国の代わりに来る、謂わばVIPルームさ。兄貴は当然として、兄貴の親類縁者や友人知人、一族郎党は入居確約済みだ、いつでも安心して死ね。因みに天国は壊滅させたから悪しからず」
「それで?」
「まー聞けや。でよ、改装が済んだ暁には地獄は、亡者や獄卒を虐待すると言うプレイを体験したり、ショーを観たり出来るテーマパークに生まれ変わるって訳よ、こんな風に」
言いながらトワイライトは虚空から溶鋼で満たされた鍋を取り出すと、念力らしき力で一匹の鬼を引き寄せてソイツを逆さまにすると、また虚空から出した漏斗をケツの穴に突っ込み、溶けた金属を流し込む……。
大気を震わす程の鬼の悲鳴が……、あーあー! 聞こえない聞こえない聞こえなーい!
「なーに、コイツ等を幾らイジメようが気に病む事は無い。亡者は当然として獄卒共は、今まで懲罰を食らわしておきながら『自分達がやられるのは御免被る』とは通らないだろ? なっなっなっ?」
トワイライトは馴れ馴れしく鬼に尋ねるが、返事を待たずにその頭を踏み潰した。
「大体にして仏教の地獄じゃ、風が吹くとすぐ生き返るしな……」
そのデモンストレーションとしてトワイライトは、風が吹いて鬼が生き返る、その鬼の頭を踏み潰す、を何度か繰り返してみせた。
「ざっ、残酷だっ……!」
あ、ヤバい。この状況下で敵を非難してしまった……!
案の定トワイライトは、細くした目とへの字口の表情で俺を見た。頭来たかな……?
何をするかと思いきや、トワイライトが指パッチンをすると、急に厩舎らしき所に俺達はワープした。
そこでは女の餓鬼達が、皆して出産の真っ最中であると来た。
そしてトワイライトはおもむろに一匹の餓鬼のマンコに手を肩まで突っ込むと、子供を無理矢理引き摺り出して、デカい金串でその子供を串刺しにした。
「アトラクションがお気に召さないお方の為にも、地獄ならではの御当地グルメも考えてよ、それがコレだ……」
トワイライトはその子供を足元の地面の炎で丸焼きにすると、ムシャムシャと食ってみせた。
「無害なのは当然として、遺伝子改造したから牛肉みたいで旨い! 料理名もちょっと洒落て、『餓鬼ガキのぉ~丸焼きィ!!』。なんちゃってな?」
そんな事より、その子供の母親餓鬼が嘆いてるんですけど……?
「おっと、このメス餓鬼共にも同情する必要は無い。何しろ生前の悪事のカドで、実子しか食えないタイプの餓鬼なんだからなぁ。今だって、自分のメシを取られて怒ってるのかもな……」
そうだろうか……? く、狂ってる……!
ドン引きしてると、いつの間にかさっきの工事現場に戻っていた。
そこで、珍しく暫く黙っていた兄やんが口を開いた。
「私達は地獄にお呼ばれしてる場合じゃないんだがな……」
「知ってるよ? 現世でバケモノ共が彷徨き回ってるんだろ? その真相を話してやろうとも思って呼んだのさ」
えっ……!? し、知りたい!
「知りたいだろう? でもタダでは教えねーよ。丁度退屈してたんだ。俺達を倒したら教えて、あ、げ、る。おいハードワーカー!」
トワイライトが高らかに何者かを呼ぶと、その頭上に太さも長さも何メートルも有る爆弾らしき物が現れた。しかも中央の放射線マークのレリーフは、真ん中の丸がリボンをした頭蓋骨になっている。
「呼んだ~?」
そのハードワーカーとやらはちっちゃい女の子みたいな声で訊くと、トワイライトは作業してる人員を指差した。
「人払いだ。起爆」
「良いよ~!」
快く返事するや否や、ハードワーカーは太陽より眩い閃光を放つ……。
すると次の瞬間時間がスローモーションになり、亡者や獄卒や十王は衣服が燃え上がって肌に焼き付き、続いて髪が飛び散って目は飛び出し、肉体は赤黒く変色しながら縮み上がって行く……!
その光景は、以前反戦教育のアニメで観た、広島や長崎の原爆の様子その物だった。またしてもトラウマが蘇って来る……。まあ当時からして兄やんは、「あの人達は爆風より速く動いていたのが凄いが」とか言ってたが。
そして一拍遅れて発生した強力過ぎる爆風が、炭のマネキンと化した犠牲者を粉々にして吹き飛ばしてしまった。
今のスローな光景は幻覚……?
「そして、留美さんの相手には……、『トワイライト・メデューサ』! 出番だ!」
お次は何だと思いきや、一人の大女がこっちに歩いて来る。
名前の通り、ただの女じゃない。遠目から見たシルエットは触覚と尻尾が一本ずつ生えたグラマーな女だが……。
接近するとその容貌が明らかになった。蛇腹を人間の女型に膨らませた大蛇だ!? 身長も、女部分だけで2メートル位有るかも知れない。こんなヤツと戦えってのか……!?
で、そのメデューサ。女の頭頂部から伸びている形の、蛇の頭が流暢に喋った。
「ちょっとトワイライト? アタシにイオタの方を譲ってよ。こないだ散々コケにされたんだからさぁ……」
どうやらさっきの話に有った三日前の時に、兄やんに虐殺ならぬギャグ殺をされたらしい。
その兄やんも、
「何だ、何かと思えば『トワイライト・バジリスク』の変化バージョンか」
どうやらこれの他に基本形態が有るみたいだ。
そしてメデューサの要望が認められて、俺がトワイライトを相手にする事になってしまった。どっちにしろ勝てる気がしない……。
「さあて、無限に回復出来るから、そっちが勝つまで殺し合いでもしようじゃねーか……!」
トワイライトの戦意に応じて、俺達は身構えた。
と、その時、駆け足の足音がこっちに近付いて来た!
「肉肉肉ぅぅ! 肉っ! 肉ぅぅぅぅ肉!!」
「あ」
兄やんはその声の主に驚きもしない様だが、俺は違う。肉好娘!? 何故ここにも!?
で、肉好娘はトワイライトに狙いを定めたらしく、彼の眼前でピタッと止まった。
「な、何だお前は……」
やっぱ初対面だと引くよなぁ……。トワイライト・メデューサまで驚き、戸惑っている……。
「肉?」
「……はい?」
あ~あ……。
「肉ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!」
不意に肉好娘はトワイライトに飛び掛かり、奴の首筋に食らい付きながら押し倒した!
「な、何だコイツはぁぁ!?」
哀れトワイライト、返答を間違えたので肉好娘の餌食になってしまった……。
トワイライトは食われながら、死期を悟った人の様に、息も絶え絶えといった感じで手招きしながら言う。
「兄貴……、よくぞ俺を倒した……。約束通り、教えて、やるよ……」
倒したのは肉好娘だろうが。しかも両方の肺を引き抜かれていながら何故喋れる!?
で、トワイライトは耳を近付けた兄やんに、小声で何事か耳打ちをした。
「うん……、うん……、……ふーん……。……本当なのか……?」
「確かめる術は、兄貴は持ってる筈だろ……?」
何を教えてるんだろう……。
「そうだ、地獄からの、出口は……。兄貴達が来た部屋に入って、また戸を、開ければ、元の世界に戻れる……、グフッ……」
トワイライトは臭い演技をしながら力無く倒れた。御愁傷様でーす……。肉好娘も腹が落ち着いたらしく、少しは大人しくなった。
兄やんは肉好娘を、その片脚を引っ張る事で引き摺り、ノコギリ部屋に向かって歩き始めた。
「さて、さっさと元の世界に帰ろう。私は急用が出来た」
「何をするって?」
「人子切 鉈式の試し切りに決まってるだろうが……」
すんげーヤな予感……。
ついでにトワイライト・メデューサは、何をするか迷ってか俺達に手を振りながら見送っている……。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
筆下ろし
wawabubu
青春
私は京町家(きょうまちや)で書道塾の師範をしております。小学生から高校生までの塾生がいますが、たいてい男の子は大学受験を控えて塾を辞めていきます。そんなとき、男の子には私から、記念の作品を仕上げることと、筆下ろしの儀式をしてあげて、思い出を作って差し上げるのよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる