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弐章 国づくり

66 ステラ

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 ルークを睨み戦闘態勢に入る四天王のギョクズイ。 
 
 拳を握り攻撃を仕掛けようと振り上げた瞬間。
 ギョクズイの身体がまるで固まった様に動かなくなった。
 
 「なんだ…?
 俺に何をした…」
 
 ルークが目を細めギョクズイを見るとキラリと光る蜘蛛の糸が幾度にも折り重なり体を縛っているのが見える。
 
 その糸が何処から来ているのかと辿るとそれらは最終的にステラの指に繋がっていた。
 
 そして顔を見てルークはビクリと肩を動かし驚く。
 ステラの顔は何時もの様に美しい顔立ちなのだが表情は眉間にシワを寄せ冷たい笑みをしておりその周囲の空気はどこかおぞましさを感じる。
 
 「ジュウゾウさん?
 少し…。
 聞いていた話とは違うのでは無いでしょうか?
 私の大切な主君(しゅくん)の目の前で私の顔に泥を塗るおつもりですか?」
 
 「こんな糸………何!?
 俺の力で引きちぎれんだと?」
 
 ギョクズイが暴れ糸を引きちぎろうとするが糸は逆に絡まりその巨体は徐々に小さく丸まっていく。
 
 そんなギョクズイの様子を見てジュウゾウは口を開いた。
 
 「すまない…こちらのミスだ。
 ギョクズイ、ここは同じ鬼族である俺が引き受ける。
 少し大人しく、していてくれ」
  
 ジュウゾウがそう話しルークに近づいた時、カスミが遮る。
 
 「全く…。
 ジュウゾウさん。
 しっかりしておくんなし。
 その子鬼の力量を見る前に何を言ってるでありんすか?
 それこそ話が違うのではござりんせん?」
 
 そう言った瞬間。
 ギョクズイの体がゴウッと音を立て青い炎が燃え上がりステラの糸が燃え切れた。
 
 「我ら四天…妖王様方々より任されたこの席。
 そう軽いものではござりんせん」
 
 カスミの手の平に青い炎が現れその火は狐の姿となり空を駆け回り周囲にあった蜘蛛の糸を全て焼ききる。
 
 その姿を見たステラは相性が悪いと諦め妖糸を使い無力化する事を諦めるとルークに頭を下げた。
 
 「本当に申し訳ありません。
 ルーク様がご不在という事もあり。
 東に住まう妖魔界の妖王とは対立関係をまだ作るべきでは無いと単独で考え対話…という形で対応するつもりだったのですが…
 
 ルーク様の為と思い彼らを招いてしまった事がどうやら裏目に出てしまった様です」
 
 ステラは無念そうに顔をしかめ顔を下げているが、しかし。
 バッと顔を上げルークを見つめ口を開く。
 
 「しかし…このステラ。
 ただでは転びません。
 私がまいた種…。
 せめて…。
 ここは私が責任を取り。 
 私が彼らの相手をします。
 ですのでルーク様はお下がりください」
 
 ステラはそう言うと髪をかき上げ四天王に向くと額にも存在する全ての目で睨んだ。
 
 だがステラが行動に移る前にルーク…いや、シュラが前に出た。
 
 「いや、その必要はない。
 家臣の責任は王…つまりは妾の責任。
 故にステラよ…。
 良い、許す。
 故に…お主らは下がっておれ。
 妾が代わりに行く。
 何より…面白そうだ…」
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