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二章 人間での生活
第一話 チンピラ(強め)に絡まれた件
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森のなかにて。
(なんでこんなことになったんだろう)
そう思いながら弘樹は目の前に横たわるおじいさんを見ていた。それは数分ほど遡る。
◇
弘樹は地上にやってきてテンションが高くなっていた。
やったぞ,やってきたぞ,地上。それにしても転移門ていうくらいだから門なのかと思ったけど,魔法陣なんだな。そこは少し残念だ。
「そうですね。私も初めて見ました。そうだ,マスターには一つ大事なことを言い忘れていました」
ん?
(それは私はしゃべる感じじゃなくて心の中に話しかける感じで弘樹に話かけることにします)
分かったが,それはなんでだ。俺的にはあんまり変わってない気がするんだが。
(そんなことないですよ。むしろかなり変わっていますよ。これの方が私的に楽なんです)
お,おう。そうか。ならしょうがないな。ま,俺的にはあんま変わらないから行くか。
そう言って俺は歩き出す。こうして,俺たちのダンジョン生活が終わり,新しいステージへと行くのであった。
太陽の光,まぶしいな。これは最高に気持ちいいぞ。ほんと,今までなんでこんなに気持ちいいと気づかなかったんだろ。はあ,ほんとに幸せだ。
だが,そんな弘樹の愉快な気持ちを打ち砕くかのようになんの前触れもなくそいつはその場に出現した。
「あなたが弘樹殿ですな」
「はい? そうですが⋯⋯。て,誰だお前」
俺が底を見るとそこには初老のおじさんが立っていた。
これは,ラノベである,最強のおじいちゃんではないか。きっと剣聖のお嫁さんとか,英雄王の師匠だったりするんだろうな。
「これは失礼。私は炎竜王軍幹部のシャルドと申します。以後,お見知りおきを」
そしてそのシャルドと名乗った人物はきれいにお辞儀をした。
(マスター,警告します。こいつは敵に回さないほうがいいです。おそらく相当強いです)
そんなに強いのか。俺にはよくわからないんだが。だが俺のラノベセンサーでも最強の一角って出てるぞ。
(ええ。最大限警戒をしてください。それに今唐突に現れましたよね。それ自体が異常です。第一何の目的で⋯⋯)
んー。確かにこの人の目的が分からないな。そして俺はどうしてここに来たかシャルドさんに尋ねた。だがシャルドさんは質問した俺に驚いているようだ。
「ほう,私相手に,この肩書を持つ相手に全くひるみませんか」
あ,俺が自己紹介してないじゃん。
「あ,言い忘れていました。俺は弘樹。今は訳あってドラゴンやってます。あんたは竜王軍の幹部って言ってましたけど偉いんでしょ。そんな人がなぜ俺に会いに来たんですか」
「ほう。竜王軍を知らないのですか」
「はい。すいません。俺知識があまりないものでして」
な,話しかけてみれば案外いい人だろ。警戒する必要なんてないさ。
(そうはいってもですね,いつ殺されるかわかんないんですよ)
「まあ,いいでしょう。私の目的でしたか。単刀直入に言います。あなたが竜王決定戦に出場することになりました。おめでとうございます」
「え,竜王決定戦?」
(まさかっ。あの竜王決定戦に)
お。知ってるのか。
(はい。知っています。まあ,簡単に言うなら竜王を決定する大会ですね。ですがその大会は危険です。出場を取り下げてください)
そうか。そんなに言うなら分かっよ。面白そうだったのにな。
「あの,すいません。その竜王決定戦の俺の出場を取り下げてもらってもいいですか」
その瞬間,シャルドから殺気が漏れる。
「ほう。竜王決定戦の出場を取り下げる,と。分かりました。それでは,あなたには今この場で死んでもらいますね」
「はい?」
(はい?)
そう言うとシャルドからあふれんばかりの魔力が放出される。そしてそれはシャルドの体を覆ったかと思うと一気に膨らみ大型トラックほどの大きさになった。
「あなたには期待していたのですが,それも私の目が曇っていたということですかね。それではさようなら,トカゲさん」
「はーー。どういうことだよ。出場断ったらその場で殺すって。それに俺はもうトカゲじゃないぞ。立派な龍だぞ」
「そんな貧弱な見た目で,魔力で龍ですと。笑わせる。一撃で終わらせます」
そういうとシャルドは魔力を練り上げる。
(マスター,逃げてください。こいつは危険です)
言われなくても逃げるさ。だけどこいつに俺勝てる気がするんだけどな。
(何馬鹿なこと言ってるんですか。こいつに勝てるわけがないでしょ)
いや,物は試しだ。やってみよう。だめなら逃げればいいさ。
(わかりましたよ。サポートはしますよ。やればいいんでしょ,やれば)
そういうこった。
「なあ,おまえ。シェルドだったよな。何があったのかは知らないが俺に敵対するというのであれば俺はお前を叩きつぶす」
「ほう。やれるもんならやってみろ。このトカゲが」
「じゃあ,遠慮なく行かせてもらうぜ。まずは様子見だ。灼熱の息吹」
瞬間,俺から圧倒的な炎が放出される。俺の魔法だ。一瞬で空を埋め尽くしたそれは,そこにいた一匹の龍を飲み込もうとするが,
「笑止千万。ぬるい,ぬるいわ」
シャルドには傷一つつけられていないようだった。
おいおい,嘘だろ。これを避けられることはあるかもと思っていたが,まさか直撃して無傷だとは。
「それでは次はこちらから行かせてもらおう。ぬん」
そう言うとシャルドは空高く飛びあ上がった。
シャルドは地上にいる弘樹が米粒ほどにしか見えない高さまで来るとピタっと止まりおもむろに口を開けた。
「本物のブレスとやらを見せつけてろう。これぞわが最強のブレス,竜獄の不滅炎ドラゴ・インフェルノ」
それは対龍に置いて無類の強さを誇る圧倒的なブレス。シャルドの口から数多の炎が飛び出し,空中でいくつもに分裂しながら俺を焼き尽くさんとする。まさに地獄。対して俺はいまだ地上にとどまったまま。
「あまりの迫力に腰でも抜けたか。儂のこの攻撃を食らって死ねるんだからせいぜい幸運に思うんだな」
あまりにも絶体絶命。だが,その時弘樹が取った行動は誰にも予想できなかった。
「炎神加速フル・ターボ」
弘樹がそう呟くと炎が体を覆う。これは炎神に改良を入れた魔法だ。その名の通り炎神より攻撃力は劣るが加速力は大幅に上回っていた。
「待たせたな,シャルドの爺さん。こっからが本当の勝負だよ」
(空中からの炎塊,その数は10をゆうに超えています。あと0.15後に接触します)
「了解。すべてかわすぞ」
(わかりました)
さて,俺はどこまでいけるかな。いや,違うな。炎の球は俺にどこまで追いつけるかな。
弘樹は加速した。弘樹の行ったことはただ加速したのだ。ただ,その上昇値が異常であった。その速度は一気に亜音速にまで登り,みるみる炎の球をかわしていく。
右,左,次はもっかい右。見えた。シャルドの爺さんだ。だが灼熱の息吹は通じなかった。なら,これでもくらえ。
「体当たり,だーー」
そう,体当たりである。だが,この場の弘樹の選択はおそらく最善であっただろう。なぜなら,弘樹は知らないが高位の龍というのは必ずと言っていいほど魔法耐性を持っているからだ。魔法で彼らにダメージを与えるのは今の弘樹の魔力をもってしても不可能だろう。
だが,それに引き換え龍は物理攻撃には弱い。弱いと言っても彼らの硬い鱗を突破できなければかすり傷すらつけられないが。そういう意味で弘樹の取った攻撃は最善であった。しかし,この状況で体当たりという大ぶりで当たりにくい攻撃をしても避けられるのがおちであった。だが,シャルドはそれをしなかった。
「ふん。そんな体当たりなど儂には効かん。衝撃を受け止めたうえで反撃してやる」
そしてシャルドは受け止めようとしてしまった。そう,この怠慢こそが彼の唯一の弱点でありミスであった。
ーーーズゴォーン。
龍と龍がぶつかり合い,その接触部では圧倒的な物理エネルギーが容赦なくもう片方に注がれた。つまり何が言いたいのかというと,
「な,なぜだ。なぜ貴様はそれだけのダメージを食らっておきながら平然としていられるんだ」
シャルドが負けた,ということであった。シャルドはそういうと空中で意識を手離し,重力に従って落下していく。
(なんでこんなことになったんだろう)
そう思いながら弘樹は目の前に横たわるおじいさんを見ていた。それは数分ほど遡る。
◇
弘樹は地上にやってきてテンションが高くなっていた。
やったぞ,やってきたぞ,地上。それにしても転移門ていうくらいだから門なのかと思ったけど,魔法陣なんだな。そこは少し残念だ。
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ん?
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そう言って俺は歩き出す。こうして,俺たちのダンジョン生活が終わり,新しいステージへと行くのであった。
太陽の光,まぶしいな。これは最高に気持ちいいぞ。ほんと,今までなんでこんなに気持ちいいと気づかなかったんだろ。はあ,ほんとに幸せだ。
だが,そんな弘樹の愉快な気持ちを打ち砕くかのようになんの前触れもなくそいつはその場に出現した。
「あなたが弘樹殿ですな」
「はい? そうですが⋯⋯。て,誰だお前」
俺が底を見るとそこには初老のおじさんが立っていた。
これは,ラノベである,最強のおじいちゃんではないか。きっと剣聖のお嫁さんとか,英雄王の師匠だったりするんだろうな。
「これは失礼。私は炎竜王軍幹部のシャルドと申します。以後,お見知りおきを」
そしてそのシャルドと名乗った人物はきれいにお辞儀をした。
(マスター,警告します。こいつは敵に回さないほうがいいです。おそらく相当強いです)
そんなに強いのか。俺にはよくわからないんだが。だが俺のラノベセンサーでも最強の一角って出てるぞ。
(ええ。最大限警戒をしてください。それに今唐突に現れましたよね。それ自体が異常です。第一何の目的で⋯⋯)
んー。確かにこの人の目的が分からないな。そして俺はどうしてここに来たかシャルドさんに尋ねた。だがシャルドさんは質問した俺に驚いているようだ。
「ほう,私相手に,この肩書を持つ相手に全くひるみませんか」
あ,俺が自己紹介してないじゃん。
「あ,言い忘れていました。俺は弘樹。今は訳あってドラゴンやってます。あんたは竜王軍の幹部って言ってましたけど偉いんでしょ。そんな人がなぜ俺に会いに来たんですか」
「ほう。竜王軍を知らないのですか」
「はい。すいません。俺知識があまりないものでして」
な,話しかけてみれば案外いい人だろ。警戒する必要なんてないさ。
(そうはいってもですね,いつ殺されるかわかんないんですよ)
「まあ,いいでしょう。私の目的でしたか。単刀直入に言います。あなたが竜王決定戦に出場することになりました。おめでとうございます」
「え,竜王決定戦?」
(まさかっ。あの竜王決定戦に)
お。知ってるのか。
(はい。知っています。まあ,簡単に言うなら竜王を決定する大会ですね。ですがその大会は危険です。出場を取り下げてください)
そうか。そんなに言うなら分かっよ。面白そうだったのにな。
「あの,すいません。その竜王決定戦の俺の出場を取り下げてもらってもいいですか」
その瞬間,シャルドから殺気が漏れる。
「ほう。竜王決定戦の出場を取り下げる,と。分かりました。それでは,あなたには今この場で死んでもらいますね」
「はい?」
(はい?)
そう言うとシャルドからあふれんばかりの魔力が放出される。そしてそれはシャルドの体を覆ったかと思うと一気に膨らみ大型トラックほどの大きさになった。
「あなたには期待していたのですが,それも私の目が曇っていたということですかね。それではさようなら,トカゲさん」
「はーー。どういうことだよ。出場断ったらその場で殺すって。それに俺はもうトカゲじゃないぞ。立派な龍だぞ」
「そんな貧弱な見た目で,魔力で龍ですと。笑わせる。一撃で終わらせます」
そういうとシャルドは魔力を練り上げる。
(マスター,逃げてください。こいつは危険です)
言われなくても逃げるさ。だけどこいつに俺勝てる気がするんだけどな。
(何馬鹿なこと言ってるんですか。こいつに勝てるわけがないでしょ)
いや,物は試しだ。やってみよう。だめなら逃げればいいさ。
(わかりましたよ。サポートはしますよ。やればいいんでしょ,やれば)
そういうこった。
「なあ,おまえ。シェルドだったよな。何があったのかは知らないが俺に敵対するというのであれば俺はお前を叩きつぶす」
「ほう。やれるもんならやってみろ。このトカゲが」
「じゃあ,遠慮なく行かせてもらうぜ。まずは様子見だ。灼熱の息吹」
瞬間,俺から圧倒的な炎が放出される。俺の魔法だ。一瞬で空を埋め尽くしたそれは,そこにいた一匹の龍を飲み込もうとするが,
「笑止千万。ぬるい,ぬるいわ」
シャルドには傷一つつけられていないようだった。
おいおい,嘘だろ。これを避けられることはあるかもと思っていたが,まさか直撃して無傷だとは。
「それでは次はこちらから行かせてもらおう。ぬん」
そう言うとシャルドは空高く飛びあ上がった。
シャルドは地上にいる弘樹が米粒ほどにしか見えない高さまで来るとピタっと止まりおもむろに口を開けた。
「本物のブレスとやらを見せつけてろう。これぞわが最強のブレス,竜獄の不滅炎ドラゴ・インフェルノ」
それは対龍に置いて無類の強さを誇る圧倒的なブレス。シャルドの口から数多の炎が飛び出し,空中でいくつもに分裂しながら俺を焼き尽くさんとする。まさに地獄。対して俺はいまだ地上にとどまったまま。
「あまりの迫力に腰でも抜けたか。儂のこの攻撃を食らって死ねるんだからせいぜい幸運に思うんだな」
あまりにも絶体絶命。だが,その時弘樹が取った行動は誰にも予想できなかった。
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「待たせたな,シャルドの爺さん。こっからが本当の勝負だよ」
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右,左,次はもっかい右。見えた。シャルドの爺さんだ。だが灼熱の息吹は通じなかった。なら,これでもくらえ。
「体当たり,だーー」
そう,体当たりである。だが,この場の弘樹の選択はおそらく最善であっただろう。なぜなら,弘樹は知らないが高位の龍というのは必ずと言っていいほど魔法耐性を持っているからだ。魔法で彼らにダメージを与えるのは今の弘樹の魔力をもってしても不可能だろう。
だが,それに引き換え龍は物理攻撃には弱い。弱いと言っても彼らの硬い鱗を突破できなければかすり傷すらつけられないが。そういう意味で弘樹の取った攻撃は最善であった。しかし,この状況で体当たりという大ぶりで当たりにくい攻撃をしても避けられるのがおちであった。だが,シャルドはそれをしなかった。
「ふん。そんな体当たりなど儂には効かん。衝撃を受け止めたうえで反撃してやる」
そしてシャルドは受け止めようとしてしまった。そう,この怠慢こそが彼の唯一の弱点でありミスであった。
ーーーズゴォーン。
龍と龍がぶつかり合い,その接触部では圧倒的な物理エネルギーが容赦なくもう片方に注がれた。つまり何が言いたいのかというと,
「な,なぜだ。なぜ貴様はそれだけのダメージを食らっておきながら平然としていられるんだ」
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